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災厄の魔王~戯れ~
ヴェルスレム
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どれくらいの時間が経ったのか光がやがて落ち着いた時、聖都には見事な光の守護結界が展開されていた。それは遥か彼方、視界が届かない先の連峰まで幾重にも覆う。国一つ覆い尽くす白金の結界はそれを行使した者の実力が一目でしれるほど繊細で美しいが、魔たる者はその光の中では辛いだろうとヴェルスレムは思った。だが情けなど無用だ。
「兄上っ!!!!!」
バーディシャーは真近で聖王の光で焼かれ、先程より酷い怪我で血族のいる檻の前で地に付している。純粋なる光は魔族に毒・・・どうやら彼等を庇っているようだ。魔力で血族の周りに結界を張っている。そしてバーディシャーは顔を上げ血で滲んだ視界の先、檻に入れられた『家族』を安心させるように笑った。致命傷を負いそれでも血でにじみながら笑ってみせる。
「そこでじっとしていろ直ぐに出してやるから」
それが出来ないであろうことを、この場にいる誰もが感じている。血塗れのまま檻に取り縋ったバーディシャーに誰も何も言えなかった。
その彼に聖王は一歩足を向ける。それに敏感に反応したのは檻の中の弟だ。
「貴様っ兄上に近づくなぁあああっ!!!」
「父上…と弟を返せ」
ゴホッと血を吐き、自分の胸を汚すバーディシャーにだが聖王は微笑んで・・・俺はそこで嫌な予感がした。
「陛下」
呼んでも振り返って下さらない。そしてとうとう膝をついた王に今度はガウェインが声をかけた。
「よせ、シュレイザード」
これから起こることをシュレイザードに長く仕えてきた俺達には分かってしまった。
王は―…バーディシャーを赦すだろう。
聖都を危険に陥れ、自身の血を吸った魔族を。
そっと跪いた王は、バーディシャーの血に濡れた手をとる。吸血鬼の真紅の瞳が驚きで見開かれ聖王を映した。
「すまなかった、我が国での人の悪意は私が心から詫びよう―・・・王として。」
叫びだしたい。聖なる王よ。我が王。貴方の慈悲はだが俺にとって狂おしい。
ヴェルスレムは聖剣アロンダイトの剣柄を握りしめた。隣ではガウェインもギリッと唇を噛みしめている。
「-・・・お前はこの俺を赦すというのか?」
そう驚きで見開かれた瞳に王はなお言葉を続ける。
「赦すも何も・・・本当に奴隷商人が聖都に蔓延ったのは私の落ち度なのだ。
そなたが俺の旗下に入ってくれるのであれば―…」
王の言葉を最後まで言わせず、バーディシャーは王の手をとり、そこに口付けを落とす。
「俺の名は―…テュルク家が当主アルスラーン。」
魔族がその名を明け渡すことの意味を知らない俺達ではない。
「アルスラーン。暁か、夜明けの光…」
そして聖王は男の名を確かめる様に綻ぶように笑った。
「アルスラーン、そのままでは辛いだろう?私の血を飲むと良い」
「シュレイザードっ!!!」
ガウェインの怒りは最もで、けれど聖王はそれに気づかない。俺達は王を傷つけたくない。それぐらいなら自分の血を与えた方が何百倍もマシだ。だが聖王は鷹揚に手をあげて俺達を制し屈むと自身の首にアルスラーンが牙を立て易いように髪を掻き上げる。その美しい首筋。
(むしろ陛下の首に跡をつけたいのは俺の方だ。)
ピチャリッと陛下の白い首に舌を這わす男―…その首に牙が立てられて、また俺の目の前で陛下の血が啜られる。
何の拷問だ。
「つぅっ」
陛下の甘やかな声。嫉妬でどうにかなりそうな時、ガウェインが耐え切れなくなったのだろう動いた。バーディシャーの肩を強烈な蹴りで踏み抜いて聖王と引きはがし、逆に聖王を丁寧すぎるほど優しく抱き上げる。
「ガウェイ」
驚いたような王の声。
「勝手に与えるな」
