激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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カオスソルベ編

第7話「奇跡を起こせ!新生マジパティ・ライス」②

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「さっき、ムッシュ・エクレールから桜餅のカオスイーツが現れたって連絡が入った。場所は瀬戌駅北口のコンコース…」





「ガラッ」



「うちの反対側じゃないか!!!!まったく、あの男は…」

 ムッシュ・エクレールに対して文句を言いつつ、アンニンはベランダに入ると、駅の方をオペラグラスで見つめる。アンニンとジュレの住むマンションは瀬戌駅の南口にある。その南口から自由連絡通路と駅ビルを設けた橋上駅の反対側には、ピンク色に緑色の葉っぱの怪物がうごめいているのが確認できた。

「カオスイーツが現れたなら…俺も…」

 そう言いながら、一悟はベッドから降りようとするが、上手く立ち上がれない。

「残念だが…一悟、今回のお前はミルフィーユとして戦える状況じゃない。」

「姉さん、そんな事言っても勇者様自身の勇者としての能力がない今、マジパティが居ないとカオスイーツは…」

「わかってる…でも、カオスソルベとの戦いから意識を取り戻したばかりのミルフィーユには、負担が大きすぎる。だから…頼めるな?プディング…」

「はいっ!!!」

 アンニンの言葉に、みるくはすっと立ち上がり、ラテと共にアンニン達の部屋を飛び出した。護衛として、ジュレも一緒である。





「マジパティ・スイート・トランスフォーム!!!」



 マンションのエレベーターの中、みるくはブレイブスプーンを構えた。そして1階でエレベーターの扉が開いた瞬間、エレベーターからみるくと顔立ちが似ている金髪の少々ふくよかな少女が飛び出した。変身後も運動神経が上がるので、マンションの出入り口から瀬戌駅の自由連絡通路に向かうのに、そんなに時間はかからない。ミルフィーユがカオスソルベとの戦いから完全復活できていない分、プディングのマジパティとしてのプレッシャーは大きい。







「くっ…私の電撃を吸収するとは…」

 瀬戌駅北口のコンコース…ここでは現在、桜餅のカオスイーツ・サクラカオスイーツとムッシュ・エクレールが対峙している。コンコースに居る人々は、飛来した桜餅に動きを封じられ、桜餅から難を逃れた人々は南口のコンコース、駅構内、瀬戌駅の駅ビルにそれぞれ避難しているようだ。そして、カオスイーツの隣には…

「その程度ですか?随分と落ちぶれたものですね!!!」

 ティラミスである。先日の件でカオスソルベは、ミルフィーユを倒してしまったショックで戦いに出る気力を無くしてしまい、マカロンも最近SNSでトラブルが発生したと言って、やる気がないため、今回はやむを得ずティラミスが単独で出ることになった。



「叔父様っ!!!」

 ライスがプディングを連れてコンコースにやってきた。

「ライス、それにプディング!!!!」



「黄色のマジパティ・プディング!!!禍々まがまがしい混沌こんとんのスイーツさん、勇者の愛でおねんねの時間ですよ?」



 久々のプディング単独の名乗りである。

「どうやら、ミルフィーユは来られないようですね。さぁ、カオスイーツ!!!接近技でプディングを追い詰めるのです!!!!」

「うぅ…あの形状はちょっと苦手な道明寺どうみょうじ…」

 プディングもとい、みるくは小学生時代、学校行事で桜餅を作った事があるのだが、その時に1人の男子がみるくの髪に道明寺粉で作った桜餅を付けてからかうという事件が起こり、それ以来みるくは道明寺粉製の桜餅がトラウマとなってしまったのである。

「でも、私だってやるときはやりますっ!!!」

 そう言いながら、プディングはプディングワンドを繰り出し、それを構える。しかし…



「きゃあっ!!!!!」



 餅状カオスイーツの身体が細長く伸び、プディングの髪を掴んだ。その瞬間、プディングは思わずプディングワンドを落としてしまう。

「プディング!!!!」

「どうやら、プディングは桜餅にトラウマがあるようですね?丁度いいです。この際ですから、説明いたしましょう。今回のカオスイーツにした人間は、過去に女の子の髪に桜餅をつけるなどの嫌がらせを行っていた中学生です!!!コンビニで万引きしたり、通行人の財布を盗んだり、学校をサボるなど、元々素行の悪い学生だったようなので、今回のカオスイーツにはうってつけでした。」

