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第一部
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しおりを挟むメリシャが神官と楽しんでいた頃。
こっそりメリシャの傍から離れたルーは、ある天幕へ向かっていた。
ほとんどの護衛と神官は天幕に入っており、外を出歩く者は見回りを担当する部隊を除いて誰も居なかった。
人目から隠されるように、奥の方に建てられた天幕へ差し掛かると、中から枢機卿の声が響いてくる。
ルーが中へ侵入すると、枢機卿と複数の騎士が囲む中で、捕えられた盗賊が縄で縛られている。
枢機卿も騎士も質問を投げかけているが、相手は沈黙したまま時間が過ぎているようだった。
『我が手を加えようか。』
そこで初めてルーに気が付いた面々は驚愕し、盗賊の頭目は何かに怯えるような仕草をする。
「ルー様。いつ、こちらにいらしたのでしょうか。」
枢機卿は落ち着いた雰囲気を醸しだし、ルーに問いかける。
騎士らは尊敬の眼差しで枢機卿を横目で眺めつつ、目前に佇む存在へ畏怖のみ感じていた。
『つい先程だな。こちらと敵対する者がどういう者か少し興味があってな。』
ルーと一瞬だけ視線が交じ合ってしまった頭目はより一層、身体を小刻みにガタガタと震わせた。
「メリシャは何か気にしておりました、か。」
枢機卿は頭の隅に引っ掛かっていた想いを告げた。
そこには枢機卿でもあり、養父としての顔も窺える。
『特に気になっている風ではなかったぞ。今は神官らが接待して紛らわせている最中であろう。』
ふと思い浮かぶ、談笑する光景にルーは笑みを浮かべた。
「安心いたしました。最近は狙われることが度々起きておりましたから、少々心配しておりました。」
枢機卿はルーの声音に安堵し、その胸の内を明かした。
『まぁ、確かにな。ーーそれで、この者から何か分かったのか。』
和んでいた場はルーの切り替わった雰囲気で、天幕内に重圧が伸し掛かる。
それまでの和やかな空気に包まれていたときとは違う、異様な空気にその場にいる全員が気を引き締める。
「聖獣様。いいえ。何も喋りませんので、困り果てていたところであります。」
それまで黙って静観していた騎士の一人が場を代表して応える。
『ふむ。ーーどうやら魔物の侵攻で家を失った農民のようだな。あの場を封鎖してから誰も通っていなかったようだ。』
ルーが頭目を前足で抑えてから数分で体勢を戻し、そう淡々と報告した。
ルーから数瞬で解放された頭目の目には苦痛に耐えたような涙が浮かんでいたが、誰も咎めることはなかった。
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※お知らせ※
次回更新日程:2025年6月23日 17:00・予定
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