7 / 12
第2話 遊園地で仲良し作戦!
3
しおりを挟む
ここで一度、視点を友沢 幸人に切り替えてみよう。
______
怜央とぼく、お互いが同じ人を好きだと発覚したあの日の翌日から、ぼくは本格的に櫻木くんへのアプローチを開始した。お昼に誘ったり、放課後一緒に出かけようと誘ったり……。
もちろん、それは怜央も同じだ。どうにか怜央と差をつけることはできないか……。
そう考えていた時、櫻木くんからレーブ・パラダイスの話を聞いた。……柄にもなく浮かれていたと、自分でも思う。
櫻木くん曰く、レーブ・パラダイスは恋人の聖地だという。
その話を自分に対して熱心にしてくれたということは、ようやく自分をそういう相手だと認識してくれたのだと舞い上がってしまっていた。
……まぁ、結局はぼくの早とちり、そして思い違いで、どういうわけかぼくと怜央、そして櫻木くんの3人でレーブ・パラダイスへ遊びに行くことになってしまった。
正直落胆しなかったかといえば嘘ではない。けれど、この話を電話で怜央に伝えた時、彼は逆に嬉しそうに笑ってこう言った。
『それってさあ……櫻木ちゃんがチャンスくれたってことじゃねえか?』
『チャンス……?』
『そう、その遊園地デートで、俺たちがどれだけ櫻木ちゃんのハートを掴めるか……そういうルールのゲームを、櫻木ちゃんは仕掛けてきたってわけさ』
『またそんな根拠のない解釈を……』
櫻木くんに告白を聞かれた時と言い、彼はポジティブ・シンキングの天才なのだろうか。
『まあでも、変にネガティブに考えるよりはマシだろ?』
『…………』
……怜央の極端にポジティブで楽観的な思考には呆れることが多いけれど、たしかに彼の言うことには一理ある。
思惑が外れたからって変にうじうじするよりも、学校以外にも櫻木くんと接近するチャンスができたと考える方が、心にも余裕ができる。
悩むのをやめて、思考を切り替えるとしよう。
『そうなると、今度の遊園地デートの最終目標は……』
『あぁ、どちらかが先に隠れラーピッドちゃんを見つけるってことだな……』
見つけたカップルは永遠に幸せになると言われる隠れラーピッドちゃん。櫻木くんが特に熱が入っていたのはそれについて話す時だった。
つまり、櫻木くんはぼくと怜央のどちらかが、隠れラーピッドちゃんを見つけることを望んでいる。
必ず見つけて、少しでも櫻木くんにそういう相手として意識してもらうんだ……!!
そして遊園地デート当日。ぼくたちは早速隠れラーピッドちゃん探しを始めた。ぼくは隠れラーピッドちゃんを見つけた人たちがSNSに投稿したヒントを検索し、そこから予想される場所へ、櫻木くんと怜央を案内した。
まず最初の場所は__。
「……なぁ、幸也。お前本当にここに入る気か?」
例えるならば、『勉強しないで期末テストに挑むぞ!』と言われた時のような正気を疑うような顔をしながら、怜央はぼくに尋ねる。
その質問の意味がわからず、ぼくは目を瞬かせた。
「どうして?ヒントのひとつによれば、一番可能性のある場所じゃないか__」
そう言ってぼくは、目の前の建物を仰ぎ見る。
「__このゴーストの館……つまり、お化け屋敷ならさ」
そう、ヒントのひとつには『暗い場所』とあった。遊園地で暗い場所と聞いてまず思いつくものといえば……。お化け屋敷じゃないか。
「まあそうだけど……お前が本当にいいなら入るぞ?いいか?ほんっっっとうにいいんだな?」
「しつこいな、いいって言ってるだろう。」
お化け屋敷に入ることを、怜央がどうしてこんなに躊躇うのか、ぼくにはわからなかった。彼、どちらかといえばホラー映画は喜んで見るほどの怖いもの好きだったはずだったけど……。
まあいいか……。あぁそうだ、忘れちゃいけないのが、櫻木くんのことだ。
「ごめん、勝手に話すすめちゃったけど、櫻木くんは怖いの平気?」
「うーん……ホラー漫画とかアニメはよく見るんですけど……ちょっと苦手……かな」
「そう……なら、外で待ってる?」
「いえ!せっかく来たんですから、頑張って入ります!」
うーん……怜央から聞いた通り、櫻木くんはぼくが思うより強い子のようだ。強がりじゃないといいけど……。
「じゃあ俺が先導して歩くからさ、櫻木ちゃんと幸人は手を繋いで、後ろからついてきてくれ」
「え?」
突然の怜央の提案に、ぼくと櫻木くんの戸惑いの声がハモる。
「い、いえ!ぼくが前を歩くので……!」
「いいっていいって!櫻木ちゃん怖いの得意じゃないだろうし、無理しなくていいよ。それに……幸人と手ぇ繋いでくれてた方が、安心するだろうし……」
……なんだ?怜央は一体何を企んでいる?怜央の提案通りにすれば、ぼくと櫻木くんは距離が近くなってしまう。彼が考えなしにぼくが有利になるような行動を取るとは思えないし……。
一体、何を思ってぼくに櫻木くんと手を繋ぐ行動を取らせたんだ?
