俺らが好きなのはキミだけっ!

コハク

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第2話 遊園地で仲良し作戦!

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 カフェを出たぼくは、友沢先輩と大神先輩と共に、目的地へ向かった。

 しばらくしてようやく目的地の前にたどり着けば、ぼくは目の前の、壁を白で塗られた可愛らしい建物を見上げる。
 ここならきっと……いや、絶対隠れラーピッドちゃんは見つかるはず!

「行きましょう、先輩方!」

 ぼくは2人にそう呼びかけ、建物の中へと足を踏み入れた。

 中に入れば、シックな雰囲気とピシッとした感じのスタッフ……の格好をしたキャラクターのぬいぐるみがぼくらを出迎えた。

「なんだか本格的だな……」

 大神先輩は感嘆の声をあげながら辺りを見回し、友沢先輩もそれにうんうんと頷いている。

 だが、目的地はここではない。その奥……。赤色に塗装された鉄製の大きな扉の先だ。
 友沢先輩が扉の前に行けば、取手を握り、ゆっくりと扉を開く。
 行こう、とぼくと大神先輩に向かって声をかけて歩き出す友沢先輩の後に、ぼくたちは続いた。

 まるで、ダンジョンに挑む勇者の仲間になった気分だ。


 中に入った時に最初に目に飛び込んできたのは、壁を覆い隠すような大きなスクリーン、そして、その前に並べられたたくさんの座席だった。
 よく見れば座席には、ポップコーンやジュースを持ったぬいぐるみが座っている。

 ……そう、ぼくたちが来たこの場所はミニシアター……。
 その名は、である!

 『ラーピッドちゃんシアター』では、決まった時間にラーピッドちゃんとその仲間たちの楽しいお話が、スクリーンに映し出される。
 あちこちにキャラクターのぬいぐるみが置かれていたのは、『ここはラーピッドちゃんたちがよく遊びにくる映画館である』という設定だからだそう。


 ……『暗い場所』、映画を見る際、劇場は必然的に暗くなる。

 『キャラクターの魅力に触れられる』、ラーピッドちゃんシアターのお話は、知られざるラーピッドちゃんたちの秘密を知ることができると評判だ。

 そして、『ゆっくり座席に座れる』……これはまあ、言わずもがな。

 ……つまり、ラーピッドちゃんを見つけた人たちが投稿したあらゆるヒントをもう一度振り返り、ヒントひとつひとつ結びつけた結果、ぼくが出した答えこそ、『ラーピッドちゃんシアター』だったのだ。

 ……我ながら、なんでもっと早く気づかなかったんだとは思う。
 心の中で苦笑いしつつ、ぼくは早速しゃがんで座席の下を見てみた。

「……うーん、座席の下にはないな……」

「扉の後ろ……ない……。怜央、そっちはどう?」

 入口の扉の後ろを探っていた友沢先輩は、スクリーン周辺にいる大神先輩に声をかける。
 すると、大神先輩の元気な声がすぐに返ってきた。

「おーい!スクリーン裏にあったぜ!」

「「!!」」

 スクリーンを軽く捲ったまま手招きをする大神先輩に、ぼくと友沢先輩は駆け寄った。

「……わぁ!」

 ぼくは思わず、ほぉ、と息を吐く。
 スクリーン裏の壁には、ぼくらが探し求めていた隠れラーピッドちゃんが、確かにあったのだ。

「やー……なんか達成感やばいなぁこりゃあ……」

「ふふ、ほんと。宝探しみたいで楽しかったね」

 長らく探し回ってようやく見つけた後の脱力感ゆえか背伸びをする大神先輩を見つめ、友沢先輩はくすくすと笑う。

 ……おっと、安心感で忘れるところだった。ラーピッドちゃんを見つけたということは……。

「無事にラーピッドちゃんを見つけられたところで、写真を撮りましょう!先輩たち!」

「「!!」」

 『隠れラーピッドちゃんを見つけて一緒に写真を撮ったカップルは幸せになれる』というジンクス……。
 そのジンクスのために、ぼくたちは今までがんばってきたんだ!
 後はぼくが大神先輩と友沢先輩のツーショットを撮れば、先輩たちの仲を後押しできる……!

「それじゃあ先輩たち、写真を撮るので、どちらかスクリーンをあげ……」

 スマホのカメラアプリを用意しながら、ぼくがそう言いかけた時。

「「最初はぐー!」」

「……えっ?」

「「ジャンケンポン!」」

「……あの?」

「「あいこでしょ!」」

「ちょっと……先輩方?」

 ……大神先輩と友沢先輩は、何故かいきなりジャンケンをはじめた。なにがなんだかわからず混乱したぼくは、慌てて2人の間に割って入った。

「あの!2人とも何をしているんですか!?」

「「え?」」

 あいこのジャンケンを続けていた大神先輩と友沢先輩は、ようやくぼくの方を振り向いてくれたのだが、2人ともきょとんとした表情を浮かべていた。

「何って……どっちが先に櫻木ちゃんとツーショットを撮るか、ジャンケンで決めてんだけど」

 さもあたりまえであるように、大神先輩は言い切る。友沢先輩もうんうんと頷いているし……。
 ぼくの口から、思わずため息が出る。

「……あの、ぼくのことはいいので、先輩たちだけで写真を撮ってください」

 じゃなきゃ、なんのためにがんばってきたんだ。推したちのデートに同行していただけるだけでも恐れ多いというのに、一緒に写真を撮るなんて……。
 これ以上、見守り側の領域を越えた行動をとる訳にはいかない!

 ……しかし、先輩たちは一向に譲る様子はなかった。

「何言ってんの櫻木ちゃん、寂しいこと言うなっつーの!」

「そうだよ。……櫻木くんも写ってくれないと、意味がないんだ」

「先輩たち……」

 ……そうだよね。後輩をハブってツーショットを撮るなんて傍から見たら意地悪な真似、優しい先輩たちができるわけがない……。
 先輩たちに気を使わせるなんて、2人のデートにぼくがついてきたのは、間違いだったんじゃ……。

 ……でも、なんでかな。ぼくを見つめる先輩たちの笑顔は、心からぼくを歓迎してくれているように見えた。
 思い上がりかもしれないけど、それに気づいたぼくの心が、じんわりと暖かくなっていくのを感じた。
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