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第四章 蟲の番いはイキ溺れる
28 蟲は地獄耳
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◇◇
番いになる決心をしてから一番最初はロカの親への謝罪と挨拶だ。ロカは謝罪は必要ないと言うがやはり最初はちゃんとした礼儀を持って行動をしたい。特に俺の処刑の事が親に伝わっている時点で俺のイメージがどうなのか考えるのも恐ろしい。
「父母」
ロカが『今はいいタイミング』だと言う時に彼と共にラスボスの大広場へと出向く。
十数年前の事をはっきりと思い出し罪悪感から居心地が悪くなる。
――――なるほど。『親』や『父母』と呼ぶ訳だ
ロカによく似た美人が立っている。俺達を見るとロカと同じように微笑む。彼が『親』と呼んでいる理由がよく分かる。男でも女でもない精霊は少し異質だ。性別を超越した美貌がとても美しい。
「やっと、追い付けたのだな」
ロカはとても優しく、嬉しそうな笑顔で親に微笑む。
「うん、やっと、捕まえた」
「ロカの親。アセンと申します」
深々と頭を下げる。親は少し目を細めて俺の動きを目で追う。
「昔、一度殺してしまった。知らなかったとは言え、許される事ではない。その事を本気で悔いている。申し訳ない。心から謝罪がしたい」
「アセン。子の宝よ。謝罪は要らぬが、受け取ろう」
――――『子の宝』か。ロカは本当に全部話していたらしいな
「貴殿の事は昔からよく聞いておる。初めて妾の前に立った直前、ダンジョンが新たに取り込んだ人間の遺体に子と貴殿の血が付着していた。子を殺そうとしていた人間等を処分してくれたのであろう? 子は話してくれぬが何となく察した。ずっと礼を言いたかった。心から貴殿がいて良かったと思っておる。ありがとう」
頭を深々と下げられ慌てる。柔らかそうな長い銀紫の髪がするんと肩の上を流れていく。親の着ている白装束はロカが俺を助けた時の物と同じだ。彼等の衣装なのだろうか。
「いや、頼む、頭を上げてください。……人間としては俺も奴等と大差ない。だが、あれは……ロカにしていた事は、絶対に許せなかった。それにあなたはあの後俺を地上へと逃がしてくれた」
「子の香りで気持ちを読み取ったまで。礼はいらぬ」
頭が上がらない。横にいるロカに視線を送ると背中を押すように優しく微笑む。俺は彼の手を握る。
「ロカの親。今日は挨拶に来た。ロカと番いになる事を許可して欲しい」
精霊はとても嬉しそうに、美しく微笑む。
「ふふふ、ロカが幸せそうで妾も嬉しい。アセンと言う名の宝、子の番いとして妾の家に一員として迎え入れる。息子を末長くお願いする」
ロカも嬉しそうに俺と繋いだ手に力を込める。蟲の精霊は長い髪を翻して両手を広げる。
「宴の用意を」
壁が動いて隠れていたモンスターや蟲達が忙しなく動き始める。
「子の宝よ、ダンジョンに顔を覚えて貰うと良い。これから統率する者の番いなのだから」
そこからは怒涛のような忙しさとなった。
このダンジョンの住民、全員が一度は顔を出しに来た。確信はないが何度も顔を出している者もいる気がする。俺はロカと彼の親と共に少し競り上がった舞台に座らされる。ロカが真ん中、右に親、俺は左だ。全員からよく理解出来ない言語で名前とコメントを貰う。ゴブリンや蟲の一体一体まで来る。ロカが頭を蹴り落としたゴブリンだけはなんとなく分かった。恐怖に顔を引き攣らせて俺の方を見ないで物凄くヘコヘコしていたから。
「疲れてきた? ごめんね、世襲交代の儀も兼ねているから時間掛かっちゃって。お酒飲む? 俺と親は飲めないけどオークのお酒は美味しいって聞いたよ」
――――オークの酒……怖いもの見たさで飲んではみたいが
俺はここしばらく酒を絶っている。あの殺戮逃走から殆ど飲んでいない。見事に捕らえられていた期間酒が抜けたのもあるが、ロカと一緒に楽しめる物の方へと興味が移ったのだ。それをロカは自分のせいだと思っているが、以前ほど酒を飲みたいと思わなくなったのが真実だ。
俺は彼の方へと身を乗り出して彼の耳元で静かに呟く。
「酒よりも……今はもうお前の体液を舐めたい」
彼が一瞬固まり俺の耳元へと口を寄せる。
「身動き取れない時に煽らないでよ……。これが終わったら、親と交代する前に少しだけ時間を貰うから」
「ふふふ、いいぞ」
いきなり聞こえてきた澄んだ声に、二人でロカの右隣りを見る。親が口元を隠しながら物凄く楽しそうに目を細めている。
「交戦は一日休んで初夜を楽しむと良い。それ以外の業務は数日ロカの替わりに妾が努めよう。ロカ、番いをしっかりと満足させておくのが礼儀というもの」
――――なんで親にまで聞こえているの
真っ赤になった顔を両手で隠す。
「父母、いつも俺の我儘を聞いてくれてありがとう。勿論そうするつもりだよ」
「ふふふふ、番いが幸せだとロカも幸せであろう。妾も嬉しい。人間の体は敏感だからね、蟲の姿では奥に挿れ過ぎぬよう気を付けておかぬと簡単に意識が飛ぶ」
「やっぱりそうなんだ。触手でもそんな気がした」
「頼むから……俺の真横で俺達の初夜の話をしないでくれ……」
死にそうなぐらい恥ずかしい。俺は真っ赤になったまま天井を仰ぐ。
――――こういう時は泥酔したくなるんだよぉ
