気が付いたらオンラインゲームの最強領主で…総受けだったorz

まぁまぁ

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災厄の魔王~戯れ~

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「屠れ、俺の前に立ち塞がる者を…鮮血に変えろ…」


いっそ甘く囁くようにバーディシャーが囁き、その整った容貌に笑みを浮かべ、シャムシールを振り下ろす。
瞬間、溢れだしたソレは漆黒の津波のようにガウェイには思えた。
幾つもの穴から有象無象の吸血鬼の一族が…巨大な蝙蝠、虫、人の形をした者どもが溢れだし、一斉に〝こちら″側へと雪崩れ込んできたのだ。

ガウェイは知らず汗が吹き出しそうになった。
直観で危険だと告げている、命をかけなければならないと…一対一ならば勝てただろうが相手は何百、何千という大軍であった。

というのもバーディーシャーは吸血鬼一族・テュルク家の当主の位をさし、代々その地位を継承するのだが、その当主はテュルク家の一族郎党すべての吸血鬼に命じる権限を有し、集結させる力を持っているのだ。

ガラティーンを掌で引いて血を一筋垂らすと、それを空中で簡易結界の上にガウェイは垂らした。

『炎の魔剣と光の石の力によりて、わが意思はなされた、守らせたまえ!!』

獣人の集落を背後に置いて、ガウェイは魔法を発動させた。
白い光の魔法円にバーディーシャーがピクリと眉を寄せる。
何人も害成すものは排除される魔法石と魔剣とガウェイの魔力による結界。

「悪いが、こいつらをどうにかすることは騎士として許さない。どうしてもというのなら俺を殺してからにしろ」

魔法円の光を背後から浴びて輝く炎の騎士。
それに紅の吸血鬼の長・バーディーシャーはニヤッと悪童のように嗤う。

「…余り俺を怒らすな。」

手加減が出来なくなる、そう彼は言うとシャムシールを振るう。すると斬撃は空を地を切り裂く衝撃波となってガウェイの元まで届いた。それを受け止めることなくガウェイは避ける。彼が宙を蹴ると彼は空へと駆け上がった。
魔剣がキラキラと紅玉のような光を放ち、そして魔剣ガラティーンの力と自身の魔力を練り上げ、黒いぽっかりと深淵を覗かせている穴へと強力な一撃を放った。

ガァアアアアアンンッ

爆音と閃光があたりを駆け巡り肌すら震わせる、だがそれは他でもないバーディーシャーによって阻まれていた。彼の周囲からは煙が立ち上がる。シャーは防御壁を展開し、自らの眷属を守ったようだった。
「っくぅ!」
「…っ貴様、俺の目の前で同胞(はらから)を殺そうとするとはなっ」
シャーの真紅の瞳に黄金を射しこんだような瞳に怒りが現れる。
そしてその時だった、急にシャーの動きが止まったかと思うと、バッと王都に視線を向けたのだ。

「つっ、父上っの気配が消えたっ薄汚い人間どもめっ!!!」

先程の比ではない血を吐くような憎悪の声をガウェイはだが別の感慨をもって捕らえた。
魔族というのはこんなにも血族を大事にするものなのかと。
彼等の残酷さばかりに目が向いて敵として相対するばかりだった。だが今そんな考え事をする余裕などない相手であることもわかっているので炎の魔剣・ガラティーンを振り下ろしながら叫ぶ。
「犠牲を思うのなら引くがいいっ!!!」
それを難なく受け止めバーディシャーは憎悪に彩られた端正な顔を歪め。叫ぶ。

「俺から家族を遠ざけるものは赦さんぞ、血の一滴すら残さず屠ってやろうっ」

バーディシャーの血を吐くような声に呼応するように闇の軍勢が一斉にガウェイの横を過ぎて獣人たちの集落へ向かう。
「クッ」
そちらへ向かおうにも、バーディシャーを相手にしながら、数千もの吸血鬼たちから獣人たちを庇うのはいかにガウェイであっても難しかった。ギチギチと鍔迫り合いを空中で交わしながらガウェイは内心焦っていた。

獣人の集落を覆った結界はガウェイ自身の血を媒介とし彼を〝贄″としたもの、結界に攻撃を加えられればそれは即ちガウェイへの攻撃となる。もう何百もの吸血鬼たちが結界に取りつき攻撃をし、その度にガウェイの体に傷が走り、血が滴った。
「グッ」
バシッと額に走った裂傷に血を滴らせたガウェイを見て、バーディシャーは笑う。
「お前ほどの騎士が哀れだな、足手纏いを背に庇ってどこまでやれるか見てやろう!!!!」」
そしてシャーは互いの剣を弾くと後方へ飛びのいた。その機を逃さずガウェイも獣人たちの結界に取り縋っているいる吸血鬼たちを魔剣・ガラティーンの一薙ぎで屠り、シャーとの距離をとる。
バーディシャーとガウェイの紅の長衣が風にはためいている。更にシャーは声なき声で眷属を呼んだ。

