気が付いたらオンラインゲームの最強領主で…総受けだったorz

まぁまぁ

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災厄の魔王~戯れ~

深淵をのぞく時

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それと同時刻―…
ガウェイは獣人の集落が見下ろせる崖の上で待機していたのだが。
暗雲が立ち込めて集落に影を落としてきたことに気づき顔を上げた。その雲は瞬く間に黒く染まり雷の音が響きだしてくると、やがて空中に黒い深淵が顔を覗かせる様に穴を開けた…その時、ガウェイは起こってはならないことが起こったのだと知る。


When you gaze into the abyss, the abyss gazes into you.
(深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている)


その深淵の穴の中から、ガウェイですらゾッとするような肌に突き刺すような殺気を感じた。
針の上に立っているような痛みすら伴うようなおぞましさが周囲に漂う。


まして気配に敏感な獣人たちは一様に集落の外に出て、空を見上げはじめている。するとそこにまるで図ったかのように漆黒の雷が空から落ちた。落雷の大音声と悲鳴が共に地を抉り、冷たい風が吹き付け、ゴゥゴゥと空が唸って、やがて雨をもたらし始めた。

「女子供は集まって隠れるんだ!!男は武器を手に集まれ!!!」
その雨の中を奴隷商人の手から逃れた獣人たちが今、新たな脅威に対応しようと集落の中央へと集まってくる。
男たちが剣や斧と言った武器を手に取り、女たちは子供を抱えて一つの家の中へと逃げ込んでゆく。

その間も空に空いた闇の中からの威圧感はいや増し続け…やがて闇の中から手が生えた。
ついで纏いつくような闇を引き裂くように上半身が出で、一人の男が現れたのだった。

男の赤髪が風に煽られて靡いていた。
目鼻立ちの整った美丈夫だ、だが何より人の目を引くのはその意志の強そうな真紅の瞳だ…真紅の中に満月が浮かんだような琥珀が差しこんでいる。
そして男が纏うのは緋色の綴織りに毛皮で裏地をつけ、金糸で優美な文様を織り出したカフタンと頭頂部から黒糸の房が垂れ下がった、つばのない円筒形の帽子・フェズ。
身長はすらっとして均整がとれ、腰には刀身が曲がったの剣・シャムシールを刺している。

そして男はその真紅に月が浮かんだような瞳をゆっくりと瞬いて言った。

「俺の血を分けた弟を連れ去った薄汚い者共はどこだ…?」

玲瓏で、それでいて甘さを宿した低い声は…吹き出すような強い怒りを滲ませていた。
そして宙へ衣を翻しながら浮かぶ男の視線がフッと獣人の集落に目を止める。
瞬間、何本もの漆黒の稲光が集落めがけて放たれた。

視界すら焼き尽くすような閃光の一陣は狙い違わず、獣人の男たちに振り下ろされたかに見えた。

「ッ!!『光よ守らせたまえっ!!』」
だが咄嗟にガウェイは結界を作動させて、その稲光を弾く。
漆黒の光が音と煙と光とにバラバラに爆ぜ、辺りは一瞬、音を失くした。
魔法を得意としない獣人にとっては、致命的な一撃となる筈だった、それをガウェイは防いだ。

結界石を補助としていたことも大きかったが、ガウェイは気付いた、今のは〝手加減されていた″ことに…あまり強くない『簡易石結界』で防げたのもそれが理由だ。

そして雨の中、一滴も濡れることなく宙に浮かんでいる男の満月が浮かんだような真紅の視線が自分を捕らえていることにガウェイは気付く…底の知れぬ瞳だと思った。
それに臆することなく『炎の騎士・ガウェイ』は剣を抜き放つ。
雨が刀身に当たれば、それはガラティーンの放つ熱ですぐに蒸発していった。
「何者だ、なぜ獣人たちを襲う」
隙無くガラティーンを構えるガウェイに男は少し笑った様だった。
男は空中で鮮やかな真紅のカフタンの裾を翻す…