くぐもったような獣のような声で言ったガウェイの言葉には同意だが、そのあとぎゅうぎゅうに王を抱きしめた奴を今度は俺が思いっきり蹴ってやった。
やがてー・・・聖王の城にて魔族・テュルク家と条約が締結されたのはそれから暫く経ってからのことだ。
「兄上っ!!!!!」
バーディシャーは真近で聖王の光で焼かれ、先程より酷い怪我で血族のいる檻の前で地に付している。純粋なる光は魔族に毒・・・どうやら彼等を庇っているようだ。魔力で血族の周りに結界を張っている。そしてバーディシャーは顔を上げ血で滲んだ視界の先、檻に入れられた『家族』を安心させるように笑った。致命傷を負いそれでも血でにじみながら笑ってみせる。
「そこでじっとしていろ直ぐに出してやるから」
それが出来ないであろうことを、この場にいる誰もが感じている。血塗れのまま檻に取り縋ったバーディシャーに誰も何も言えなかった。
その彼に聖王は一歩足を向ける。それに敏感に反応したのは檻の中の弟だ。
「貴様っ兄上に近づくなぁあああっ!!!」
「父上…と弟を返せ」
ゴホッと血を吐き、自分の胸を汚すバーディシャーにだが聖王は微笑んで・・・俺はそこで嫌な予感がした。
「陛下」
呼んでも振り返って下さらない。そしてとうとう膝をついた王に今度はガウェインが声をかけた。
「よせ、シュレイザード」
これから起こることをシュレイザードに長く仕えてきた俺達には分かってしまった。
王は―…バーディシャーを赦すだろう。
聖都を危険に陥れ、自身の血を吸った魔族を。
そっと跪いた王は、バーディシャーの血に濡れた手をとる。吸血鬼の真紅の瞳が驚きで見開かれ聖王を映した。
「すまなかった、我が国での人の悪意は私が心から詫びよう―・・・王として。」
叫びだしたい。聖なる王よ。我が王。貴方の慈悲はだが俺にとって狂おしい。
ヴェルスレムは聖剣アロンダイトの剣柄を握りしめた。隣ではガウェインもギリッと唇を噛みしめている。
「-・・・お前はこの俺を赦すというのか?」
そう驚きで見開かれた瞳に王はなお言葉を続ける。
「赦すも何も・・・本当に奴隷商人が聖都に蔓延ったのは私の落ち度なのだ。
そなたが俺の旗下に入ってくれるのであれば―…」
王の言葉を最後まで言わせず、バーディシャーは王の手をとり、そこに口付けを落とす。
「俺の名は―…テュルク家が当主アルスラーン。」
魔族がその名を明け渡すことの意味を知らない俺達ではない。
「アルスラーン。暁か、夜明けの光…」
そして聖王は男の名を確かめる様に綻ぶように笑った。
「アルスラーン、そのままでは辛いだろう?私の血を飲むと良い」
「シュレイザードっ!!!」
ガウェインの怒りは最もで、けれど聖王はそれに気づかない。俺達は王を傷つけたくない。それぐらいなら自分の血を与えた方が何百倍もマシだ。だが聖王は鷹揚に手をあげて俺達を制し屈むと自身の首にアルスラーンが牙を立て易いように髪を掻き上げる。その美しい首筋。
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ピチャリッと陛下の白い首に舌を這わす男―…その首に牙が立てられて、また俺の目の前で陛下の血が啜られる。
何の拷問だ。
「つぅっ」
陛下の甘やかな声。嫉妬でどうにかなりそうな時、ガウェインが耐え切れなくなったのだろう動いた。バーディシャーの肩を強烈な蹴りで踏み抜いて聖王と引きはがし、逆に聖王を丁寧すぎるほど優しく抱き上げる。
「ガウェイ」
驚いたような王の声。
「勝手に与えるな」
くぐもったような獣のような声で言ったガウェイの言葉には同意だが、そのあとぎゅうぎゅうに王を抱きしめた奴を今度は俺が思いっきり蹴ってやった。
やがてー・・・聖王の城にて魔族・テュルク家と条約が締結されたのはそれから暫く経ってからのことだ。
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