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訓練場

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『(あの若いの、輝明様を愚兄などと。)』

『(まあまあ。何か母屋で行われるのですから、それを見てからでも遅くありませんよ。)』

 輝明がテーブルで記していた下地を片付け中、ハクとリュウはコソコソと物騒な話をしている。

「(ところでテトはどうした?)」

『…』

『(…輝明様の肩に揺られて寝ていますね。)』

『(なんと、羨ましい。)』

「ハク。リュウ。姿を隠しておけよ。これまで召喚できなかったのに、できたと知られたら厄介だからな。」

『『はっ。』』

 そんな会話をハクとリュウがしている内に片付けが済んだ輝明は二体に注意を促して母屋に向かうことにした。


 母屋では既に準備ができていたようで、案内されるまま、訓練場に向かった。

 訓練場の入り口を開けると、中央に佇んでいた光輝が笑みを浮かべて振り返ってきた。

「よく逃げなかったな、愚兄。さあ。さっさと的になってくれ。」

 訓練場には複数の的が存在しており、普通は式神を付与させて的で身を守るのだが、輝明の場合には式神の召喚はおろか、既存の式神しか使えないため光輝の放つ攻撃を体力のある限り避け続けるしかなかった。

 既存の式神とは陰陽師になる手前、式神がどういったものかを学ぶために、魔力さえ持っていれば発動できる媒体を使った式神のことで、つまりは火の攻撃があれば紙束で守る他に身を守る方法がないのである。

 光輝の召喚する式神が用意できる頃、輝明は毎回置かれている的を持てるだけ抱えていたが、記憶を継承した事で的一つだけを持っていたことを不審に思うが光輝は攻撃を始めた。

 輝明は光覇の記憶を継承したことにより、これまで既存の式神か的に頼るしかなかったが、的自体に魔力を纏わせることで身を守る方へ変えていた。

 そして光輝の攻撃が的に当たる瞬間、的は破壊されずに身を守ることに成功した。

「なんだ、それは。」

「新しく考えた的の使い方だよ。」

「ちっ。なら、この式神で!」

 始めこそ驚いていたが、光輝は懐から赤い式神札を取り出したことで輝明との戦況が一変する…かに思えた。

 その式神札から召喚されるのは分身体とはいえ、代々寺田家に継がれてきた式神だった。

 しかし召喚されたのは背を地面につけ腹を天井に向けて動物で言うところの屈服の姿勢で召喚された獅子であった。
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