上 下
1 / 9

1

しおりを挟む
 世界には魔法が存在している。
 魔法には属性が存在しており、それぞれの属性に特性が存在すると言われている。

 属性は火、水、風、土、光、闇、無の7種あることが確認されている。
 無を除く属性のいずれかを生まれた時から所有している。
 光属性は悪環境で遺体を放置されることで発生する不死種魔物に特効性が高く、人々を癒すことができる。
 闇属性は影を用いて縄のように縛ることや、相手から隠れることができる反面、犯罪に使われることもある。

 火属性、水属性、風属性、土属性を基礎属性という。
 光属性と闇属性は特殊属性と区分けされている。
 無属性が除かれているのは、誰でも体内に存在しているからだ。


 とある城塞都市にて。
 法衣貴族が私財で教会を運営されていた。
 教会の名目上は身寄りのない子供を養い、教育する場として機能していた。
 だが一定の年齢になると、それぞれの持って生まれた属性魔法で特訓をすることが強要されていた。

 基礎魔法を持っている養い子は教会の騎士になる道か、冒険者として生計を立てる道か、選ぶ必要があった。
 教会の騎士になれば教会が存続しているうちは生計を立てられるが、他地区の教会と関わっていないため、城塞都市から外に出ることはできない。
 冒険者の道を進めば他地区にも出られるが、魔物との遭遇が高く、危険も多かった。

 光属性を持って生まれた養い子は教会の巫女になるために教育される。
 教会は治療院も兼任しているため、稀有な光属性を逃す手はなかった。
 一部の光属性所有者が冒険に憧れて冒険者になる者も少なくなかったが、人数が少なかったことから見逃されていた。

 数少ない闇属性を持って生まれた養い子は自主性を促されることが多い。
 騎士にも冒険者にもなれない半端者と思われやすく、実際に名を馳せた者もいるが極一部しか存在していない。


 教会の養い子の中に、赤い髪を持つサラマドラという女子が暮らしていた。
「いつか冒険者になったら、一緒に冒険しようね!」
「うん!」
 仲睦まじい同年代の孤児と冒険者になる約束をしながら、サラマドラは鑑定される日を待ち遠しくしていた。


 鑑定の日は魔術師が作ったとされる無属性の水晶を用いて鑑定される。
 水晶に手を当てると、その所有属性によって光を放つ。
 火属性なら赤く、水属性なら青く、風属性なら青緑に、土属性なら茶色く、光属性なら閃光を放ち、闇属性なら黒く禍々しい光を放つ。


 そしてサラマドラは闇属性と鑑定されたのだった。
 基礎属性だったと喜び合うなか、結果を聞かれたサラマドラは小さく闇属性だと呟いた。
 その結果、それまで何年も一緒に暮らしてきた同年代の友人から仲間外れにされるようになった。

 教会では最低でも12歳までいることが義務付けられていたため、そんな環境のもとでサラマドラは暮らし続けた。
 冒険者には12歳から仮としてなれるが、一般の冒険者に登録するには14歳と決められている。
 サラマドラは12歳になった日の夜、誰にも気付かれずに教会を出た。
しおりを挟む

処理中です...