取り敢えず蟲はやたらと耳がいいっていう事を今後の為にも覚えておこう。
番いになる決心をしてから一番最初はロカの親への謝罪と挨拶だ。ロカは謝罪は必要ないと言うがやはり最初はちゃんとした礼儀を持って行動をしたい。特に俺の処刑の事が親に伝わっている時点で俺のイメージがどうなのか考えるのも恐ろしい。
「父母」
ロカが『今はいいタイミング』だと言う時に彼と共にラスボスの大広場へと出向く。
十数年前の事をはっきりと思い出し罪悪感から居心地が悪くなる。
――――なるほど。『親』や『父母』と呼ぶ訳だ
ロカによく似た美人が立っている。俺達を見るとロカと同じように微笑む。彼が『親』と呼んでいる理由がよく分かる。男でも女でもない精霊は少し異質だ。性別を超越した美貌がとても美しい。
「やっと、追い付けたのだな」
ロカはとても優しく、嬉しそうな笑顔で親に微笑む。
「うん、やっと、捕まえた」
「ロカの親。アセンと申します」
深々と頭を下げる。親は少し目を細めて俺の動きを目で追う。
「昔、一度殺してしまった。知らなかったとは言え、許される事ではない。その事を本気で悔いている。申し訳ない。心から謝罪がしたい」
「アセン。子の宝よ。謝罪は要らぬが、受け取ろう」
――――『子の宝』か。ロカは本当に全部話していたらしいな
「貴殿の事は昔からよく聞いておる。初めて妾の前に立った直前、ダンジョンが新たに取り込んだ人間の遺体に子と貴殿の血が付着していた。子を殺そうとしていた人間等を処分してくれたのであろう? 子は話してくれぬが何となく察した。ずっと礼を言いたかった。心から貴殿がいて良かったと思っておる。ありがとう」
頭を深々と下げられ慌てる。柔らかそうな長い銀紫の髪がするんと肩の上を流れていく。親の着ている白装束はロカが俺を助けた時の物と同じだ。彼等の衣装なのだろうか。
「いや、頼む、頭を上げてください。……人間としては俺も奴等と大差ない。だが、あれは……ロカにしていた事は、絶対に許せなかった。それにあなたはあの後俺を地上へと逃がしてくれた」
「子の香りで気持ちを読み取ったまで。礼はいらぬ」
頭が上がらない。横にいるロカに視線を送ると背中を押すように優しく微笑む。俺は彼の手を握る。
「ロカの親。今日は挨拶に来た。ロカと番いになる事を許可して欲しい」
精霊はとても嬉しそうに、美しく微笑む。
「ふふふ、ロカが幸せそうで妾も嬉しい。アセンと言う名の宝、子の番いとして妾の家に一員として迎え入れる。息子を末長くお願いする」
ロカも嬉しそうに俺と繋いだ手に力を込める。蟲の精霊は長い髪を翻して両手を広げる。
「宴の用意を」
壁が動いて隠れていたモンスターや蟲達が忙しなく動き始める。
「子の宝よ、ダンジョンに顔を覚えて貰うと良い。これから統率する者の番いなのだから」
そこからは怒涛のような忙しさとなった。
このダンジョンの住民、全員が一度は顔を出しに来た。確信はないが何度も顔を出している者もいる気がする。俺はロカと彼の親と共に少し競り上がった舞台に座らされる。ロカが真ん中、右に親、俺は左だ。全員からよく理解出来ない言語で名前とコメントを貰う。ゴブリンや蟲の一体一体まで来る。ロカが頭を蹴り落としたゴブリンだけはなんとなく分かった。恐怖に顔を引き攣らせて俺の方を見ないで物凄くヘコヘコしていたから。
「疲れてきた? ごめんね、世襲交代の儀も兼ねているから時間掛かっちゃって。お酒飲む? 俺と親は飲めないけどオークのお酒は美味しいって聞いたよ」
――――オークの酒……怖いもの見たさで飲んではみたいが
俺はここしばらく酒を絶っている。あの殺戮逃走から殆ど飲んでいない。見事に捕らえられていた期間酒が抜けたのもあるが、ロカと一緒に楽しめる物の方へと興味が移ったのだ。それをロカは自分のせいだと思っているが、以前ほど酒を飲みたいと思わなくなったのが真実だ。
俺は彼の方へと身を乗り出して彼の耳元で静かに呟く。
「酒よりも……今はもうお前の体液を舐めたい」
彼が一瞬固まり俺の耳元へと口を寄せる。
「身動き取れない時に煽らないでよ……。これが終わったら、親と交代する前に少しだけ時間を貰うから」
「ふふふ、いいぞ」
いきなり聞こえてきた澄んだ声に、二人でロカの右隣りを見る。親が口元を隠しながら物凄く楽しそうに目を細めている。
「交戦は一日休んで初夜を楽しむと良い。それ以外の業務は数日ロカの替わりに妾が努めよう。ロカ、番いをしっかりと満足させておくのが礼儀というもの」
――――なんで親にまで聞こえているの
真っ赤になった顔を両手で隠す。
「父母、いつも俺の我儘を聞いてくれてありがとう。勿論そうするつもりだよ」
「ふふふふ、番いが幸せだとロカも幸せであろう。妾も嬉しい。人間の体は敏感だからね、蟲の姿では奥に挿れ過ぎぬよう気を付けておかぬと簡単に意識が飛ぶ」
「やっぱりそうなんだ。触手でもそんな気がした」
「頼むから……俺の真横で俺達の初夜の話をしないでくれ……」
死にそうなぐらい恥ずかしい。俺は真っ赤になったまま天井を仰ぐ。
――――こういう時は泥酔したくなるんだよぉ
取り敢えず蟲はやたらと耳がいいっていう事を今後の為にも覚えておこう。
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