続・満智子の愉しみ

菅野鵜野

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 新幹線に乗り込む時に来ていた服に着替え、私は約束の時間にホテル最上階のバーに赴いた。
 
 広いフロアの窓側が、バースペースになっていて、ネオンの向こうに墨絵のように広がる山影を見ながら美味しいカクテルを楽しんだりできる。
 旅行客が多そうね。

 約束の時間通りに、次長は現れた。
 注文通りにスーツ姿で。
「やぁ……君だったのか」
 やっと、新幹線の女、アーケードの女、そして設楽満智子、この3人が次長の中で重なったわね。
「初めて見た時、痺れたよ。こんな艶めいた美女がビジネスとは、って」
「お上手。さぁ、何を召し上がます? 」
「地ビールがいいな」
 私はそれを二つ、バーテンの男の子に注文した。

「どういうことか、説明してくれるか。大人の夜を愉しむために私を呼び出したわけではあるまい」
 地ビールはコクがあって美味しくて、私はチョコレートと一緒にもう一杯ずつ注文した。
「単刀直入に参りますわ。熊切玲子……」
「え」
「お困りですわよね」
「いや、その……」
 この狼狽ぶり。そりゃ会社にバレたら大変よね。
 私はまず、玲子が撮ってネットに流したであろう私たち夫婦の隠し撮り画像を見せた。顔は全然見えていないから、誰なのかは分からない筈。
 次に、私が新幹線で隠し撮りした画像を見せた。
「君……脅迫か」
「落ち着いて。最初に見せたのは、玲子がネットに流出させた私たちのSEX画像です。顔こそ分からないけど、出張の度に夫を食い荒らして、嫌気が差して別れを告げたら、こんな反撃をされてしまいました。次長も、本当はそろそろ見切りをつけたい所なのでは? 」
 次長は大きく溜息をついて、髪をかき上げた。ゲッソリ、そんな言葉がぴったりね。
「初めのうちは、ちょっと出張先で羽を広げる程度の愉しみで済んでいたのだが……彼女、情が濃い、というか」
「好き者」
「ああ」
「痴れ者」
「え、まぁ……」
「色狂い」
「そうとも言えるが……」
「野獣」
「君、いくら何でも……」
 バカな男。そんな風に情を挟んでいるから足元見られるのよ。
「他にも、玲子の毒牙にかかった社員がいらっしゃいますね。彼女のこと、聞かせてくださいな」

 次長の話ではこうだった。
 熊切玲子は女子大を出てこの会社に入ってきたものの、初めのうちは数少ない女子社員の一人ということで大事にされたが、30を過ぎた頃から合コンにも声がかからなくなり、だんだん出張を志願するようになった。彼女と組んで出張に行くと、どんな男子社員もミイラのように干からびて帰ってくるようになったとか。
 今回も、本当は他の若手が抜擢されていたが、彼女を怖がって辞退してしまったのだという。
「結婚を焦っているのもあってか、だんだん男を奪って虜にすることに全精力を傾けるようになってきて……情事も化け物じみてくるようになった」
「だからと言ってまともに別れを切り出したら、これ、流出されますよ。それが意趣返しであり、交渉の切り札」
「……設楽は良い奴だ。女郎蜘蛛の巣に絡め取られたとでも思ってやって欲しい」
「そう思って……」
 新幹線の二人の情事の画像と、その画像に私が加工を施した新しいものを見せた。
 次長の姿が消え、背景は公園の公衆トイレに変わり、玲子の手はあろうことか、片足を振り上げたまま自分の女陰を掻き回している。白目を剥いているだけに、色っぽいを超えて凄く滑稽で、お粗末。
 その画像を見せた途端、次長が吹き出した。
「えげつないねぇ」
 勤め先の若い男の子に教わった画像加工の技術。私、覚えるの早いみたい。
 もちろん、お礼にうんとお尻を触らせてあげたけど。
「音声も当て嵌めてありますから、これを流されて大変な思いをするのは玲子一人だけ」
「凄いな、君」
「子供騙しです。でも、交渉カードにはできますわ。実際、彼女の顔ははっきり写っていますし」
「私に何をさせたい」
 私は足を組み替えた。ガーターストッキングのレースを、次長が指でなぞった。
「夫を守ってください。黙っていれば火遊びで済んだものを、玲子はやり過ぎましたわ。出張でのセクハラで訓告くらい出せませんか? 」
 次長の指は私の太ももを滑り、やがてチュプッと、私の茂みの中に入ってきた。
「君の夫はどうなるんだい」
「何とも。だって私も外でたしなんでおりますもの。ほら」
 次長の手を取って、私は茂みをゆっくりと掻き回した。
「気にはしていませんの。ただ、夫がひどく玲子を怖がっているものですから」
 私はICレコーダーをカウンターに置いた。
「実は、他にも玲子の毒牙にかかった若手の男子社員の証言も集めてあります。これはコピーですけれど、宜しければデータを送ります」
 しばし私のあそこを掻き回しながら考えていた次長は、やがて深く頷いた。
「いいだろう……そのかわり、後で私の部屋に来ないか」
「隣は玲子の部屋でしょう、むざむざ罠に嵌ることはないわ。それに、ベッドの上だと不倫、お外でならおイタですの。不倫は真っ平御免、私のルールではないわ」
「違いは余り分からないが……」
「よろしいの。私のルールですから」
「君の……君の柔らかくて美味しいあの泉が忘れられないんだ……」
 次長は慌ててカードを切って会計を済ませると、私の手を引いた。

 誰も来ない非常階段の暗闇の中で、私はお乳もお尻も丸出しにして後ろから突かれた。
「あ、あん……深い……よろしくてよ、よろしくてよ」
 声はあくまで控えめに……でも次長さんのお魔羅は美味し過ぎて、私はふるふるとお尻を振りながら、高みに登り始めていた。
「いいわっ、いくっ、いっ……お乳、お乳を揉んで」
 いけないっ、漏れちゃう……気持ちよ過ぎて、栓が開きそう……ダメ、ぶるぶるしちゃう……!
「もう、ダメ……いいの、いいのっ、あっあっ、出ちゃうわぁ」
「エロいなぁ……こんな、えろくて美しい妻がいるのに、設楽はあんなケダモノに……うっ」
「いや、いや……あああっ」
 いけない、また潮を吹いてしまった……この方、ツボを突くのが本当に上手なのよ。もう、翻弄され過ぎちゃって、スカートが濡れてしまったわ。
「……設楽が羨ましい……」
「そう思ったら……お、夫の出張、少し、へ、へ、減らして……つまらなくてつい……おイタしちゃうの」
「奥様の、イケナイ愉しみだね」

 私たちは壁に体重を預けるようにしてズルズルと床に崩れ落ちた。
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