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「まずは噂がどれほど正確なのか試してみましょうか。ルアー、一般的なポーションからやってみましょう?」
サラマドラは優しく撫でながら、ルアーに声をかける。
ポーションにも種類が多くあり、製造者の力量によって効能が左右するためランクが設けられている。
一時期はこのランク制度がないために同じポーションでも、一滴で治療させてしまう物から切り傷しか治せない物まで存在して混乱を招いた。
多くの治験によって大まかなランクが設けられ、どんなポーションも区分けされることが決められている。
サラマドラが用意したポーションは通常のポーションを始め、ギルドで売られている品だった。
傷薬、痛み止め、解熱、と他にも多くあるポーションだがランクはCランクにしている。
Cの一つ上であるBランクから上は全て用途を申告しなければ罰金が課せられるほどに厳重なため、仕方のない話だった。
製造者に直接相談し、確実かつ直に購入する手もあるが誰も居所を知らないので、知人でもない限りできない手である。
サラマドラも依頼で知り合った製造者はいるのだが、値段を吹っかける婆のため会いたくなかったという事情もあった。
ルアーの怪我した足にかけるが、水のように流れていくだけだった。
使い捨て羊皮紙に結果を記入してポーションを施すが、結局のところ効果は期待できなかった。
一部のポーションは効果を得られたが、すぐに切れてしまった。
次に用意したものは薬草だった。
ポーションは薬草に自身の魔力を混ぜ合わせることで製造されるが、これは薬草本体である。
薬草自体を食すなり、煎じれば効果はポーションと同じか、それ以上をもたらす。
ただし味が激不味で、効果が得られるまで数日摂取しなければならない。
サラマドラが今回施すのは、薬草にある数少ない根をすり潰した物を包帯に染み込ませて足に巻くという手法だった。
だが動物の本能というべきか、不自由な足を器用に使って、サラマドラから距離を常に取りながら部屋中を逃げ出したことで、中止せざるを得なくなった。
全ての片付けをやり終えたサラマドラは優しく手招きして、落ち着かせるように撫で続けた。
先程までゲッソリしていたルアーだが、サラマドラの魔法で包帯そのものを消したことで逆立っていた毛が元に戻り、大人しく従った。
ルアーが仕切りにサラマドラの手に鼻を擦り付けるが、サラマドラは撫でながらもう片方の手に闇魔法を纏わせた。
ルアーは闇魔法を纏った手に、怪我した前足を載せた。
「どうしたの?」
驚くサラマドラの目の前で、その奇跡は起こったのだった。
それまでポーションも受け付けなかった怪我が、サラマドラの手からモヤのようにルアーの足に纏わりつくと、銀製腕輪を付けた足と同じ足がそこに存在していた。
ルアーも突然のことに呆然としていたが、当の本人であるサラマドラは引き攣った口角をしながら頭の中では混乱の渦に巻き込まれていた。
サラマドラは優しく撫でながら、ルアーに声をかける。
ポーションにも種類が多くあり、製造者の力量によって効能が左右するためランクが設けられている。
一時期はこのランク制度がないために同じポーションでも、一滴で治療させてしまう物から切り傷しか治せない物まで存在して混乱を招いた。
多くの治験によって大まかなランクが設けられ、どんなポーションも区分けされることが決められている。
サラマドラが用意したポーションは通常のポーションを始め、ギルドで売られている品だった。
傷薬、痛み止め、解熱、と他にも多くあるポーションだがランクはCランクにしている。
Cの一つ上であるBランクから上は全て用途を申告しなければ罰金が課せられるほどに厳重なため、仕方のない話だった。
製造者に直接相談し、確実かつ直に購入する手もあるが誰も居所を知らないので、知人でもない限りできない手である。
サラマドラも依頼で知り合った製造者はいるのだが、値段を吹っかける婆のため会いたくなかったという事情もあった。
ルアーの怪我した足にかけるが、水のように流れていくだけだった。
使い捨て羊皮紙に結果を記入してポーションを施すが、結局のところ効果は期待できなかった。
一部のポーションは効果を得られたが、すぐに切れてしまった。
次に用意したものは薬草だった。
ポーションは薬草に自身の魔力を混ぜ合わせることで製造されるが、これは薬草本体である。
薬草自体を食すなり、煎じれば効果はポーションと同じか、それ以上をもたらす。
ただし味が激不味で、効果が得られるまで数日摂取しなければならない。
サラマドラが今回施すのは、薬草にある数少ない根をすり潰した物を包帯に染み込ませて足に巻くという手法だった。
だが動物の本能というべきか、不自由な足を器用に使って、サラマドラから距離を常に取りながら部屋中を逃げ出したことで、中止せざるを得なくなった。
全ての片付けをやり終えたサラマドラは優しく手招きして、落ち着かせるように撫で続けた。
先程までゲッソリしていたルアーだが、サラマドラの魔法で包帯そのものを消したことで逆立っていた毛が元に戻り、大人しく従った。
ルアーが仕切りにサラマドラの手に鼻を擦り付けるが、サラマドラは撫でながらもう片方の手に闇魔法を纏わせた。
ルアーは闇魔法を纏った手に、怪我した前足を載せた。
「どうしたの?」
驚くサラマドラの目の前で、その奇跡は起こったのだった。
それまでポーションも受け付けなかった怪我が、サラマドラの手からモヤのようにルアーの足に纏わりつくと、銀製腕輪を付けた足と同じ足がそこに存在していた。
ルアーも突然のことに呆然としていたが、当の本人であるサラマドラは引き攣った口角をしながら頭の中では混乱の渦に巻き込まれていた。
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