激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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勇者クラフティ編

第28話「勇者もびっくり!?ダークミルフィーユはロリータがお好き」②

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 それから3時間後、一悟と同じこげ茶色の髪を頭頂部でツインテールにまとめたロリータファッションの少女が、黒地に白いフリルがついた日傘をさしながらカフェ「ルーヴル」の前にやってきた。



「カランカラン…」



 少女が扉を開けると、メイド服姿のシュトーレンが先客に料理を運んでいる。

「いらっしゃいませー!!!空いてるお席へどうぞー。」

 平日なのか、開店して1時間も満たない今はまばらの状態。少女はカウンター席に座り、シュトーレンの事をじっと見つめる。

「ご注文お決まりになりましたら、お知らせくださいね。」



 結婚式の準備の事もあり、シュトーレンはここ一か月、早朝の仕込み以外で聖一郎せいいちろうの姿をトルテやガレット以外に見せていない。結婚式のあとも、聖一郎の姿を見せる時は限られるだろう…シュトーレンはうすうすそう感じている。



「綺麗…まるで真紅のバラのような髪…」



「えっ…」

 注文を聞いた直後、去り際のシュトーレンに向かって、ロリータ少女はそう呟いた。

「ごめん…なさい…素敵な髪色だったので…」

「ありがとう…アタシにそう言ってくれた人、これで4人目よ?」

 そう照れ臭そうにはにかみながら、シュトーレンは真紅のロングヘアーを少量かき上げる。



 元々容姿について自身があったわけじゃない。幼い頃から父親が勇者である事と髪の色、そして伝説の女勇者と容姿が似ている事で、周囲からさげすまされる事が多く、それをいつもガレットと僧侶となる前のアンニン、勇者となる前のクラフティの3人が助けていた。



「よしよし…痛かったよな、セーラ…よし、2人とも!!!情け無用でやってやれ!」

「バカもんども、今日という今日はいしゃりょーいちおくシュクル払ってもらうぞ!!!」

「逃がすか、ガキどもっ!ぶった斬る!!!!」

 その直後にブランシュ卿とセレーネからお小言が入ったのは言うまでもなく…だが、そんな少女セーラに家族と幼馴染以外の人物が受け入れてくれる出来事があった。



「あかい…かみ…きれい…」



 その言葉をきっかけに、少女セーラは自分の容姿に前向きに向き合えるようになれたのである。それは勇者として目覚めても、その言葉が常に彼女を突き動かしてきたのである。



 初めて人間界に来たときは、シュトーレンの普段の姿を見るや否や、髪色や体格を見て陰口を叩く人達が多く、それはフランスへ行っても続いていた。その言動に嫌気がさしたシュトーレンは思わず、陰口を叩く集団が囲んでいるテーブルをグーパンチで破壊してしまったのだ。

「集団で影からぴーちくぱーちくうるさいのよ!!!あんたらにアタシの何が判るっていうのよ!!!!(男声)」

 テーブルを真っ二つにへし折る上に、見た目とのギャップの激しい男声(ついでに流暢な日本語)で怒鳴り散らすものだから、周囲は騒然…それ以来、誰もシュトーレンの容姿について陰口を叩く人は激減したのだった。だが…



「貴様も、この血の色をした髪はなんだ!!!こんな汚らしい髪色…親の顔が見てみたいものだな…」



 最近になって、言われたくなかった暴言と暴力がシュトーレンに降りかかったのである。あの壮絶な威圧感は、今でも頭から離れようとはしない。

「アタシが育った町では、赤い髪は「呪いの色」だとか言われてた。でも、アタシの髪を「綺麗」だって最初に言ってくれた人は違った。アタシを受け入れてくれたの…その人がそう言ってくれなかったら、今頃アタシはずっとふさぎ込んでいたままだと思う…」

 その言葉に、少女は驚いたような顔をする。

「親父はいつも言ってた。「自分を受け入れてくれる相手を大切にしろ」…って。だから、昔は嫌いだったこの髪色も…今では、その人のおかげで大好きよ。」

「あなたのお父さん…あの男と違うのね。だって、そんなフリルやリボンの付いた服…自由に着ていられるんだもの。」

 シュトーレンが父親の話をした途端、少女はシュトーレンが着ているメイド服を見ながらそう言った。

「これは、アタシが着たいから着てるだけ。親父はアタシが幸せでいれば、それでいいって思ってるのよ。」

 その言葉に、少女は少し納得したような表情をする。

「そう…あなたのお父さん、いいお父さんね。私の方もそんなお父さんの所で育ちたかった…」

 少女の言葉に、シュトーレンは少々迷いを示すが…



「実際、破天荒な親父を持つと苦労が多いわよ?でも…娘の選択肢や悩みに耳を傾けてくれたからこそ、アタシは幸せになろうとしているのかもしれない…」



 そう言いながら、シュトーレンは少女にドリンクを差し出す。

「はい…アイスカフェオレ、お待たせいたしました。」

 少女はアイスカフェオレを受け取ると、それをストローで飲み始める。シュトーレンは料理を受け取りに厨房に入るなり、今にでも泣きそうな顔をしながら料理を盛り付けるトルテに出くわす。

