黒猫奇譚<キミと歩む壊れたセカイ>

すてら

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ワタシはなんなのだろう

そうなんですか?

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……___。


「で、本当にアンタの名前はであってるんだね?」

ケルビムというきつねのお姉さんに連れられてわたしは日の目立たない所へ来た。

「はい…、えっと、夢…?の中でおかあさんが呼んでたので…。」




状況は分からない。何もわからないけれど、目の前のケルビムさんは瞳を潤ませてを抱きしめた。手を握るよりも強く。

「無事でよかった……!!良くあの騒動を生き抜いたね…!凪は?アンタの母さんはどうした?」




ナギ……?




やっぱり変だ。なにか忘れてる。

その名前を聞くと大事な何かを思い出しそうなのだ。


「分かんないんです…何も…。名前はさっき思い出したんですけど…。」




「…そうかい…。そうだね…アンタ、記憶無くしてるらしいし、あの時はアンタまだ腹の中だったらしいからね、戸惑っても当然か……。」

そう言ってケルビムさんは私の頭を撫でた。

サラサラのケルビムさんの毛並みが私の頭上にある耳に当たって少しくすぐったい。

「ケルビムさん…、あの、ありがとうございます。」




「何言ってんだい!若者が遠慮しないの!……まぁ、またアンタに会える日が来るとはね……。」



私を知っているケルビムさん。わたしは覚えていないけど何故こんなに良くしてくれるのか。



「……なんでわたしにこんなに良くしてくれるんですか?」

その言葉はそのまま気付いたら口から飛び出ていた。




ケルビムさんは目を細めて、懐かしそうな顔で告げた。




「それはね、あの子に頼まれたからかなぁ。」





あの子?

「ん?あぁ、ごめんね。アンタのお母さんだよ。」



そう言ったっきり教えてくれず、彼女は

「さぁ!寝た寝た!若いのが起きてる時間でもないよ!ここじゃ歳も取らないけどね!」 なんてさっさと私を寝かしつけてしまったけれど。






眠りの闇に落ちるその時までわたしが思ったことは。

(ケルビムさん……いいひと、だな……)





優しい気持ちだった。





……___。



…__。







「エバ、ごめんね。お母さん悪い人だね。」

「凪!キミは悪くないよ!悪いのは、勝手に踏み込んだ僕だ!」




誰かが泣いてる。

あの黒猫と、隣は、誰?



黒猫が私を愛おしそうに、悲しそうに見ていた。その肩にそのは手を乗せて一緒になって私を覗き込んでいた。





(おかあさん?)


声はあの人だ。
という事はこの人が凪さん?
私のお母さん?そしたら、その隣はお父さん?





「エバ、私のエバ。これから大変だと思う。だけどね。おかあさんとおとうさんはエバを愛してる。」





「エバには辛い重荷を背負わせてしまうな……。すまない……、でも覚えていて。どんなきみでも、大事な娘だって事には変わりはない。愛しているよ。」




(どうしたの?おかあさん。おとうさん)

手を伸ばすと、おかあさんは黒い毛皮に一筋の雫をこぼした。

「おかあさんと、おとうさんと、一緒に行こうね。」

「これは賭けだよ。凪、本当に渡れるかも分からない。本当にいいのかい……?僕とエバは大丈夫だと思う。けどキミは……!!」

「もう決めたの。一緒に行くわ。例え、この歪みにこの身体を奪われたとしても」

一人と黒猫は、両方、私をしっかり抱いて、光のある方へ歩き出した。




わたしは、その光の中輝く黒猫の金色の瞳と、茶色の髪をただ眺めていた。





✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚


今回短くてすみません!

エバちゃん結構思い出してきました。
なにがトリガーだったんでしょうね?



次のお話はケルビムさんの視点になります!過去話から初の、正式な誰か視点になります!お楽しみに!
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