薮一蔵の体験教室

riktan

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山内 雪矢

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 雷打らいだの家まではバスを二本使うのが基本で、一度駅まで行って乗り継いで行く。雷打らいだに会うのはクリスマス以来だから、数少ない駅止まりじゃなくて乗り継ぎのいらないバスに乗れたのが凄く嬉しい。

 クリスマスの夜にバイトの売れ残りということにしてケーキを届けると、甘党の雷打らいだは凄く喜んだ。それでも俺も食べて行かないかと誘って、6等分に切って残りの一つは妹の鈴三れいさに食べなって言った雷打らいだは本当にいい子。

 いい子でかわいい見た目の雷打らいだが芸術家の所に泊まるなんて、変なモデルにでもされたらどうするんだ。

 玄関を開けてくれた雷打らいだを見た瞬間、悪い予感が当たってしまったと思った。生まれつきかってくらいの金髪になっている。
雷打らいだ……!芸術家にやられたのか?」

 発砲スチロールを投げ出したい気持ちをなんとか抑えて床に置いて髪を触る。よかった。これだけの色にしたのに傷んではいなくて相変わらずのサラフワだ。

 雷打らいだは落ち着いてる。
「違うよ。いつもの美容院。
 肌の色にも合ってるし髪も傷んでないでしょ?
 学校が始まるまでに戻してくれるって」

 やられたって感じの言い方じゃない。無理矢理じゃないと安心した俺に雷打らいだが微笑む。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「あ、ああ。
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 それから奥の部屋から出てきたおばさんにも挨拶をして発砲スチロールを渡す。
 うちの家族間にお年玉の風習は無い。元々母ちゃん二人とお祖母ちゃんは同じ会社で働いてて仲が良くて、俺が生まれた時に「そういうのは全部やめよう」って決めたらしい。

 雷打らいだ鈴三れいさはお昼ができるまで勉強するつもりでいたけど、俺はそれどころじゃない。
「なんで急にお泊りなんかすることになったんだよ?
 まだ中学生なんだぞ?
 しかも芸術家なんて、なんでもOKかマニアックな奴に決まってる。そんな奴に」

 雷打らいだが珍しく人の話を遮った。
やぶさんはそんな人じゃないよ」
「じゃあどんな人だって言うんだよ。一緒にいたのなんて冬休みになってからだろ?」

 たった数日で何が分かるのかと雷打らいだも少しは警戒してくれるかと思ったのに、そいつを庇おうとする気持ちは消えない。
「年上だけど弟みたいな人だよ。
 兄ちゃんもドッグトレーナーになりたいなら分かるでしょ?
 頼りになるのに放っておけないんだよ」

 鈴三れいさが冷静に突っ込む。
「それだとやぶさんが犬でお兄ちゃんが飼い主ってことにならない?」
 雷打らいだが慌てた。
「違う違う!そんなんじゃなくて!
 作品は妙に存在感があるっていうか、言うとなんだか恥ずかしいけど話し掛けてきてるみたいなのに、本人はもの凄く引っ込み思案なんだよ」

 随分必死に語るんだな。

「ごめんごめん、分かったよ。
 それなら俺も見てみたいな。その作品」
 っていうか、ワンコみたいだと雷打らいだが思うような奴を。

 分かってもらえたと思って嬉しそうな雷打らいだに続ける。
「夏目先生の知り合いなんでしょ?俺も頼めば会わせてくれるかなあ?」

 雷打らいだは笑顔で頷いた。
「たぶん。3時に迎えに来てくれるよ。頼んでみようよ」
「うん」
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