上 下
5 / 9

5

しおりを挟む
 月日は流れ、冒険者ギルドに訪れてから三年が経ち、サラマドラは15歳を迎えた。

「ただいま戻りました。」
「ご苦労、報告を聞こう。」
「西の村の依頼ですが、魔熊は確かにいました。ただ魔熊が本来いた森に飛竜が住み着いているようです。」
「ふむ。」
 西の村からやってきた農民が魔熊の討伐の依頼を求めてやってきたことが始まりだった。
 直ぐに出発できるのがサラマドラだったため、急行することになった。
 西の村には場所で2日の距離であるが、闇属性を鍛えた今では半日で着くことができる距離だった。
 魔熊は畑や森林を荒らし回っていたが、魔熊は本来なら森の奥地か山の麓で暮らすことが多い。
 原因究明のため、1人森の深部へ赴くと遠目から飛竜が飛び回っているのが窺えた。
 飛竜とは、竜種の下位であると言われることもあるため、討伐には複数パーティーが必要となる。
「討伐をしなければ、次の襲撃を受ける可能性もあります。偵察したところ、飛竜は2匹いることを確認しました。」
「良かろう。魔熊の討伐隊と、飛竜の討伐隊の依頼を発行しよう。もう休んで良い。」
「では失礼します。最後にノルドさん、偶には休暇も取ると良いですよ?」
「まあ。そうなのだろうが、仕事が増える一方でね。」
 当時、受付窓口で働いていたノルドだったが、この3年のうちに出世してギルドマスターになっていた。
「では。」
 普段の愚痴聞きに回されないように、颯爽と執務室を出た。


 その日、サラマドラは買い出しを終えて帰宅するところだった。
辺りは既に暗くなり始め、屋台や建物からの灯りで照らされ始めている中で、を見つけてしまった。
 3人パーティーと思われる冒険者の内の男1人が、懐に狼型の従魔を抱えて路地手前へ歩いていた。
 男は路地近くまで寄ると、従魔を地面に下ろした。
 よく見れば男の顔は切なげに涙ぐんでおり、従魔は前足に包帯を巻かれている。
 事の成り行きを見守っていたが、従魔からスカーフを抜き取ると、従魔を置いて離れていった。

 従魔は怪我を負った場合、治療することがとても困難である。
 それは従魔になる前の生態が魔物であることが要因と言われている。
 光魔法が魔物を退けることに特化している面もあり、人に対して回復魔法が作用する働きも、従魔には毒となって作用してしまう。
 そのため、従魔を癒す手段として回復アイテムとして親しまれているポーションを用いる実験が行われたが、回復魔法と同様に阻害されてしまった。
 その結果、従魔が怪我を負い、現役に復帰できない場合は野生に還すか、介抱する選択が一般的だと推奨されるようになった。

 冒険者が従魔から外したスカーフは冒険者ギルドが認めた従魔であることを示しており、街中で行動する際には付けていることが義務付けられている。
 スカーフ以外にも認められる付属品は存在するが、それが街中で外されていた場合、住民や他の冒険者によって駆除されても文句は言えない。
 サラマドラは元従魔を着ていた上着で包むと、抱き抱えて家路についた。
しおりを挟む

処理中です...