「俺は偉大なるテュルク家のバーディシャーだ。」

テュルク家のバーディーシャー。
それは魔族の最も古い吸血鬼一族であり、幾千という吸血鬼たちを力で治める当主を意味する…ガウェイは知らずのうちに、コクリッと唾をのみ込んだ。
この男、強い…少なくとも自分とヴェルスレムに匹敵するだろうことは相手から感じる圧迫感で分かった。
男の方もガウェイの強さを見抜いているようで、男の真紅の瞳の真ん中に浮かんでいた満月のような瞳孔が細まり、まるで獰猛な肉食獣と相対しているようであった。
そして男はガウェイに視線を向けながら手を差し出す、いっそ優雅とでもいえるような動作で。

「無益な争いは好まない…弟を返せ」
「悪いが知らない」

それは本当のことだ。だがそれで納得するだろうとは思わない。
思った通りバーディーシャーから感じる怒りは益々増した。

「…弟の香りがするから此処へ足を向けたんだ。少なくとも弟に会ったものがいる筈だ。」
そしてチラッと獣人の集落に目をむけたバーディーシャーの視界を遮るように、ガウェイはガラティーンを崖の上から一薙ぎすると、魔剣から生まれた炎がシャーの目の前をゴォッと音を立てて過ぎていった。
雨がジュッと音をたてて蒸発し、炎が目の前をすぎるのをバーディーシャーは見切って、そのまま空中で佇んでいたが、まるで標的を定めたように満月が浮かんだ様な赤い瞳でガウェイを映す。

「悪いが通してはやれない」
その冷徹な視線に対し、ニッと悪童のように笑みを返したガウェイに、バーディーシャーの表情は変わらなかった。ただ一度、瞬きをしただけだ。

「庇うのか?俺はお前には用は無いのだが」
暗にガウェイが庇っている獣人たちが目的でガウェイに引くことを促している。
思ったより、冷静なのかもしれないとガウェイは頭の片隅で思う。

(それはそうか、なんたって相手は吸血鬼一族の長なんだからな。)
それぐらいの器がなければ務まらないだろう。
〝魔族″は知恵も誇りも分別もある存在だ。血に狂い理性を失くせば魔物に成り下がるが、魔物とは一線を画す〝高貴なる闇″こそが〝魔族″-…古より、人やエルフや精霊と同じく存在した力ある一族なのだ。

だから人は闇に触れぬように生きてきた。
災いが自身に降りかからぬように。

重く垂れ込める雲から雨が降り続け、雷鳴と共に漆黒の雷が何本も周囲に落ちて地を揺るがし、森の木々を抉る。どれぐらい時間が経ったのか、ガウェイとシャーの間に立ち込めた緊張感は増し続けてたが、やがてシャーはその手を腰に下げていたシャムシールへ伸ばした。
金と色鮮やかな宝石とで作られたシャムシールが抜き放たれれば、その刀身はゾッとするような赤に染まっている。確かに刀身は金属である、稲光を鈍く反射する様子からそれが分かる筈なのに刀身が赤い―…まるでそれは血のように。

「我が一族が吸い続けた血の証の元に…」


この雨の中、一滴も濡れることのないバーディーシャーの衣が翻り、その玲瓏な声は不思議とガウェイの耳に届いた、それは力ある者が放つ言葉であるからだ。
シャーが天へと掲げた、細身で刀身が曲がったシャムシールが淡く紅に輝くと、バーディーシャーの呼び声に呼応するように巨大な闇が幾つも空へと浮かび、空間を切り裂いてポッカリと口を開けた。
その闇の中で何かがこちらを窺い、蠢いているのがガウェイには分かる。

When you gaze into the abyss, the abyss gazes into you.
(深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている)

「やっべ…鳥肌が立ちやがった」
呻くようにガウェイがガラティーンを構える―…いつのまにか雨は止んでいた。

「屠れ、俺の前に立ち塞がる者を…鮮血に変えろ…」

いっそ甘く囁くようにバーディシャーが囁き、その整った容貌に笑みを浮かべ、シャムシールを振り下ろす。
瞬間、溢れだしたソレは漆黒の津波のようにガウェイには思えた。
幾つもの穴から有象無象の吸血鬼の一族が…巨大な蝙蝠、虫、人の形をした者どもが溢れだし、一斉に〝こちら″側へと雪崩れ込んできたのだ。

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