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社交界デビューを恙無く終えることのできた貴族子息子女は帰宅へと至った。
辺境侯爵家のヴァイトゥルスによる婚約発言によって、求婚どころか挨拶すらできなかった令嬢はあまりの出来事にショックを受け、帰宅後も放心状態が続いていた。
だが時間が経てば経つほど心境は変わり、ヴァイトゥルスに選ばれた令嬢、ティリアに嫉妬する令嬢が増えていくのだった。
反対に社交界デビューから帰宅したティリアを迎えた家族は無事に終えられたことを安心して、ほっと息を吐いていた。
「それで初めての社交界デビューはどうだったかな?是非とも聞かせておくれ。」
「えっと。社交界は果たせたんだけど…」
『ん?』
しかし社交界デビューで起きた事を微笑んで聞いていた家族だったが、ティリアの口から求婚されたと聞くと同時に表情が固まってしまった。
それに加えて、"はい"と答えたことを知るや否や家族全員が倒れてしまった。
その場の中で、状況を最も理解できていなかったのはティリアだけであった。
翌朝、目が覚めた夫妻はもう一度ティリアに社交界デビューについて聞き返そうと決意するが、既に時は遅かった。
何故なら聞き返す以前に、書簡を持った使者が来訪していたため、逃避すらままならなかったからである。
辺境侯爵家の使者が携えた婚姻契約書によって、家族が見守る中、ティリアは契約書に署名を済ませたことで婚約が成立した。
「これにて今日より、ティリア様は我がホルム辺境侯爵家、ヴァイトゥルス様との婚約が成立したことを祝福いたします。」
と言って使者は屋敷を退出していった。
夫妻は拍手するものの、祝福すべきことと分かっていても、あまりの事に唖然としていた。
通常、貴族間での婚約は両家の当主が話し合いの場を設けて決めることが通例である。
だが、ここで例外が出来上がる。
先代の功績で辺境伯爵位から陞爵したホルム辺境侯爵家は発言権が王族を除く貴族階級の中で誰よりも優先される。
そのため、ホルム辺境侯爵家の子息が決め、発言したことで婚姻契約書に署名せずとも決定された事に等しい。
謂わば、慣例上の理由で使者が持ってきただけである。
仮に、この婚姻契約書に署名せず使者を追い返せば当主によっては反逆罪に問われる場合もあり、問われずとも高位貴族に逆らったとして社交界では生きづらくなるだけである。
それを理解している子爵夫妻は署名中、静かに見守るほかに道はないのだった。
「お父様?」
「なな、なんだい?ティリア」
「? 昨晩も伝えましたが、わたし婚約することになりました!」
「ああ。お、おめでとう、ティリア。」
「今日はお祝いしなければなりませんね!料理長に、ご馳走を頼んでおきましょう。」
「はい!」
自身の妻とティリアが和気藹々と部屋を出て行く姿を後目に当主であり父であるクリフは外を眺めて想いを馳せる。
あわよくば、娘であるティリアが幸せを掴めるようにと、力なく溜息混じりに願うしかなかった。
辺境侯爵家のヴァイトゥルスによる婚約発言によって、求婚どころか挨拶すらできなかった令嬢はあまりの出来事にショックを受け、帰宅後も放心状態が続いていた。
だが時間が経てば経つほど心境は変わり、ヴァイトゥルスに選ばれた令嬢、ティリアに嫉妬する令嬢が増えていくのだった。
反対に社交界デビューから帰宅したティリアを迎えた家族は無事に終えられたことを安心して、ほっと息を吐いていた。
「それで初めての社交界デビューはどうだったかな?是非とも聞かせておくれ。」
「えっと。社交界は果たせたんだけど…」
『ん?』
しかし社交界デビューで起きた事を微笑んで聞いていた家族だったが、ティリアの口から求婚されたと聞くと同時に表情が固まってしまった。
それに加えて、"はい"と答えたことを知るや否や家族全員が倒れてしまった。
その場の中で、状況を最も理解できていなかったのはティリアだけであった。
翌朝、目が覚めた夫妻はもう一度ティリアに社交界デビューについて聞き返そうと決意するが、既に時は遅かった。
何故なら聞き返す以前に、書簡を持った使者が来訪していたため、逃避すらままならなかったからである。
辺境侯爵家の使者が携えた婚姻契約書によって、家族が見守る中、ティリアは契約書に署名を済ませたことで婚約が成立した。
「これにて今日より、ティリア様は我がホルム辺境侯爵家、ヴァイトゥルス様との婚約が成立したことを祝福いたします。」
と言って使者は屋敷を退出していった。
夫妻は拍手するものの、祝福すべきことと分かっていても、あまりの事に唖然としていた。
通常、貴族間での婚約は両家の当主が話し合いの場を設けて決めることが通例である。
だが、ここで例外が出来上がる。
先代の功績で辺境伯爵位から陞爵したホルム辺境侯爵家は発言権が王族を除く貴族階級の中で誰よりも優先される。
そのため、ホルム辺境侯爵家の子息が決め、発言したことで婚姻契約書に署名せずとも決定された事に等しい。
謂わば、慣例上の理由で使者が持ってきただけである。
仮に、この婚姻契約書に署名せず使者を追い返せば当主によっては反逆罪に問われる場合もあり、問われずとも高位貴族に逆らったとして社交界では生きづらくなるだけである。
それを理解している子爵夫妻は署名中、静かに見守るほかに道はないのだった。
「お父様?」
「なな、なんだい?ティリア」
「? 昨晩も伝えましたが、わたし婚約することになりました!」
「ああ。お、おめでとう、ティリア。」
「今日はお祝いしなければなりませんね!料理長に、ご馳走を頼んでおきましょう。」
「はい!」
自身の妻とティリアが和気藹々と部屋を出て行く姿を後目に当主であり父であるクリフは外を眺めて想いを馳せる。
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