異世界転生？いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

本社に到着

「す、すごいな」

「すごいですね」

　進とエラールはただただ感服するのみであった。もうエラールいなくても春香だけで十分なんじゃないかな？　そう思うくらいだった。

「さ、先を急ぎましょ」

そう言って春香は【遠雷】をヴァイオリンケースへとしまった。それにしても、異世界の武器がアンチマテリアルライフルだなんて、どうなっているんだ？　

「オルティアスの文明レベルは現世よりだいぶ先を行っているのですか？」

「いや、魔法が存在するだけで文明は中世レベルよ。そしてこの神器【遠雷】は、６００年前から受け継がれてきたもの。正直私も、なぜオルティアスにこんな現代兵器に酷似した兵器があるのか分からないわ」

　６００年前から存在するアンチマテリアルライフル……謎がまた増えたな。

　だが今は、一体なぜ進に異世界召喚の能力が備わったのかという謎を解くのが先決だ。

「それにしても、この異世界召喚の力はどこ由来のものなんでしょうか？」

「さぁ。生まれつきでないことは確かね。だったら既に世界は崩壊しているでしょうし。今日突然、何者かによって力を授けられた、あるいは力に覚醒したと考えるのが自然ね」

「はぁ。やはりそうですか」

「我々AWF社はあなたを保護し、世界を修復する手伝いをしてもらうつもりよ。少なくとも、各国政府に連れ去られるよりはマシだと思う」

「はぁ、そうですか」

「場合によっちゃ、また戦闘に巻き込んでしまうかもしれないわね」

「そうですか」

「さっきから『そうですか』ばっかりね。まぁいいけど。さ、着いたわよ」

すると、巨大なミラービルのヘリポートへと絨毯は降り立った。

よく見ると、巨大な翡翠色のバリアがビル全体を覆っている。例の聖魔法【サンクチュアリ】だろうか？こんな大規模に展開させることもできるんだな。おかげで落石や土の雨からは守られているようだ。

「このバリア、人は普通に通れるんだな」

「味方と認識した人だけはね」

春香はそう言いながら、絨毯をくるんで担いだ。

そして、進たちはついに、AWF社本社ビルへと足を踏み入れる。