「そ、そんな…」

 カオスイーツにした相手の素性に対してやけに詳しいティラミスの説明に、プディングは愕然とした。カオスイーツの正体が過去に自身に対して悪さを行っていた相手…カオスイーツにされた人間は救うのがマジパティとの使命…だが、今のプディングにとって、今のカオスイーツを浄化するという事は…もう2度と顔も見たくない相手と顔を合わせるという事に繋がってしまう。

「私は事前にカオスイーツにする相手の素性を調べないと気が済まない主義でしてね…まさかプディングの苦手なものだとは嬉しい誤算でした。」

 ティラミスの説明中もなんのその、カオスイーツはプディングを己の身体に引きずり込んでいく…



「お腹すいただろ?ちょうど桜餅があったから、食え。」

 一悟の空腹の音が鳴り響き、アンニンは冷蔵庫に入っていた桜餅を差し出す。

「あ…ありがと…これ、長明寺ちょうみょうじって奴…だよな?」

 円筒状の餡を焼いた皮で包み、その皮の上に少し大きめの桜の葉を巻いた桜餅…一悟はそれを見て、何かに気づいた。

「よく知ってるな?」

「小学校の行事で作った事あるんだ。班ごとに道明寺にするか、長明寺にするか決めて…でも、その時…」

 桜餅を見ながら、一悟はアンニンに小学校の行事で発生した、桜餅にまつわる事件を説明した。当時、みるくと一悟は同じ班で長明寺の方の桜餅を作っていた。そこへ、道明寺の方の桜餅を作っていた班の少年が、みるくの髪にできたての桜餅をくっつけてしまったのである。泣き叫ぶみるくの声に呼応するかのように、一悟はその少年に掴みかかる。だが、少年共々先生に止められてしまい、何をすることもできなかった。



「こんなにみるくの事…守りてぇのに…守れねぇの…悔しい…」



 桜餅を食べながら、一悟は大粒の涙を流す。あの時と似たような、みるくを助けられないもどかしさを、もう一度味わうなんて思ってもみなかったから。







「みゃあああああっ!!!!」

「焦点が定まりませんわ!!!」

 プディングはカオスイーツに羽交い絞めにされ、粘り気のある餅状のカオスイーツの食指がプディングのコスチュームの中まで侵入、そのまま身体をまさぐり、彼女を更に追い詰めようとする。ムッシュ・エクレールとラテは、飛んできた桜餅に捕まり、ジュレに至っては、カオスイーツが駅の連絡通路に侵入しないように結界を貼っているため、身動きが取れない。唯一動けるのは、カオスイーツに小型の爆弾を投げ続けるライスだけだ。

「何度爆弾を投げようとしても、無駄なあがきです。このままカオスイーツの体内に吸収してしまいます。カオスイーツ、そこの爆弾娘も桜餅で動けなくするのです!!!」



「バシュッバッシュッ!!!!!」



 ライスの足元に桜餅が2発直撃し、まるでトリモチのように彼女の足の動きを封じ込めた。

「くっ…」

 ふと、ライスは考える…「こんな時、ミルフィーユもとい千葉一悟はどうするのか」…と。その答えはすぐに出た。それは、ミルフィーユ達の戦いを支えていくうちに気づいた事…





「俺は絶対に諦めねぇっ!!!!!」



 普段のライスらしからぬ言葉…たとえ、手足の動きを封じられようとも、絶対にミルフィーユは諦めたりしない。

「…と、ミルフィールなら仰るでしょうね。それなら、今のワタクシもミルフィーユと同じく、例え手足の動きを封じられようとも、絶対に諦めはいたしませんっ!!!!」

「それなら、お望みどおりに…行きなさい、カオスイーツ!!!」

 ティラミスの言葉に呼応するかのように、カオスイーツは桜餅を発射し、今度は彼女の振袖に着弾させた。

「たとえマジパティになれなくとも、ワタクシは絶対にプディングを…」





「お助け致します!!!」





 ライスは再び手りゅう弾サイズの爆弾をカオスイーツにぶつける。今度はプディングの胸を覆う白い聖域をずらそうと目論む食指を爆破した。



「だから…今のワタクシに力をお借しください!!!勇者の知性よ!!!!!」



 既に石化した雪斗のブレイブスプーンを、できる限り空高く掲げる。スイーツ界の住人はマジパティになれないという掟があるのは、ライスも覚悟している。だが、その力を借りることは十分に可能だ。

「うぐっ…」

 カオスイーツが発射する桜餅が、更にライスの身体にまとわりつく…それでも石化したブレイブスプーンを持つ腕は絶対におろさない。たとえ、この身が動けなくなったとしても…
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