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誕生編
第2話「ツン全開!!!マジパティ・ソルベ登場!」①
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「次のニュースです。昨日午後4時ごろ、埼玉県瀬戌市木苺ヶ丘に、ケーキのような謎の巨大怪物が出現したとの住民の通報が…」
「ピッ…」
トルテは、面白くなさそうにリビングにあるテレビの電源を切った。千葉一悟がマジパティ・ミルフィーユに変身して一夜が明け、木苺ヶ丘は大騒ぎだ。カオスイーツを見て驚いたどこかの住民が瀬戌警察署に通報したらしく、警察、マスコミがわらわらと木苺ヶ丘に押し寄せてきたからだ。お陰様で、開店2日目のカフェ「ルーヴル」は臨時休業せざるを得ない状況になってしまったのだった。
「俺っち、生活かかってるんですけどねー!!!人間どもは事あるごとに大騒ぎしだして…」
テレビのリモコンを放り投げ、トルテはソファーにもたれかかる。
「姉御…どこに居るんですかねぇ…」
今でも脳裏に浮かぶ、1日たりとも忘れたことのない勇者シュトーレンの存在と思い出…
トルテは幼い頃に両親に捨てられ、シュガトピア王国にある田舎町を彷徨っていた。人間とライオンの両方の血を引く獣人…閉鎖的な町では、混血の子は忌み嫌われる存在だった。そんな彼の心を救ったのが、少女・シュトーレン…最初はシュトーレンに牙をむくトルテではあったが、自分を忌み嫌わず、受け入れてくれたシュトーレンに段々と心を開くようになり、トルテが気づいた頃には、既に「ずっとシュトーレンの傍にいたい」と思うようになっていた。あの日までは…
カフェ「ルーヴル」は3階建てで、1階は店舗、2階はリビング、キッチン、トイレ、そして3階は寝室、バスルームとなっている。その3階では一人の人物が目を覚ました。男物のTシャツを身にまとい、炎のような真紅のストレートロングヘア…瀬戌市木苺ヶ丘にあるカフェ「ルーヴル」のオーナー…いや、今の姿はトルテが捜している人物本人と言った方が正しいだろう。
「あぁ…もうそんな時間か…」
眠っている間に変身魔法が解けてしまったようだ。
変身魔法は長くはもたない。とはいえ、突然人間界に飛ばされ、勇者としての力も失い、スイーツ界の住人としての力を生かすべく、フランス・パリでパティシエ修業を決意。その際に言動に問題のある輩達がしゃしゃり出て、持ち前の腕っぷしの強さを見せつけたところ、運悪く料理学校の校長に一部始終を見られ、門前払いを食らってしまい、仕方ないので男の姿に変身してパリでのパティシエ修業にありついた…というのが、人間界でのシュトーレンのその後なのである。パティシエの資格も男の姿で取得し、尚且つ木苺ヶ丘で出店するための名義も「首藤聖一郎」と、男としての名前であり、このことは住み込みで働いているトルテですら知らないことだった。
「今日は臨時休業せざるを得なくなったし、ゆっくりと湯船に浸かるかぁ…」
シュトーレンはぐんと背伸びをすると、そのまま寝室を出てバスルームへと向かっていった。
ほぼ同時刻、千葉一悟は朝食を食べていた。白ご飯に焼き鮭、豆腐の味噌汁…典型的な和食である。今日は中等部と高等部の入学式であるため、生徒会以外の在校生は基本的に休みとなっている。朝のニュース番組は木苺ヶ丘に現れたカオスイーツの話題で持ち切りだ。そんなニュースを、一悟は味噌汁をすすりながら後ろめたく感じた。
「一悟、悪いけどこの荷物を父さんの所へ持って行ってくれないかい?」
食事中の息子に向かって、一悟の母・千葉江利花が声をかけた。持っているのは黒い紙袋だ。
「なんでだよ…」
一悟は嫌そうに答えるが、母は無言でテレビを指さす。一悟の父親は埼玉県警捜査一課の刑事で、昨日からカオスイーツの件に関する調査のため、瀬戌警察署から自宅に戻ってきていない。テレビの内容でがっくりとうなだれた一悟は、しぶしぶ母親からのおつかいを頼まれることになった。
一悟は食事と身支度を済ませると、リュックにラテとココアを入れ、外にある赤い自転車の籠に母親から受け取った紙袋を入れ、自転車にまたがった。
