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ワタシはなんなのだろう
私の……×××《ケルビムさんside 》
しおりを挟むアタシが歳をとらなくなって、150年が過ぎた。
何歳だとか数えないから もう何歳かも分からないしねぇ。
そんな時だった。
森であの子を拾ったのは。
「……。」
「子供!?なんでこんなとこにいるんだい?母親は?」
「……。」
何を聞いても静かに真っ直ぐアタシの顔を見て。泣きも怒りもしなかった1ヶ月程の小さい黒猫。金色の瞳なのに、妙に静けさを感じたもんで不思議に思ったものだ。
そうだったね……。ほんとに静かで、瞳は何故か遠い昔に見た海を連想させて。
(だから凪……だったんだよねぇ)
成長するにつれて凪は表情が増えて言った。いや、あれはなんと言ったらいいのか。
凪は笑うようになった。
無理やり。理由はアタシにも分からない。もう1人、凪を拾った時に#じいさん____#も居合わせたんだけどね、そっちからしても、心当たりがゼロ。
色んな人に好かれ囲まれて居ても、空っぽに笑う事だけ真似をする凪を見てアタシ等はよく心を痛めたもんだ。
そんな中、凪が大人になって、105年の時が経った。
凪は突然姿を消した。
これには族長覗いてこの大陸中が探し回ったのだけど、見つからず。
数ヶ月後、凪は帰ってきたんだ。もう1匹のよそ者を連れて。
そいつは変わった形をしていてね。
早い話で言えば忘れもしない人間だった。
頭にしか毛はないし、鋭い爪もない。ひょろっこくて何となく、いけ好かない オス としか認識していなかったんだ。
それはそうだろう。アタシ等では笑わせられなかったあの子の笑顔はそいつだけに向けられてたんだから。
思えば嫉妬みたいなもんだね。
……。
…。
「凪……、なんて言った……?」
アタシは震える手で俯く凪の肩を持った。
「あの人と向こう側で一緒になりたいの。」
「ナギ……!考え直しな!それがどういう事だか、わかって言ってるのかい……!?」
向こう側。つまり禁じられた空間の向こう側。こちら側と完全に敵対いや、この大陸からの永久抹消にもなり得る。
それに加えて、ただでさえ人間をこちら側に招いてしまった余罪さえあるのに……!!
そのものの親族の血は永遠に拒まれる。
踏み入れたが最後、意味すら悟ることすら許されず殺されてしまうかもしれない。そんな血の掟。
「族長には……??」
「まだ話してないわ。」
それなら良かった。血の掟は、契約が随行された瞬間から有効とされるのだから。
己と葛藤してもう一度凪へ向き直る。
揺るがないのなら。これだけは。
「…………、凪」
「止めても無駄よ、ママ。」
「アンタは、今幸せかい?」
てっきり止められると思ってたんだろうね。凪はキョトンと瞼を瞬かせてから、意図を理解したのか、
「えぇ!とっても幸せよ!!」
満面の笑みでこっちが分からされちまうくらい眩しい顔をアタシに向けたんだ。
(嗚呼、じじぃにも、見せたかったねぇ……)
「なるほど、あの人間が惚れる訳だねぇ。全く。」
その種族を超えてすら虜にするこの子の本当の姿を見て、きっと魅入られたのだあのオスは。
親離れをされる母の気持ちはこの様なものなのか。
(寂しいけど、いいねぇ。)
空気は完全に見送る母の心境になっていた。
……のだけど。
「そうだ!ママ、今ね!あの人との子供も居るの!」
………………なんて?
「子供の名前はね、2人で色々考えたのだけど、女の子ならエバにしようって!」
えー…っと……?
「……んっ?ちょっとお待ち?あれは確か人間だった様な気もするんだけれども?」
「えぇ。人間って言ってたわ。」
純粋に瞳を ぱちぱちさせる、その子に頭の痛さを覚えた。先程の感動は何処へやら。
「種族が違うと子供が出来ないというのは知ってるかい……??」
「でも出来ちゃったのだもの。仕方ないわ?」
ないわ、じゃないよこの子は……。なんで出来ちゃったのか謎は謎で終わりそうなのは またどうしてか…。
「想像ということは……「ないらしいわ。お医者様で見てもらったの。」……そう……。」
それでね、と続けて私の愛娘は言い放った。
「もしも、この子に会うことがあれば、ママにお願いしたいの。」
私せっかく命をさずかったのだから産みたい。と娘に懇願されては無下にも出来ない。
(全く…困った娘だよ……。)
苦笑いではしゃぐ娘を見ていた私だった。
……。
…。
(なんだ、夢かい。懐かしい夢を見たもんだね。)
また新しい風を運んできた孫を眺めた 自分は朝の支度に取り掛かった。
(まさか、本当にあの腹の中にいたエバがアタシに会いに来てくれるなんてね。)
父親の毛並みを持ち、母親譲りの瞳を持つ不思議な孫。
願わくば、この子の行く末に幸せが待っていますように……。
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