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「さっき紹介されたウィンだ。俺に敬称は要らねぇ。」
「はい!」
「それじゃあ、例の職についてだが。あいつからは何て聞いてる?」
 ノルドと名乗った男性が見えなくなると、話し始めた。
「えと、闇属性所有者が得意なことでできる依頼だと…」
「まあ簡単に言えば、そうだな。もう少し言えば、役職の名は斥候職という。冒険者ギルドのギルド職員とは違うが、冒険者ギルドに雇われる関係になる。まぁ、同業者みたいなもんだ。ここまではいいか?」
「はい!」
 役職名は初めて知ったが、不安に思うことなんてなかった。

「じゃ仕事の内容だが。冒険者ギルドの仕事は依頼者から依頼されて決まっている金額を支払われたら依頼書を発行して掲示板に張り出される。冒険者は、その掲示板から依頼を選んで向かうわけだ。もちろん、依頼の中には依頼人の言葉とは状況が違っていて受けた冒険者が命を散らすなんてことは珍しくない。だが数年前からだったか。それを改善しようってことで、斥候職ってのが作られた。」
「そうなんだ。」
「斥候職になれる前提は闇属性を所有していることだ。だが悪用しようっていう奴らが一定数存在するから、冒険者ギルドは表立って公表は控えているんだが。」
「うん。」
 前提条件が合ったから、連れてこられたのだと理解する。
「そして斥候職ってのは具体的に言えば、依頼人から依頼されたら闇属性魔法を用いて現地を調査することだ。調査した結果、依頼人がいう通りだったら依頼は発行される。因みに収入は口止め料も含まれているから高給だぞ、普通の冒険者よりもな。」
「じゃあ調査で依頼人の話と違ったら?」
 良い面だけを伝えようとするウィンを訝しんで、疑問に思ったことを言ってみる。

「その時は偽の情報を与えて、冒険者に調査させに行かせるのさ。そうすれば、少なくとも冒険者の収入にはなるし、冒険者ギルドの損をしない。お互いウィンウィンというやつだ。実際、依頼されて冒険者に調査依頼を行わせてから依頼書を発行することなんて数えきれないほど多いから疑問に思われることはない筈だ。」
「分かった。」
「そっか。じゃあ職に就くまでは、闇属性の把握、体力作り、他訓練といこう。」
 そういったウィンの顔は生き生きとした表情をしていた。
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