『来たれ 我が同胞(はらから)…血の当主の呼び掛けに応えよ』

シャーの紅の魔力が宙へ広がり、彼が両手を広げて呼応すれば空すら覆い尽くすように吸血鬼たちが飛び交う。空すら黒く塗りつぶすその絶望的な光景にガウェイは血で濡れた魔剣・ガラティーンを握りしめて笑った。
「悪い。シュレイザード…」
ガウェイは巨大な魔法陣を足元に展開した。何重もの魔法陣はガウェイを包み朱金に輝く。魔法陣から吹き上がる風がガウェイの長衣を髪をなびかせる。空へと吹き上がり突き抜ける朱金の光。それは最期の光のようであった。ガウェイは静かにガラティーンを自分の“心臓”へ向ける。

そして―…力ある声が聞こえた。

『わが命の炎よ、流れよ。流れて濁流となれ。最期の炎(フェニクス・ファイア)』

ガラティーンが、炎の魔剣が炎を噴き上げて“炎の騎士”の胸に付きたてられた瞬間―…ガウェイの足元から炎が濁流となって吸血鬼の軍団に目がけて嬲るように襲いかかった。炎は柱となって天へと吹き上がり、波となり闇の軍を押し返す。聖なる炎は触れるもの全てを焼き尽くし浄化する。
「貴様あああぁぁっ!」
だがバーディシャーは自身の魔力を解放し、自身を中心にして同族を守りながら耐えた。いやむしろ周りの吸血鬼たちはシャーの周りに集まって彼を守るために紙の様に燃え尽きて死んでいった。バーディシャーとは吸血鬼たちの当主であり心の在処。そしてバーディシャーにとっても一族とは彼自身の命そのものである。

やがて炎が消えた時、僅かばかりの吸血鬼たちを守りきったバーディシャーとガウェイの亡骸を抱いた聖炎の柱は其処に立っていた。
朱金の輝きを放ちながら炎の騎士を抱いて燃える聖炎の柱。それは獣人たちの集落を覆った結界まで伸び眩い太陽の様に守っている。バーディシャーはその最後の光を見つめた。シャー自身も全身を炎で炙られ少なくない怪我を負っている。炎の騎士はガラティーンを胸に刺したまま炎に焼かれることなく炎の中を揺蕩っていた。端正な顔はいっそ安らかで、閉じられた瞳は開かない。

「・・・敵ながら見事だ。」

命をもって守る。
その誓い故にあの結界はいかにシャーであろうとも只では済まない。
バーディシャーは血の当主の証たる剣を額まで掲げ、哀悼の礼を尽くすと剣を腰に下げた。

「名を・・・聞きそびれたな。」


(だがもはや此処に用は無い。父上の気配が途絶えたのは聖都。弟の気配を追って二手に分かれたが・・・きっとあちらが弟と繋がっている・・・父上どうか御無事で。)


そしてバーディシャーが重さを感じることなくふわりっと宙へ浮かぶと彼の背後で炎の柱が炎の騎士を中心に収束していった。
最初、それは炎の騎士の力がその死ゆえに途切れたからだとシャーは思った。けれど言い知れぬ圧力を感じて振り返ると…聖なる炎は朱金色を纏い、中の騎士を覆い隠している。ぞくりと寒くもないのに悪寒がした。
それが否が応にもシャーの緊張感を高めて、思わず腰のシャムシールを抜き放つのと力ある声がその場に響いたのはほぼ同時だった。



『・・・俺の名を聞かないのか?』



低い玲瓏な声が辺りに響いた。力ある者の声でバーディシャーにまで届いたその声。あり得ない筈の声。
バーディシャーは彼にしては驚きを露わに紅の瞳を見開く。汗がツゥッと首筋を伝う感触。

(俺は騎士が結界を形成した瞬間から分かっていた筈だ。結界を解除するには騎士を殺さなければならないと・・・騎士は死んだ。なら何故結界は未だ此処に在り続けるのか。何故先程よりも力強く太陽の様に輝いて獣人たちを守るのか。)


結界はまだ壊れていない…


死んでいない。


聖炎の柱が収束していく、朱金色がますます輝いて光が騎士がいた中心へ向かって集まり、炎が騎士の形を創ってゆく。


『まさかこれを使うことになるとは思わなかった・・・』


ここにきてバーディシャーは悪寒を抑えることが出来なかった。目の前の脅威に彼の本能が“逃げろ”と叫んでいるのをシャーたる者の誇りで捻じ伏せる。

朱金の炎は炎の騎士を創り。
そして最後に一際濃い真紅の炎が騎士の胸に灯った。それは炎の聖剣・ガラティーンであった。

騎士は胸に突き刺さった聖なる剣の柄を握ると、それを抜き放つ。血は吹き出す間もなく炎へと姿を変え、自己犠牲(サクリファイス)の血に洗われ魔の要素をこそぎ落とし聖なるものへ変わった聖剣を手に騎士は嫣然と笑う。
朱金の鎧を纏い、太陽に輝く紅の髪は腰まで伸びそれを金の髪留めで後ろに無造作に纏めている。男らしい端正な面立ちはそのままにだが野性味を増して騎士は現れた。

