生徒会長様の裏稼業!?

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変革

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変革
 俺は今まで非モテの住人として生きてきた。友達だって、知り合いだって殆どが日に当たることはなかった悲しき人たちだ。でも、視点を変えればその人にも光が当たっていて俺もそうだった。俺は俺の姿を別の角度から見て欲しくなくていつも俯いて教室の机に突っ伏している。
だけど最近、可愛い女の子が俺に付き纏ってくる。あの生徒会長のそばにいて明るく元気で快活な女の子だ。人当たりが良くて人気者なはず。その人がどうして俺と一緒にいることが多いのだろう。
「祐介くん、もう帰る?帰り道一緒だし途中まで着いて行ってもいい?」
「う、うん。いいけど」
これが始まってからずっと二人で行動している。帰りも、体育も休み時間も。どうしてか、聞いてもはぐらかされて答えられたことがない。挙句の果てに静雄に付き合っている疑惑をかけられた。おかしいだろ。そんなわけない。あらぬ疑いをかけられてしまったことはどうしようもないのだろうか。そんな悩みを打ち明ける相手が静雄しかいないのに当の静雄がまともに答えを返してくれないものだから俺はまたひたすら悩むしかないのだ。なんとも歯痒い。
「はあ、疲れたなあ」
ぽろっと呟いた。目の前に生徒会長がいることには気が付かなかった。
「あらお疲れなの?祐介くん」
「な、長月さん!」
驚いて起き上がった。
「ふふっそんな驚かなくても。ねえどうしたの、何か悩んでるの?」
彼女は俺に尋ねた。周りにはいつの間にか誰もいなくなってる。
「あれ他のみんなは?」
「帰ったわ。今日はみんな用事があったみたいで。ここにはここなと私、そしてあなたしかいないわ」
ほんとうだった。教室には俺と彼女そして夢原さんが居た。
「会長は仕事をサボった罰として居残り反省会よ」
「相変わらず手厳しい」
「当然よ。貴女はみんなに選ばれて生徒会長になったのだから」
「へいへい、理解してますよーっだ。ねえねえもしお暇なら居残りに付き合ってくれない?」
「え、」
意外なお誘いだ。
「居残りって言っても書類整理だけよ」
「多いんだよ。ね、お願い!ジュース奢るから!」
あの生徒会長様がこんな風に情けなく俺に頼るだなんて。しかもクラスの端にいるようなこんな俺に。
「いいよ、手伝っても」
「やった!そうと決まったら早く行くわよ」
長月さんは俺の腕を掴むと引っ張るように走り出した。俺は勢いで鞄を忘れてしまったが、夢原さんが持ってくれたみたいだ。
「こらー!走るなー!」
「あっ、やばっ」
そっと早足になって生徒会室に潜り込んだ。すると目の前には山のように積もった紙の束があった。
「うわあ」
「ドン引きでしょ?まだあるのよ、これ」
そういうと彼女は別室から更なる紙の束を持ってきた。
「どうしてこんなになったの?」
「……色々と忙しくて。兎に角!やるよ!これ明日までに片付けてみんなに配らないといけないんだから!」
「ええっ!」
彼女は俺が思っている以上に抜けているみたいだ。そしてお淑やかではない。意外だけど嬉しかった。俺だけがその素顔を見られるのだ、と思って。
結局書類整理は夢原さんを加えてなんとか頑張って終わらせた。下校時刻は過ぎてしまったが先生の監督の元特別に延長を許してもらった。なんだか、ズルをしてしまったみたいで後ろめたくもあったが同時に物凄く楽しかった。こんな時間を俺も味わうことができたんだな。