「さーて、そういうわけでしゅっぱーつ!」
悶々と考えるぼくを他所に、怜央は呑気な声を上げて、ゴーストの館に向かってスタスタと歩き出した。
__怜央がなぜあのような言動を取ったのかを僕が知ったのは、それから約10分後のことだった……。
______
怜央とぼく、お互いが同じ人を好きだと発覚したあの日の翌日から、ぼくは本格的に櫻木くんへのアプローチを開始した。お昼に誘ったり、放課後一緒に出かけようと誘ったり……。
もちろん、それは怜央も同じだ。どうにか怜央と差をつけることはできないか……。
そう考えていた時、櫻木くんからレーブ・パラダイスの話を聞いた。……柄にもなく浮かれていたと、自分でも思う。
櫻木くん曰く、レーブ・パラダイスは恋人の聖地だという。
その話を自分に対して熱心にしてくれたということは、ようやく自分をそういう相手だと認識してくれたのだと舞い上がってしまっていた。
……まぁ、結局はぼくの早とちり、そして思い違いで、どういうわけかぼくと怜央、そして櫻木くんの3人でレーブ・パラダイスへ遊びに行くことになってしまった。
正直落胆しなかったかといえば嘘ではない。けれど、この話を電話で怜央に伝えた時、彼は逆に嬉しそうに笑ってこう言った。
『それってさあ……櫻木ちゃんがチャンスくれたってことじゃねえか?』
『チャンス……?』
『そう、その遊園地デートで、俺たちがどれだけ櫻木ちゃんのハートを掴めるか……そういうルールのゲームを、櫻木ちゃんは仕掛けてきたってわけさ』
『またそんな根拠のない解釈を……』
櫻木くんに告白を聞かれた時と言い、彼はポジティブ・シンキングの天才なのだろうか。
『まあでも、変にネガティブに考えるよりはマシだろ?』
『…………』
……怜央の極端にポジティブで楽観的な思考には呆れることが多いけれど、たしかに彼の言うことには一理ある。
思惑が外れたからって変にうじうじするよりも、学校以外にも櫻木くんと接近するチャンスができたと考える方が、心にも余裕ができる。
悩むのをやめて、思考を切り替えるとしよう。
『そうなると、今度の遊園地デートの最終目標は……』
『あぁ、どちらかが先に隠れラーピッドちゃんを見つけるってことだな……』
見つけたカップルは永遠に幸せになると言われる隠れラーピッドちゃん。櫻木くんが特に熱が入っていたのはそれについて話す時だった。
つまり、櫻木くんはぼくと怜央のどちらかが、隠れラーピッドちゃんを見つけることを望んでいる。
必ず見つけて、少しでも櫻木くんにそういう相手として意識してもらうんだ……!!
そして遊園地デート当日。ぼくたちは早速隠れラーピッドちゃん探しを始めた。ぼくは隠れラーピッドちゃんを見つけた人たちがSNSに投稿したヒントを検索し、そこから予想される場所へ、櫻木くんと怜央を案内した。
まず最初の場所は__。
「……なぁ、幸也。お前本当にここに入る気か?」
例えるならば、『勉強しないで期末テストに挑むぞ!』と言われた時のような正気を疑うような顔をしながら、怜央はぼくに尋ねる。
その質問の意味がわからず、ぼくは目を瞬かせた。
「どうして?ヒントのひとつによれば、一番可能性のある場所じゃないか__」
そう言ってぼくは、目の前の建物を仰ぎ見る。
「__このゴーストの館……つまり、お化け屋敷ならさ」
そう、ヒントのひとつには『暗い場所』とあった。遊園地で暗い場所と聞いてまず思いつくものといえば……。お化け屋敷じゃないか。
「まあそうだけど……お前が本当にいいなら入るぞ?いいか?ほんっっっとうにいいんだな?」
「しつこいな、いいって言ってるだろう。」
お化け屋敷に入ることを、怜央がどうしてこんなに躊躇うのか、ぼくにはわからなかった。彼、どちらかといえばホラー映画は喜んで見るほどの怖いもの好きだったはずだったけど……。
まあいいか……。あぁそうだ、忘れちゃいけないのが、櫻木くんのことだ。
「ごめん、勝手に話すすめちゃったけど、櫻木くんは怖いの平気?」
「うーん……ホラー漫画とかアニメはよく見るんですけど……ちょっと苦手……かな」
「そう……なら、外で待ってる?」
「いえ!せっかく来たんですから、頑張って入ります!」
うーん……怜央から聞いた通り、櫻木くんはぼくが思うより強い子のようだ。強がりじゃないといいけど……。
「じゃあ俺が先導して歩くからさ、櫻木ちゃんと幸人は手を繋いで、後ろからついてきてくれ」
「え?」
突然の怜央の提案に、ぼくと櫻木くんの戸惑いの声がハモる。
「い、いえ!ぼくが前を歩くので……!」
「いいっていいって!櫻木ちゃん怖いの得意じゃないだろうし、無理しなくていいよ。それに……幸人と手ぇ繋いでくれてた方が、安心するだろうし……」
……なんだ?怜央は一体何を企んでいる?怜央の提案通りにすれば、ぼくと櫻木くんは距離が近くなってしまう。彼が考えなしにぼくが有利になるような行動を取るとは思えないし……。
一体、何を思ってぼくに櫻木くんと手を繋ぐ行動を取らせたんだ?
「さーて、そういうわけでしゅっぱーつ!」
悶々と考えるぼくを他所に、怜央は呑気な声を上げて、ゴーストの館に向かってスタスタと歩き出した。
__怜央がなぜあのような言動を取ったのかを僕が知ったのは、それから約10分後のことだった……。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる