(R18G完結)美しい蟲の精霊は飲んだくれ冒険者と番いたい

如月紫苑

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第三章 蟲と鎖と自由

24 お前以外には突っ込まれたくねぇ

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「……お前以外は絶対に死んでもごめんだな。……おい。あの甘いの、最初から俺に出していなかったか?」
「うん。ごめんね。俺は、アセンを最初から絶対に諦めるつもりなかった。最初から、俺と淫階に慣らそうとしていたよ」
――――出た。あの夜這いしたのと同じような強引さ
 ロカは俺の首に両腕を回す。
「怒った?」
 俺は苦笑をしながら頭を振る。
「お前のその強引さは嫌いじゃねぇよ。ただ、絶対に、絶っ対に、俺が攫われないようにしろ」
 彼がとても妖艶に笑う。その瞬間ロカが物凄く強く感じられる。その反面、自分が酷くか弱い存在な気がしてぞくっとする。
「慣らしていなかったらどうなっていた?」
「多分俺の体液の影響が強過ぎて昏睡レベルで寝込んでしまっていたと思う。あと淫階の空気は昔より少しきつい筈だよ」
「もしかして昔、俺がやたらと眠くなって体調崩したのって……」
 ロカが頷く。
「すまなかった、あの時は自分の体液の影響をまだ知らなかった」
「最初の頃、夜這いの後やした後に俺が毎回寝こけていたのって酒のせいだけじゃなかったのか」
「うん、俺の体液の影響だったと思う。人間の姿の時は蟲の時ほど影響は強くない筈だけど、それでもやっぱり初めの方は体の負担が大きかったみたい。今はもうそこまで眠くならないでしょう?」
「確かにな。もう最近そんなに酒を飲んでいないのもあるが。ここの空気は昔よりもきついのか?」
「きついと思う。ここの空気は淫蟲から分泌される体液が空気に溶け込んだ物だからきつい。今の空気は親よりも俺の体液の割合が多くなっているから」
「ロカの体液の方が影響強いのか?」
「うん。俺自身が親よりも強いせいもあるけど、今は性的に満たされているから」
「恋人としては物凄く嬉しい台詞だが、なんでそれがダンジョンの空気に影響するんだ?」
「淫蟲だからね。俺達の体液は本当に影響力が強い。身体が満たされれば満たされるだけ体液を分泌する。それが少量ずつ空気へと溶け込む。ダンジョンの空気は滞っているから濃厚になっていく。淫蟲が幸せなダンジョンは催淫作用強いよ。アセンが隣にいてくれればここの空気の催淫作用は物凄くきつくなる筈」
――――めちゃくちゃ俺達の性生活を暴かれている気分なのだが
「一緒にいるに決まっているだろ。じゃあロカがイきまくって俺と朝から晩までイチャイチャしている方が淫階としては好都合なのか」
 ロカは軽く笑う。
「まぁ、そういう事かな。正直に言えばあまり考えた事ないけど。もしアセンと再会出来ていなかったり、俺と一緒にいてくれなかったら、淫階は退化していたかもね。初めて出会ってからはずっとアセン以外に抱かれたいとも抱きたいとも思わなかったから」
 無意識に彼の最後の一行に反応する。すぐにそれを想像したり考える前に会話を別の話題へと流そうとする。
「なぁ、それほど体液の影響が強いんだったら、もしかしてロカの親って昔……」
「貴方に付いていた俺の匂いに反応したらしい。あとで聞いたら恐怖じゃなくって好意で分泌された体液を感じて、手を抜いてアセンを地上に逃がしてくれたって」
「……あぁ、納得」
 昔、俺はロカと離れた後すぐにボス戦へと突入する羽目になった。これは無理だ、と覚悟を決めたのにふらつく体でも簡単に勝てた。力が入らずボスに倒れ込んだだけなのにそのまま綺麗に剣が刺さったのだ。そして俺は無事に外へと転移された。あの後、地上で体調不良と怪我の影響で一週間程寝込んでしまった。当時のあのパーティーメンバーはダンジョンモンスターに殺された事になっていた。
「もしこれから先、俺の匂いが付けばモンスター達にちょっかい出される事はなくなる筈だよ」
「今はまだロカの匂いは付いていないのか?」
「殆どしない。……一度でもアセンの中に種付けをすれば俺の匂いが着くけど」
 鼓動が速くなるのを感じる。
 はっきりと考えた事はなかった。今の会話でも具体的に考えるのを無意識に避けた。
――――ロカが俺の中に挿れる。ロカにしているように、俺がロカに抱かれるのか?
 ロカは無言で考え込み始めた俺に微笑みながら頭を引き寄せて舌を官能的に絡ませる。濡れた音にぞくんとする。なんだろ、この感覚。このダンジョンに潜ってから強くなってきている。
――――ロカからやたらと野性的で男っぽい魅力・・・・・・を感じ始めている。そして俺はそれに屈服したくなっている
 もし俺は細胞レベルで彼の体液に影響を受けているのならば。俺は彼の支配するダンジョンの一部になったのだろうか。もしそうならばボスである彼は俺の絶対君主で、俺はそれを受け入れたいのだろうか。それともただ単にロカへの愛情がどんどん深くなっているから、この体に彼を受け入れたくなってきているのだろうか。
 ロカは無言で俺の顔を見つめていたが目を細めて少し掠れた声で囁く。
「すぐに『それは無理』って拒絶はしないの?」
「……ちょっと……この話題……今は頼むから、変えてぇ」
 顔を再び両手で覆って呻くとロカは少し笑いながら俺の手に唇を押し付ける。重なるように抱き寄せられた陰部が硬い。触れ合っているのが物凄く気持ちいい。
「再会したばかりの頃だったら間違いなくすぐに拒絶していたのにね、アセン」
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