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その日、貴族の子息と子女による社交界デビューが行われていた。
社交界デビューとは貴族として生まれたのであれば、その子息子女は参加しなければならない行事である。
それは貴族と認められている男爵家から始まり、子爵家、伯爵家、辺境伯爵家、侯爵家、公爵家、大公家、そして王族が含まれる。
男爵家よりも家格の低い騎士爵家と準男爵家は主に肩書だけであるため、貴族家と認められた家系の血筋であれば参加することができる。
だがこの日は辺境侯爵家の子息が参加することで貴族家の令嬢はお互いを牽制し合っていた。
辺境侯爵家とは、辺境伯爵家当主だった先代が隣国からの侵攻を死守したことで陞爵された貴族だった。
しかし国王から褒賞として陞爵されたものの、その地位は貴族社会では複雑なものへと変わってしまった。
通常、辺境伯爵家は侯爵家と同等に近い権力を持ち合わせている。
それが侯爵家へと陞爵されれば、それまで均衡していたバランスが崩壊し、公爵家の地位と同等にまでなってしまった。
当代はこれを受け、滅多なことでは発言することを避ける傾向になった。
爵位としては公爵家と同じ発言力があるため、発言によっては優先権を得てしまうのだ。
そんな社交界デビューにて話題とされた子息は、領地での荒事により一年遅れての参加する体をとっていた。
「辺境侯爵の方でしょうか。私、公爵家の」
「辺境侯爵家の御子息でしょうか。私」
「辺境侯爵子息様でいらっしゃいませんか?」
「ーー」
王族によって開催された社交界デビューは国王の演説の終盤、乾杯と告げてすぐの事だった。
あらゆる方面から貴族令嬢であろう少女たちが貴族夫人として褒められない程の足捌きで、一箇所へと殺到していく。
そこには白金色の髪に、不言色という珍しい瞳の少年が立っていた。
「ーーあのっ!」
「はい?」
だが運命の悪戯か、王族の挨拶終了と同時に少年はすぐ近くに佇んでいた少女へと声を掛けてしまった。
少年の頬は興奮のあまり赤く火照っていた。
「お名前を、伺ってもよろしいでしょうか?」
「は、はい。私はグレハラ子爵家が次女、ティリア・グレハラでございます。」
「ティリア嬢。私、ホルム辺境侯爵家が長男、ヴァイトゥルスと、申します。私と婚約しては頂けないでしょうか。」
「へ?」
「もし貴女に想いの方が居るのであれば、私は身を引きます。」
「あっ!いえ、私にそのような方はいらっしゃいません」
貴族として生を受けたティリアとしては会場に入場してから、あまりの居心地の悪さに静かに佇んでいた。
そこに話しかけた少年、ヴァイトゥルスに驚きを隠せないだけでは治らず、初めて家族以外と接したことで混乱のあまり話をよく聞けていなかった。
それでも何とか返事を返せたことに、内心でほっとしているティリアであった。
「では婚約の返事をいただきたいのだが。どう、だろうか。」
「は、はい。わ、私でよろしければ、喜んでお受けいたします。」
この瞬間、何の接点もなかった両家は二人の発言というよりも、辺境侯爵家であるヴァイトゥルスの発言によって婚約は決定へと決まった日となった。
社交界デビューとは貴族として生まれたのであれば、その子息子女は参加しなければならない行事である。
それは貴族と認められている男爵家から始まり、子爵家、伯爵家、辺境伯爵家、侯爵家、公爵家、大公家、そして王族が含まれる。
男爵家よりも家格の低い騎士爵家と準男爵家は主に肩書だけであるため、貴族家と認められた家系の血筋であれば参加することができる。
だがこの日は辺境侯爵家の子息が参加することで貴族家の令嬢はお互いを牽制し合っていた。
辺境侯爵家とは、辺境伯爵家当主だった先代が隣国からの侵攻を死守したことで陞爵された貴族だった。
しかし国王から褒賞として陞爵されたものの、その地位は貴族社会では複雑なものへと変わってしまった。
通常、辺境伯爵家は侯爵家と同等に近い権力を持ち合わせている。
それが侯爵家へと陞爵されれば、それまで均衡していたバランスが崩壊し、公爵家の地位と同等にまでなってしまった。
当代はこれを受け、滅多なことでは発言することを避ける傾向になった。
爵位としては公爵家と同じ発言力があるため、発言によっては優先権を得てしまうのだ。
そんな社交界デビューにて話題とされた子息は、領地での荒事により一年遅れての参加する体をとっていた。
「辺境侯爵の方でしょうか。私、公爵家の」
「辺境侯爵家の御子息でしょうか。私」
「辺境侯爵子息様でいらっしゃいませんか?」
「ーー」
王族によって開催された社交界デビューは国王の演説の終盤、乾杯と告げてすぐの事だった。
あらゆる方面から貴族令嬢であろう少女たちが貴族夫人として褒められない程の足捌きで、一箇所へと殺到していく。
そこには白金色の髪に、不言色という珍しい瞳の少年が立っていた。
「ーーあのっ!」
「はい?」
だが運命の悪戯か、王族の挨拶終了と同時に少年はすぐ近くに佇んでいた少女へと声を掛けてしまった。
少年の頬は興奮のあまり赤く火照っていた。
「お名前を、伺ってもよろしいでしょうか?」
「は、はい。私はグレハラ子爵家が次女、ティリア・グレハラでございます。」
「ティリア嬢。私、ホルム辺境侯爵家が長男、ヴァイトゥルスと、申します。私と婚約しては頂けないでしょうか。」
「へ?」
「もし貴女に想いの方が居るのであれば、私は身を引きます。」
「あっ!いえ、私にそのような方はいらっしゃいません」
貴族として生を受けたティリアとしては会場に入場してから、あまりの居心地の悪さに静かに佇んでいた。
そこに話しかけた少年、ヴァイトゥルスに驚きを隠せないだけでは治らず、初めて家族以外と接したことで混乱のあまり話をよく聞けていなかった。
それでも何とか返事を返せたことに、内心でほっとしているティリアであった。
「では婚約の返事をいただきたいのだが。どう、だろうか。」
「は、はい。わ、私でよろしければ、喜んでお受けいたします。」
この瞬間、何の接点もなかった両家は二人の発言というよりも、辺境侯爵家であるヴァイトゥルスの発言によって婚約は決定へと決まった日となった。
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