トンと地面に降り立ちながら騎士はバーディシャーへガラティーンを向ける。

「俺の名はガウェイ。聖王シュレイザードの炎の騎士―…そして今は」

『いまここに炎の騎士の魂を解放する。我が呼び掛けに応え、顕れ給え。』

煌めく瞳は真紅の炎が灯る。彼の名は―…



「アーサー王に忠誠を誓い、円卓第十八席に座す騎士―…ガウェインだ。」




『彼が座ると円卓には黄金の文字が浮かび上がった。光たるものを集めて創られた者を見るがいい。アーサー王の血族たる者の輝きを見るがいい。高貴な、円卓の騎士たちのなかにあって特別、他に抜きんでていた者―…ガウェイン卿を語る言葉を我等は持たない。』


「お前がアーサー王の騎士だと…戯言を」
バーディシャーは眉を寄せて呻くように言った。幾千の時の彼方に葬られた国・キャメロット。伝説の騎士王と円卓の騎士達など長い時を生きたバーディシャーであっても信じられぬものであった。だがそんなバーディシャーにガウェインはただ笑う。

「証をたてる必要はない。何故なら俺という存在はたった一人だからだ。」

炎の騎士・ガウェイン。
驕りもない淡々としたその言葉は逆に彼の揺るぎ無さが現れていた。そしてガウェインはバーディシャーに視線を向けながら手を差し出す。先程、バーディシャーがそうしたようにいっそ優雅とでもいえるような動作で。

「無益な争いは好まない…引いてくれないか。」
「俺は…弟を探しているだけだ。」
ああさっきも思ったが嫌いになれないなとガウェインは真摯にバーディシャーを瞳に映しながらなお言葉を紡ぐ。
「なぜ力で押し通そうとする」
だが対するバーディシャーはその端正な顔に酷薄な笑みを浮かべ、ガウェインを嘲った。

「価値の高い吸血鬼奴隷を捕らえた薄汚い人間に言葉が通じるとでも?おめでたいな。」
吐き捨てる様に言われたシャーの言葉は正しい。賤しい奴隷商人たちがそう簡単に商品である奴隷を手放すも無いのだ。そうそれをガウェインは知っている。彼も〝奴隷″がどういう扱いを受けているか知っているのだから。
「俺も力を貸し…」
だからこそ力になれると続けた言葉は激高したバーディーシャーの言葉に遮られた。
「見くびるなっ!!!!俺達は高貴なテュルク家の吸血鬼っ!!敵に卑しく尻尾を振るような真似はしない!!!誰よりも強く、誇り高い吸血鬼一族の長。それこそがバーディシャーだ!!!」
ガウェインの優しさはシャーにとっては茨と同じだったのかもしれない。あるいは剣よりもガウェインの言葉はバーディシャーを傷つけたのだ。バーディシャーは握りしめていた鮮血のシャムシール(剣)に向かって叫ぶ。


『バーディーシャーの呼び掛けに応え、剣よ!!命を贖い、血を掬い、力を解放せよ!!』
ャムシールの柄から真紅の棘が伸びる。みるみる間にシャーの腕に絡みつき、肩に首に、胸に纏わりついてシャーの体に牙を立てて切り裂いた。鮮血が棘をつたう。苦痛にまみれてもガウェインと必死に相対するその姿を見詰めていた。
「もういい」
だが―…ガウェインが一瞬にしてシャーの目の前から消えたかと思うと、もうその鞘から放たれた聖剣・ガラティーンの突きはバーディシャーの肩に突き刺さっていた。
「ぐあぁぁっっ」
苦痛に歪められたシャーの顔にガウェインは眉を寄せる。敵であろうと嫌いになれない相手だから仕方も無い。

「悪いな、少し寝ててくれ」



〝真白き閃光(ストライト・フレア)″



ガアアァアアアアアアアアンンンッッ
爆発音と一閃は辺りを白く塗りつぶして閃光は聖都へ流星の様に流れる。

「しまった…」
ガウェインは〝初級″魔法で相手を吹き飛ばしてしまったガラティーンに溜息を零し、鞘に収めると、片手でサラリッと長くなった朱金の髪を後ろに流した。

「力の加減ができないな」
そう苦笑して、炎の騎士は聖都へむかって自身も跳ぶのだった。


そんなガウェインの姿を獣人たちは呆けたように見上げていた。
虐げられてきた種である彼等を命がけで守った騎士を。人間を―…ずっと見惚れていた。
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