満智子の嗜み

菅野鵜野

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3. 再構築

2.蜜月


 翌朝、私たちはまず平内町のせり出したコブ状の突端、椿山海岸を目指した。

 海を挟んだ向こうには、下北半島の北部分、恐山の影と、むつ市から伸びる海岸線を見ることができる。

 あの恐山の山の反対側には、マグロで有名な大間町がある。明日は、大間まで足を伸ばし、そこを拠点に下北半島を観光する予定。

 流石に下着が丸出しのワンピースとはいかないから、ジーパンにVネックのカットソーと、絵に描いたような観光スタイルで、私はレンタカーのハンドルを握った。

 運転は好き。正直、夫よりも長距離には慣れているわ。

 何せ元は編集社勤め。取材で遠方に出かけることなどザラだったのだ。

「こっちの方はまだ外国人でごった返していなくて、静かでいいね」

 夫はそう呟くなり微睡んでしまった。

 まぁ無理もないわね。有給の存在すら忘れるほどに働き詰めで、旅行に出てからは私を抱きづくめ。

 昨日だけで彼、何度お逝きなすったかしら。


 夏泊ホタテラインで海岸線を気持ちよく走らせてから、その更に突端に立つ、夏泊半島の陸奥大島灯台を目指すべく、その遊歩道の入口に立つ土産物屋の前を折れるとすぐ、大きな鳥居が見え、小さな海岸になっている。

 夫を寝かせたまま、波打ち際に停めた車から降りた。

 潮風が心地よい。きっと今だけね。冬なんて、厳しく荒々しい寒風に変わるのよね。

 鳥居の向こうには、灯台が立つ小さな島があって、そこまでは遊歩道が伸びている。

 一人でその遊歩道を歩き、島に降り立つと、灯台のある山が目の前に迫る。

 その先はきっと神様の領域ね。獣道らしきものは通じているけど、ちょっと登るには勇気が要りそう。

「人は通れますよ。灯台ですから。良かったらご案内しましょうか」

 作業着の下にネクタイとYシャツを着た同世代らしき男性が、遊歩道の向こうから私に声をかけてきた。

「ああ、僕、平内町役場の人間です。怪しい奴じゃないです」

 両手を振って必死に手を振る姿が何だか幼く見えて、私は同行を願った。


 30分は歩いたかしら。思いの外この大島岬は長細くて、アップダウンもきつかった。

 汗ばむ胸元を指で広げながら、私は灯台の奥に立つ弁天宮の前に立ち、広大な海の景色に目を奪われた。

「素晴らしいわ……」

「ええ。僕の大好きな場所です。奥さんも……その、素晴らしいです」

「あら、こんなオバさんにお上手仰らないで」

「いえ……前を歩いてもらった時、フリフリと揺れる大きなお尻も、その、見せびらかしているノーブラ のオッパイも……都会の人って、そんな感じですか、皆んな」

「どうかしら……」

 あら、心なしか、彼の股間が膨らんでいるような……。

「可愛い恋人がいらっしゃるんでしょ」

「いえ、この辺りは田舎すぎて、出会いもないし……あなたのような洗練された女性は……」

 青年はおそるおそる、私の首筋に溢れる髪に手を伸ばした。

 その手を取って、私は自分から胸元に差し入れた。

 汗ばんでいる。しっとりとした、大きくてゴツい手。夫とは違う、雄々しい手をしている。

「ああ、奥さん」

 彼は私の手を取って、灯台の壁面に背中を押し付けると、カットソーを無理やり押し広げるようにして、私の谷間に顔を埋めた。

「ダメよ、ああ、いけないわ……」

「こんなに雌の匂いを振りまいておいて、罪な人だ、ほら、乳首をこんなに尖らせてて……」

 彼は躊躇なく、私のレーズンを口に含んで舌で転がした。器用ではないけど、この直情さが堪らない。

「んん、ああ……ん」

「感じてるんでしょ、雌の匂いが強くなった……」

 そう言うなり、彼は私のジーンズのファスナーを下ろし、私の紐状のタンガをもどかしくズラして、2本の指で忙しく私のお豆を探った。

「あ、あの……ああ、いや……」

「でも……びしょ濡れ、ほら」

 彼の手はもう、私のドイツの森をかき分けて、泉の中に収まってきた。

 まるで野生動物のような性急で荒々しい指先。

 大自然の、人を寄せ付けぬこんな岬の突端で火を点けられて、私も、雌になった。

 彼に背中を向け、私はもう堪らずに自らジーンズを下ろした。

「やっぱり……いやらしいヒップだ。ふるふると揺れて、ハリがあって、突いたらどんなにいやらしく波打つだろうって……ああ、もう、すみませんっ」

 ズブリ……なんて細長いお魔羅様。

 あっという間に奥まで突かれて、私は堪らずに腰を振りたててしまった。

「もっと、擦って、中で、そうよ、そう……ああっ、それよ、それっ、いいっ、いいわっ」

「奥さん、奥さん……なんて熱くて、ネチネチして絡み尽くして、こんなの、こんなのって……」

 ズブッズブッ……波の音の合間に響く、野生の交歓の音。

「ああん、あん、ああん、して、してよ、おっぱいも、強く、強くよ、ああっ、いいわぁっ」

「こんなデッカいおっぱい見せびらかして、今までどんだけ悪さしてきたんですか」

「悪さ、なんてぇぇ、ああ、たし、嗜みよ、嗜みなのよ……んんっ、もっとよ」

 スパーン、スパーンっ、と彼は私の尻を叩きながら猛烈なピストンを続けた。

 こんな高速、は、初めて……

「あああああああっ、いいいいっぐぅぅぅ」

「お、俺もぉぉ、で、出るぅ」

「外に、外にお出し遊ばせ……ああ、よろしくてよぉぉ!  」

「ううぉぉっ、くっそぉぉぉ」

 もう二人とも、半分下半身を痙攣させた状態で、ただただ獣のようにぶつかり合っていた。

「いく、いく、いいの、いいのぉぉ、いっぐぅぅぅ!!  」

「どぉぉぉぉぉぉっ!!  」

 彼は咆哮を上げて私から抜き去ると、草むらに向かって派手に精を放った。

 私はブルブルと腰を震わせたまま、その場に座り込んでしまった。


 遊歩道の手すりに私を座らせて、向き合いでも私たちは激しく交わった。

 誰もこない小さな岬の山の中。獣のような悦声をお構い無しに吠え合って、私達は何度も達した。

 人間を獣に戻す、不思議な力を持つ岬。

 誰にも邪魔されない大自然の中での嗜みは、都会のそれの比ではなく、私の心も開放してくれた。



 名前を聞かれたけど、私は曖昧に笑って誤魔化し、遊歩道の入口で別れた。

 一期一会。いえ、一期一合、ね。あらやだ、五合くらいしちゃったかしら。


 車に戻ると、夫はまだ寝ていた。

「あなた、そろそろお昼にしましょうよ。ウニ丼が有名なんですって」

 彼が帰り際に勧めてくれた、この岬の入り口にある食堂に、私は夫を誘った。

「ウニか、いいなぁ」

「アワビも、熟れ頃だけど、ね」

 起き抜けでぼんやりしている夫には、この謎かけは分からないでしょうね。

 
 何事もなく、あの彼が乗ってきた役所の軽自動車は岬から走り去り、私たちは食堂に入ったのだった。 

 

 
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