「うひょーっ!快適ぃ~♪」
「ちょっと…ココア…苦しいでしょ!!!」
ココアもいる分、ラテにとっては一悟のリュックの中は窮屈なようだ。
「ピッ…」
トルテは、面白くなさそうにリビングにあるテレビの電源を切った。千葉一悟がマジパティ・ミルフィーユに変身して一夜が明け、木苺ヶ丘は大騒ぎだ。カオスイーツを見て驚いたどこかの住民が瀬戌警察署に通報したらしく、警察、マスコミがわらわらと木苺ヶ丘に押し寄せてきたからだ。お陰様で、開店2日目のカフェ「ルーヴル」は臨時休業せざるを得ない状況になってしまったのだった。
「俺っち、生活かかってるんですけどねー!!!人間どもは事あるごとに大騒ぎしだして…」
テレビのリモコンを放り投げ、トルテはソファーにもたれかかる。
「姉御…どこに居るんですかねぇ…」
今でも脳裏に浮かぶ、1日たりとも忘れたことのない勇者シュトーレンの存在と思い出…
トルテは幼い頃に両親に捨てられ、シュガトピア王国にある田舎町を彷徨っていた。人間とライオンの両方の血を引く獣人…閉鎖的な町では、混血の子は忌み嫌われる存在だった。そんな彼の心を救ったのが、少女・シュトーレン…最初はシュトーレンに牙をむくトルテではあったが、自分を忌み嫌わず、受け入れてくれたシュトーレンに段々と心を開くようになり、トルテが気づいた頃には、既に「ずっとシュトーレンの傍にいたい」と思うようになっていた。あの日までは…
カフェ「ルーヴル」は3階建てで、1階は店舗、2階はリビング、キッチン、トイレ、そして3階は寝室、バスルームとなっている。その3階では一人の人物が目を覚ました。男物のTシャツを身にまとい、炎のような真紅のストレートロングヘア…瀬戌市木苺ヶ丘にあるカフェ「ルーヴル」のオーナー…いや、今の姿はトルテが捜している人物本人と言った方が正しいだろう。
「あぁ…もうそんな時間か…」
眠っている間に変身魔法が解けてしまったようだ。
変身魔法は長くはもたない。とはいえ、突然人間界に飛ばされ、勇者としての力も失い、スイーツ界の住人としての力を生かすべく、フランス・パリでパティシエ修業を決意。その際に言動に問題のある輩達がしゃしゃり出て、持ち前の腕っぷしの強さを見せつけたところ、運悪く料理学校の校長に一部始終を見られ、門前払いを食らってしまい、仕方ないので男の姿に変身してパリでのパティシエ修業にありついた…というのが、人間界でのシュトーレンのその後なのである。パティシエの資格も男の姿で取得し、尚且つ木苺ヶ丘で出店するための名義も「首藤聖一郎」と、男としての名前であり、このことは住み込みで働いているトルテですら知らないことだった。
「今日は臨時休業せざるを得なくなったし、ゆっくりと湯船に浸かるかぁ…」
シュトーレンはぐんと背伸びをすると、そのまま寝室を出てバスルームへと向かっていった。
ほぼ同時刻、千葉一悟は朝食を食べていた。白ご飯に焼き鮭、豆腐の味噌汁…典型的な和食である。今日は中等部と高等部の入学式であるため、生徒会以外の在校生は基本的に休みとなっている。朝のニュース番組は木苺ヶ丘に現れたカオスイーツの話題で持ち切りだ。そんなニュースを、一悟は味噌汁をすすりながら後ろめたく感じた。
「一悟、悪いけどこの荷物を父さんの所へ持って行ってくれないかい?」
食事中の息子に向かって、一悟の母・千葉江利花が声をかけた。持っているのは黒い紙袋だ。
「なんでだよ…」
一悟は嫌そうに答えるが、母は無言でテレビを指さす。一悟の父親は埼玉県警捜査一課の刑事で、昨日からカオスイーツの件に関する調査のため、瀬戌警察署から自宅に戻ってきていない。テレビの内容でがっくりとうなだれた一悟は、しぶしぶ母親からのおつかいを頼まれることになった。
一悟は食事と身支度を済ませると、リュックにラテとココアを入れ、外にある赤い自転車の籠に母親から受け取った紙袋を入れ、自転車にまたがった。
「うひょーっ!快適ぃ~♪」
「ちょっと…ココア…苦しいでしょ!!!」
ココアもいる分、ラテにとっては一悟のリュックの中は窮屈なようだ。
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