 その翌日、俺はそのことを静雄に話した。
「ええっ!そりゃ羨ましい。会長にお呼ばれするなんて滅多にないぞ」
「なんでかわかんないけど教室に俺と夢原さんしか居なかったんだよ」
「それで偶々放課後イチャイチャ作業?」
「イチャイチャって」
「くう~、お前非リアが云々って言ってたくせに……。裏切り者!」
彼は恨みったらしくいうが笑いが隠しきれていない。
「でも俺、なんでみんなに置いてかれたんだろ」
「お前が寝てたからじゃね?」
「それでも一声かけてくれたって良いと思うんだよ」
「……仕方ねえ。悪いみんな」
「は?」
彼が突然空想上のみんな、に謝るから不躾な返答をしてしまった。
「俺たちさ、お前がここなと付き合ってるんじゃねえかって思っててうまく2人を2人きりにしようと思ってたんだよ」
「えっ!」
「ここながお前に気があるように見えて上手くくっつかせようと思っててさ、クラス内でコッソリ作戦考えてやってたんだよ」
「なんだよそれ。じゃあ俺が皆んなに取り残されたのはわざとだったってことか?」
「まあそうなるな」
「ええ、……俺嫌われてるからだって思ってたよ。暗いし冷たいし付き合い悪いし」
静雄は軽くため息をついて言った。
「少なくともあいつらはそう思ってねえよ」
「わからないだろ!お前はそう解釈してるだけで本当は俺を除け者にしようとしていたのかもしれないだろ!」
俺は珍しく声を荒げて彼に言葉をぶつけた。
「だったら直接聞いてみろよ。アイツらに俺のことをどう思うかって」
「それが出来たら……」
「出来るよ。あいつらはお前が思っているより酷い奴らじゃない」
俺はその言葉を信じたのか、わからないけどとりあえず教室に戻ることにしたんだ。そしたら静雄が突然こう言った。
「おい、お前らこいつここなとは付き合ってねえんだって」
教室内にいたクラスメイトたちが一斉にこっちを見る。しばらく沈黙が続いた後、一気に笑い声が聞こえた。
『なあんだ』
と誰もが思ったみたいだ。
「ほらー、だから言ったでしょ」
「えー脈なしだったの?」
「いやいや諦めるのはまだ早いぜっ!」
「俺……やっぱりアタックしとけばよかった!」
俺はただ戸惑っていた。なんだろう、皆んなは俺を虐めたいとか除け者にしたいだとか暗いことを考えているものだと思い込んでいたけど、皆んなそんな雰囲気は感じない。
「じゃあ憂さ晴らしにみんなでカラオケでも行こうぜ。祐介も来るよな?」
「えっ、俺でも歌えるのないよ」
「大丈夫大丈夫、最近すぎるアニメは観てないけど有名なやつならわかるから」
その言葉を聞いて俺は再び驚いた。
「ちょっと待ってなんで知ってるの?アニメ好きって」
「結構バレてるぜ。祐介、お前に拒否権ねえぞ。あいつらの勘違いのせいで俺たちお前とつるめなかったんだからな」
「ほら行くぞ」
俺にも友達というものが居たのか。遂に輝かしい学園生活が始まるのだ。そう思った。

 彼は学校生活をうまく送れているみたいだ。私は彼をそばで見守っていたが誰かに襲われる様子も無ければ、病に苦しむ様子もない。さらに友達もたくさん出来たようで非常に楽しそうである。
「よかったな……」
ポツリと呟いた。
「何が良かったの?」
ここなが尋ねた。
「祐介が楽しそうで。いつも暗い様子だったから」
「そっか。確かにそうだね、皆んなとカラオケに行ったりゲームセンターに行ったり。活発的になった」
「でもあの踊りにはびっくりしたわ」
「あー、オタ芸ね。私もびっくりした。あんなに動けるなんて」
「ふふっまた見てみたいなあ」
「そうねえ。でもまあ先にこっちを片付けましょうよ」
目の前にいるのは組織を裏切って情報を売り渡した男だ。地下室で、閉ざされた空間で身体を拘束されて私の前に座る。
「言ったわよね。この組織を抜けるのは構わないけど情報を売ったら、許さないって」
男は応えない。
「バレないとでも思ったの?うちの情報網を舐め過ぎよ。もうウチから逃げるのは許さない。コレはそのお仕置き、だから殺さない」
ここなは私に目配せした。やりすぎるな、という事だ。
「謝ったら許してやる」
私は思い切り彼の顔を蹴り上げた。そしてもう一度蹴る。また、もう一度、繰り返して、血が垂れて自分の足が赤黒くなる。武芸を心得ている私の蹴りを避けもせず食らうとかなり痛いはずだ。
「彩菜、もういいんじゃない?」
気がついたら、彼の顔には青あざがたくさんついていた。腹や腕も内側からの出血で青ざめていた。
「ご、ごめんなさい……。裏切って」
溢れた声を聞いた。私は足を止めた。人を呼んで治療を頼んだ。
風呂に入って着替えておく。そうしたら私はただの女子高生。……そんなわけがない。かつて部下だった彼は自分を慕いついて来てくれた。しかし、裏切られた。家族を守る為にここから逃げた。だけど捕まえてここまでボロボロに出来てしまった。私はなんて、恐ろしいのだろう。
「彩菜、大丈夫?」
「うん……。ここなは?」
「平気よ。私は見てただけだもの。無理しないでね」
彼女は立ち去って行った。

 学校に行くと明るくなった祐介が私を出迎えた。そしてみんなの居る前で屋上へと引っ張り出した。夏風が残る秋の始まりで、まだ暑い日だった。
「彩菜さん……!俺と、今度の後夜祭で踊りませんか?」



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