23 / 34
ルナリス・ファルカリア
初戦決着
しおりを挟む
──ガァァァァンッ!
今まで以上の、感じたことがないほどの衝撃が手から全身へと駆け抜けた。
全力で振り下ろした刀は、先ほどより一層大きく強烈な金属音を打ち鳴らし、この空間全体に響き渡る。その衝撃たるや、突風を生み、遠くの木々を揺らすほどだった。
そして訪れる、短い静寂。
破るのは荒れる呼吸音のみだった。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
シンリは膝に手を付き、倒れ込んでしまうのを堪えるので精一杯だった。
開けるのもやっとな目で、ルナリスの足元を見やる。彼女の手にしっかりと握られていたはずの槍が転がっていた。
限界を訴え続けた身体がふらりと揺れる。
「勝っ、たぁ……」
背中から倒れ込んだ。寝転がると同時に、持っていた刀が自然と手から離れる。握力はもうない。それどころか、全身に力が入らない。
横になっているのに、膝が笑いっぱなしだった。
「負けた……」
ルナリスもまた、シンリの隣に仰向けで倒れ込む。
悔しそうに顔をしかめている。隠すように腕で顔を覆った。
「まさか弾いた反動を利用して回転しながら、力ずくで来るなんて……」
「一か八かだったけどね。どうしても左手で振らなきゃいけなかったから、弾かれるか躱されるのは目に見えてたし。だったら弾かれた方がいいかなって」
ずっと刀を持っていた、小刻みに震える右手を空にかざす。
今まで握り締めていた刀はすでに手の中にはない。だが、その感触はしっかりと残っていた。手触り、重み、振った感覚──全てが残っている。
シンリはそれを握るように、もう握力のない手をゆっくりと閉じた。
「それなら躱されないためにも、目いっぱい近寄らないとって思ってさ。だから刀を身体の下に隠して死んだ振りして、ルナリスが近付くのを待ったんだ。あとはタイミングを見計らって起き上がって、二ルグ目掛けて刀を振り下ろした。逃がさないように。もし躱されたら、体勢を立て直されて負けただろうし」
シンリからだと、近付くだけで極めて困難。
加えて、普通に攻撃しても容易に回避されるだろう。だからこそ、どうしても虚をつく必要があった。
ルナリスから『躱す』という選択肢を奪い、『弾き返す』という行動を取らせるために。
「あとは上手く外に弾かれるように、少し外側を狙って振り下ろす。弾かれたときは左手がもげるかと思ったけど。上手く回れて良かったよ。あとは最後に刀を持ち替えて、回りながらもう一度二ルグを狙って思いっきり振り下ろすだけ」
「戦いの中でよくそこまで」
「ビギナーズラックってやつかな」
ルナリスは首を振り、優しく微笑んだ。
「いいえ、きっとそれが貴方の実力よ。ただの運なんかじゃない」
「そうかな?」
過大評価だとは思いつつも、褒められることに悪い気はしなかった。
満足感に浸るシンリの隣で、ルナリスが呟く。
「それが貴方の持つ王の器なのでしょうね」
声は風に乗り、どこかへ飛んでいった。
今まで以上の、感じたことがないほどの衝撃が手から全身へと駆け抜けた。
全力で振り下ろした刀は、先ほどより一層大きく強烈な金属音を打ち鳴らし、この空間全体に響き渡る。その衝撃たるや、突風を生み、遠くの木々を揺らすほどだった。
そして訪れる、短い静寂。
破るのは荒れる呼吸音のみだった。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
シンリは膝に手を付き、倒れ込んでしまうのを堪えるので精一杯だった。
開けるのもやっとな目で、ルナリスの足元を見やる。彼女の手にしっかりと握られていたはずの槍が転がっていた。
限界を訴え続けた身体がふらりと揺れる。
「勝っ、たぁ……」
背中から倒れ込んだ。寝転がると同時に、持っていた刀が自然と手から離れる。握力はもうない。それどころか、全身に力が入らない。
横になっているのに、膝が笑いっぱなしだった。
「負けた……」
ルナリスもまた、シンリの隣に仰向けで倒れ込む。
悔しそうに顔をしかめている。隠すように腕で顔を覆った。
「まさか弾いた反動を利用して回転しながら、力ずくで来るなんて……」
「一か八かだったけどね。どうしても左手で振らなきゃいけなかったから、弾かれるか躱されるのは目に見えてたし。だったら弾かれた方がいいかなって」
ずっと刀を持っていた、小刻みに震える右手を空にかざす。
今まで握り締めていた刀はすでに手の中にはない。だが、その感触はしっかりと残っていた。手触り、重み、振った感覚──全てが残っている。
シンリはそれを握るように、もう握力のない手をゆっくりと閉じた。
「それなら躱されないためにも、目いっぱい近寄らないとって思ってさ。だから刀を身体の下に隠して死んだ振りして、ルナリスが近付くのを待ったんだ。あとはタイミングを見計らって起き上がって、二ルグ目掛けて刀を振り下ろした。逃がさないように。もし躱されたら、体勢を立て直されて負けただろうし」
シンリからだと、近付くだけで極めて困難。
加えて、普通に攻撃しても容易に回避されるだろう。だからこそ、どうしても虚をつく必要があった。
ルナリスから『躱す』という選択肢を奪い、『弾き返す』という行動を取らせるために。
「あとは上手く外に弾かれるように、少し外側を狙って振り下ろす。弾かれたときは左手がもげるかと思ったけど。上手く回れて良かったよ。あとは最後に刀を持ち替えて、回りながらもう一度二ルグを狙って思いっきり振り下ろすだけ」
「戦いの中でよくそこまで」
「ビギナーズラックってやつかな」
ルナリスは首を振り、優しく微笑んだ。
「いいえ、きっとそれが貴方の実力よ。ただの運なんかじゃない」
「そうかな?」
過大評価だとは思いつつも、褒められることに悪い気はしなかった。
満足感に浸るシンリの隣で、ルナリスが呟く。
「それが貴方の持つ王の器なのでしょうね」
声は風に乗り、どこかへ飛んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる