(R18G完結)吊り橋効果、上等

如月紫苑

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19 墓場まで持っていく共通の秘密

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    ◇
 暫く探して見付かったのは手押し車、布団、包丁、風呂の蓋、まな板。じっくりと明音と考慮して遺体はビニールで包むよりも布団で包む事にした。もし早めに見付かったと仮定した場合、ビニールの方が証拠は残りそうだからだ。布団だと雨水も浸水するし腐敗が早く進みそうだし、そうなった場合証拠は早く流れていきそうな先入観。匂いの問題はあるが、犬はビニールでも嗅ぎ出しそうだからあまり関係ない気がする。実際はどちらの方が向いているのかは知らないが。包丁、蓋、まな板はショベル代わりだ。手で掘るよりかはマシだろう。
 俺は明音の手のガラス片をゆっくりと抜いてチンピラのシャツで拭う。それを外に投げ捨てると、チャリっと地面に落ちる時に音がする。土が入らないようにと血が現場に落ちないようにする為、明音の怪我した手はビニール袋に入れて口を結ぶ。
 そのまま怪我した手で遺体に触れようとした明音を宥め、遺体を布団でぐるぐる巻く。明音が片手で端を引っ張って手伝う事は許してあげる。そしてそれをそのまま手押し車に突っ込む。
 今夜はやっぱり満月だ。とても明るく、作業がしやすい。周りにも廃墟が多く、過剰に人目を気にしないでいられる。暗い中、二人で先程見繕った場所まで行って掘り始める。
 最初に包丁で適当に辺り一面ザクザク地面を刺しまくる。少しでも地面が解れる方が助かる。彼はまな板を無事な手に、俺は蓋を地面に刺して、固い地面を引きずりながら穴を掘っていく。たまに明音が包丁で地面を刺しては解し、俺が力任せに穴を広げていく。二人共早く終わらせる必要性を感じてか、自然と無言でザクザクと進めていく。爪が割れ、血が指先に滲む。明音の方も苦戦しているみたいだ。でも深さだけは妥協できない。
 幸い数時間で出来た。あまり硬い土質ではなかったのが良かったらしい。
 俺は遺体が詰められた手押し車を押して来て、地面に異様に暗く空いた穴にその布団達磨を放り込む。身分証明になりそうな物を抜いた財布も拭いてから投げ入れる。
「……」
 二人共無言でそれを眺める。
「……埋めるか」
「あぁ……」
 今度は無言でザクザク土を掛けていく。掘るよりもずっと楽に、難なく作業が進んでいく。満月が頭上に昇る頃には最後の土を上に掛けていた。
「……これ、多分、絶対に踏んで土固めした方が……いいよな」
 流石にもう身体が悲鳴をあげ過ぎていて地面にしゃがみ込む。体に力が入らない。腹は絶えず鈍痛と鋭い痛みが交互に襲ってきていて限界だ。
 明音は俺の肩を軽くポンと叩き、盛り土に登って躊躇無く何度もジャンプしたり足でガンガン押し潰したりして硬めていく。
「……お前、本当に、色々と良いな」
 明音はビクッと動作の途中でこっちに振り向く。顔には困惑とちょっとの疲労と、歓喜が見て取れる。何を、踏んだり潰したりしているかはなるべく考えない。

――――こいつの顔好きだなぁ。身体も最高だけど

 盛り土から降りて、屈んで俺の頭に軽くキスをする。手に巻きついている袋が汚れて中がかなり蒸れている。傷に悪そうだと思う。明音が自分の手の袋を優しく持つ俺の手を目で追う。
「……俺の家に寄ろう」
 ちょっと苦笑しながら袋越しに手を握り返してくる。
「そのズボンじゃ逆に職質されそうだしな」
 小さ過ぎてジッパーが上がらず、ボタンが閉まらず、長さも足りない。しかも全身土と血塗れ。シャツには精液。「中々フルコースだな」と俺も笑う。
 室内の血液が染み込んだ畳は外に逆さまに出し、色々物を載せて存在を隠す。俺達の精液等はその他大勢の中の二人、という判断になるように願うしかない。最後に周りをチェックして廃屋の前の方に捨ててあった自転車に乗る。

ギーコ ギーコ

 ペダルが壊れていて俺を後ろに乗せ、明音が地面を蹴りながら進む。ビニール袋は取ってポケットに詰め込んである。もう血は出ていないみたいだが乾いた血でハンカチが固まっている。俺は高く上がった満月をずっと目で追いながら彼の背中に凭れる。
「月、綺麗だな」
「ああ。明るくって、とても綺麗だ」
 繰り返す力強い背中の動きに安心して少しずつ眠気が強くなってくる。
「……生き返ってからの初日は中々にハードだったな」
 彼の言葉につい笑ってしまった。そう、まだ、一日しか経っていない。
「凄い、濃厚で、疲れたよなぁ。……恨んでいるか? 助けた事」
 彼は足を止めて振り返る。俺は彼の表情が怖く、顔を背中に埋めて目を閉じる。
「俺と出会わなければ一緒に人を殺す事もなかったし、ケガもしてなかったかも知れねぇ。本当に、すまない」
 無言が続いて俺はそっと顔を上げる。とても綺麗で優しい目が視線を迎えてくれる。
「あんたと出会ってから、何一つ後悔してない。……本当に、あんたといると生きている感じがするんだ」
 こんなに自分の味方になってくれる人がいるっていうのは、なんて落ち着くんだろう。また彼の背中に顔を埋める。
「お前、マジでいい男」
 明音が笑う。
「それはあんただろ。……あんたみたいな人に出会った事は今までない」
 彼が唇を重ねてくる。激しいのではなく、二人共目を開けたままの、優しく唇を挟んで体温を感じるようなキス。
「……もうそろそろ歩こうか。近いから念の為これを置いていく」
「分かった」
 疲れて思考力が落ちる。チンピラの身分証明書を彼に渡す。
「これも……」
「ああ。どこかで拭いてから捨てるから」
「……眠ぃ」
「部屋に着くまで寝ていろ」
 広い背中に体重を預ける。

――――落ち着く……。マジでこの匂いが好き……

 急速に意識が深い場所へと落ちていく。
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