少女、街を出る【完結】

少女と野営

　アズから貰った石を投げつけて走ったレティは後ろから誰も来ないことに気付いてから、ゆっくり森の中を進み続けていた。

　レティが進む道の先は木々の間が空いている道を進んでいた。

　レティが進もうと足を向けると、まるで木々が歓迎するかのように、ゆっくりと退いてくれるのだった。

　退くのを初めて見た時は怖がっていたが、レティが怖がると木の方から離れてしまい、自分の周囲に木々が近寄らなくなったのだった。

　それでも立ち退かずに立ち塞がる時もあったが、何かあるのだろうと察して動かない木の方向に進まないようにした。

　それからレティは退いてもらった道に有り難みを抱いて突き進んでいった。

　冒険者がその光景を見たら、卒倒ものだっただろう。

　魔の森自体は魔物で溢れかえっているため、中級、低級の冒険者は立ち入ることが禁止されていた。

　だからと言って、高位に位置する冒険者も滅多に近寄らない。

　魔の森では誰彼構わず、襲われることので知れ渡っていた。

　そんな森に対しての常識を知らないレティは、そのまま先へと進んでいく。



　かれこれ時間が経ち、日が暮れ始めた頃。

　レティは底の浅い川を見つけたことで、野営の準備に入った。

　いつの間にか転がっていた枯れた枝を拾い、アズからもらった石の中から火を付ける物忘れて選んで、枝に火を着けて焚き火を作った。

　荷物の中に入れてきた干し肉を火で炙り、冒険者ギルドで買い漁った携帯食糧を夕飯として済ませることにしたのだった。

「できれば、食べられる野草が生えてたら良いのになぁ。　まぁ、無いものは仕方ないっか。」

　焚き火の側で敷いた寝床で眠りにつくレティの背後では、いくつか草が生えようと芽を付けていた。