「やだ…何で泣いて…」

「セーラ…絶対に俺っちが幸せにしてやるっスから…」

「バカね…言われなくても、あんたの傍で幸せになるわよ。アタシの髪を…最初に綺麗って言ってくれた相手なんだもの…」

 はにかみながら話す新妻勇者に、トルテは思わず持っていたケチャップ(業務用)を落としそうになる。





 ロリータ少女は、注文したベリータルトを食べ終えると、会計を済ませ、カフェ「ルーヴル」を出る。そんな彼女が持っている黒いウサギのぬいぐるみのポシェットがもごもごと動く。

「デート、楽しかったわね?ニコル…」

 黒いウサギのぬいぐるみは、楽しそうに話す少女の言葉に頷く。

「それにしても、どうして今日は「あのカフェに行こう」って言ったの?いつものように、愛の巣にいた方が…」

 ロリータ少女のセリフを遮ってしまうかのように、ぬいぐるみは目を赤く光らせる。



「やはり…私は、彼女を妹としてしか扱えない…愛の次元が違いすぎる…」







 ………







 追試の結果が出て一段落した雪斗ゆきとは、ヘアサロンの手前の十字路で一悟とみるくと別れ、グラッセ達と一緒に氷見ひみ家の方へ向かっている。

「やっぱり、いちごんには話しづらいな…」

「ダークミルフィーユの事か?」

 ネロの言葉に、雪斗は頷く。



 やっと友達だと認め合えたのに、今…自分がダークミルフィーユの事を話してしまったら…雪斗の中には、一悟との最悪の状況が浮かぶ。もう二度と険悪な関係に戻りたくない…雪斗の想いはそれだけだ。



「今は、ガレちんの言葉に従うべ。言うべき時と、言わねーべき時を判断するのは雪斗自身かもしれねー。だげども今の一悟には、彼女の事は荷が重すぎっぺよ…(今は、ガレちんの言葉に従いましょ。言うべき時、言わないべき時を判断するのは雪斗自身かもしれない。だけども、今の一悟には彼女の事は荷が重すぎるわ。)」

「僕はもう…二度と…いちごんと争いたくない…」

 無知であったとはいえ、今となっては異常と思える過去の一悟に対しての態度…今の氷見雪斗にとっては、もう二度と犯したくない過ち…



 そんな雪斗達は、既に閉まっている郵便局の段差にしゃがみ込む少女と遭遇する。小麦色の肌で、雪斗と同じ藍色のセミロングは両サイドを水の泡のようなヘアピンで留め、濃紺の襟に白い身頃で長袖のセーラー服に濃紺のスカートに赤いスカーフ…足元は濃紺のハイソックスに水色のスニーカーの少女…顔立ちからして、雪斗と同じ年齢のように見える。

「ど…どうしたの?」

 グラッセは少女に声をかけようとするが、返事がない。あろうことか、少女の耳からはシャカシャカと音がする。恐らく、イヤホンで音楽を聴いているのだろう。

「貴様、話を…」

 ネロが少女に掴みかかろうとした刹那、少女は音楽プレイヤーを止めるや否や、イヤホンを外し…



「お腹すいたー…」



 その言葉に、雪斗達は思わずずっこけてしまう。時間帯の事も考慮し、ネロはグラッセとトロールをアパートへ帰るように伝え、雪斗と共に少女を連れ、氷見家へと向かう。氷見家へ入ると、雪斗は使用人に当主である祖父を呼ぶように伝え、少女の事を話す。雪斗には、この少女にただならぬ様子を感じ取ったからだ。



「そんじゃ、いっただっきまーす♪」

 祖父に事情を話した雪斗は、ネロ同伴であることと、部屋にいるときはユキと入れ替わるという条件付きで少女を預かることになった。

「そう言えば、名前を聞いていなかったな…僕は氷見雪斗。この家の人間だ。」

「私は根室たつきだ。一晩、雪斗と共に貴様を監視する事になる。」

「ひゃまへ?ひゃまへはぁ…」

「「食べながらしゃべるなっ!!!!!」」

 食事を頬張りながら喋る少女に向かって、雪斗とネロの声が見事にハモった。その様子に、少女は口の中に含んだ食事をぐいっと飲み込み…



「名前は友菓っ!氷川台友菓だよ。トモちんって呼んで♪」



 少女が自らを「氷川台友菓」と口走った刹那、ネロは雪斗に一言断りを入れ、ある人物に連絡を入れる。それから5分後、氷見家に噂の人物が上がり込む。



「ガラッ…」



 客間のふすまが開いた瞬間、氷見家の客間にガレットが入って来る。

「あ…食事中だった?ゴメン…」



「ピシャッ…」



「えっ…ちょっ…大勇者様っ!!!」

 突然のふすまを閉める音に、呼び出した張本人は慌てふためく。

「間違いなく迷い人のポスターの顔写真そっくりだし、あとは当主様と話を付けるから、今日は一晩だけネロとユキで様子見といてー。」

 そう言いながら、大勇者は去ってしまったのだった。
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