12 / 21
ワタシはなんなのだろう
そうなんですか?
しおりを挟む……___。
「で、本当にアンタの名前はエバであってるんだね?」
ケルビムというきつねのお姉さんに連れられてわたしは日の目立たない所へ来た。
「はい…、えっと、夢…?の中でおかあさんが呼んでたので…。」
状況は分からない。何もわからないけれど、目の前のケルビムさんは瞳を潤ませてわたしを抱きしめた。手を握るよりも強く。
「無事でよかった……!!良くあの騒動を生き抜いたね…!凪は?アンタの母さんはどうした?」
凪……?
やっぱり変だ。なにか忘れてる。
その名前を聞くと大事な何かを思い出しそうなのだ。
「分かんないんです…何も…。名前はさっき思い出したんですけど…。」
「…そうかい…。そうだね…アンタ、記憶無くしてるらしいし、あの時はアンタまだ腹の中だったらしいからね、戸惑っても当然か……。」
そう言ってケルビムさんは私の頭を撫でた。
サラサラのケルビムさんの毛並みが私の頭上にある耳に当たって少しくすぐったい。
「ケルビムさん…、あの、ありがとうございます。」
「何言ってんだい!若者が遠慮しないの!……まぁ、またアンタに会える日が来るとはね……。」
私を知っているらしいケルビムさん。わたしは覚えていないけど何故こんなに良くしてくれるのか。
「……なんでわたしにこんなに良くしてくれるんですか?」
その言葉はそのまま気付いたら口から飛び出ていた。
ケルビムさんは目を細めて、懐かしそうな顔で告げた。
「それはね、あの子に頼まれたからかなぁ。」
あの子?
「ん?あぁ、ごめんね。アンタのお母さんだよ。」
そう言ったっきり教えてくれず、彼女は
「さぁ!寝た寝た!若いのが起きてる時間でもないよ!ここじゃ歳も取らないけどね!」 なんてさっさと私を寝かしつけてしまったけれど。
眠りの闇に落ちるその時までわたしが思ったことは。
(ケルビムさん……いいひと、だな……)
優しい気持ちだった。
……___。
…__。
「エバ、ごめんね。お母さん悪い人だね。」
「凪!キミは悪くないよ!悪いのは、勝手に踏み込んだ僕だ!」
誰かが泣いてる。
あの黒猫と、隣は、誰?
黒猫が私を愛おしそうに、悲しそうに見ていた。その肩にその人は手を乗せて一緒になって私を覗き込んでいた。
(おかあさん?)
声はあの人だ。
という事はこの人が凪さん?
私のお母さん?そしたら、その隣はお父さん?
「エバ、私のエバ。これから大変だと思う。だけどね。おかあさんとおとうさんはエバを愛してる。」
「エバには辛い重荷を背負わせてしまうな……。すまない……、でも覚えていて。どんなきみでも、大事な娘だって事には変わりはない。愛しているよ。」
(どうしたの?おかあさん。おとうさん)
手を伸ばすと、おかあさんは黒い毛皮に一筋の雫をこぼした。
「おかあさんと、おとうさんと、一緒に行こうね。」
「これは賭けだよ。凪、本当に渡れるかも分からない。本当にいいのかい……?僕とエバは大丈夫だと思う。けどキミは……!!」
「もう決めたの。一緒に行くわ。例え、この歪みにこの身体を奪われたとしても」
一人と黒猫は、両方、私をしっかり抱いて、光のある方へ歩き出した。
わたしは、その光の中輝く黒猫の金色の瞳と、茶色の髪をただ眺めていた。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚✩.*˚
今回短くてすみません!
エバちゃん結構思い出してきました。
なにがトリガーだったんでしょうね?
次のお話はケルビムさんの視点になります!過去話から初の、正式な誰か視点になります!お楽しみに!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる