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獅子

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「何をやっている!」

『ガウゥ』

 光輝が召喚した式神を蹴りながら叫ぶが、式神自身は仰向けの姿勢から動かない。

 獅子は威厳もなく、弱々しく見える。

「光輝、これはどういうことだ?」

「知らねぇよ!おい、さっさと行け!」

 苛立ちを隠そうとしないで、光輝は式神である獅子に命じる。

 本来、契約した場合での主従関係が存在しており、式神は命令に従うことが常とされている。


『(我々の気配を知って怖気付いているようですね。強いのかもしれませんが、我々に敵うわけがないでしょうし。)』

『(それだけでは、なかろう。我々の気配は隠しているから、微かに漏れる気に当てられて萎縮しているんだろうさ。それに…記憶を継承した影響だろう)』

『(なるほど)』

 ハクとリュウの会話がコソコソと行われる中、獅子が光輝の命令に従うように飛び起きて身体を肥大化させる。

 その体躯は寺田家が継がれてきた獅子の本来の姿だった。

 一度の契約で獅子に嫌われた輝明は当時と変わらない容姿に先程とは打って変わって畏怖を感じる。

『気のせいか。燃えてしまえ!』

「ーーぐっ」

『『(輝明様!』』

 獅子が叫ぶと同時に、防ぐ手立てを立てられずに火傷を負う。

 ハクとリュウが心配になり、遠目に隠れているテトと共に駆け寄ろうとする。

 起き上がる輝明が手をハクとリュウとテトが見える方に出すことで察した一同は渋々従った。

「今日はここまでだ。次はもっと新しいのを見せてやるよ。」

「あぁ。お疲れ」

「……ちっ、愚兄にお似合いだよ。さっさと行けよ、目障りだ。」

「光輝様。お迎えに上がりました。」

「ああ、今行くよ。」

 来た時に案内役をした人が光輝を連れて訓練所を去っていく。


『輝明様!ご無事ですか?』

『テト、早よ癒せ!』

『ピッ!』

 光輝が訓練場を去り、ほっと息を吐いた輝明が力なく倒れたことを起点に、テトが癒しに掛かった。

 仄かに光る中、輝明の火傷が癒やされ、傷一つない姿へ変わる。

 輝明は心配そうに寄り添う三者に礼を言うと、家へ帰ることにするのだった。
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