あまやどり

奈那美

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第一話

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(あの子…可愛い!)
それが彼女に対する第一印象だった。
 
 彼女を初めて見たのはオレが通ってる大学の学食だった。急な休講でヒマを持て余していたオレは高校からの親友…サトルとコーヒーを飲みながら喋っていた。そんな時に彼女が友人とおぼしき女子数名と食事を取るために入ってきたのだ。小柄で、肩のあたりで切りそろえたおかっぱヘアで。健康的な肌色に化粧っ気はなく…一緒にいた少女たちと比べると、むしろお世辞にも可愛いとは言えなかった。券売機で食券を買い求めカウンターに並ぶその姿を目で追っていたオレに気がついたサトルが言った。
「お前さ、なに見てんのよ?」
「え…?いや、べつに。」
「うーそーつくなって。あそこのコたち、見てたんだろ?どのコがタイプよ?」といいながら彼女たちのほうをあごでしゃくるようにしてみせた。
「あの髪の長いコ?それともパーマのコ?」
「…だからちがうって。」
「まさか、あのポニーテールのコ?たしかにあん中じゃ一番べっぴんさんだけど、お前には高望みだって。」
「だからさっきから違うって言ってるだろ?」
「そうか?俺の気のせいか。まあ、まちがっても残ったあのちんちくりんじゃないだろうしな。」
「!!ちんちくりんなんて失礼だな!!」
「え?」とサトル。
「え?!」とオレ。
「えええええええええ!!!!」
サトルが驚きの声を上げる。
「おまえうるせえ!しずかにしろって!」
オレは騒ぎをいぶかしんで彼女がこっちを見るんじゃないかとひやひやしながらサトルに静かにするよううながした。
 
カップのコーヒーをひと口すすり、やっと落ち着いたサトルがオレに言った。
「おまえ…本気か?」
こうなったらシラを切っても仕方がない。オレは小さな声でサトルに返した。
「悪いか?ひとめ見て『可愛い』って思ったんだから仕方ないだろ?」
「そりゃあそうなんだが…。あのコのこと知ってるのか?名前とか学年とか。」
「いや…今日初めて見かけた。」
「まあ俺たち4年はめったにこんなとここないからな。」
「ああ。」
こんなとこというのはオレたち4年にもなると授業数も減るし卒論で忙しくなるから、学食にいるよりも研究室にいたり喫茶店で過ごすことのほうが多くなるからだ。
「まあ…パッと見、まだ1年だな。」とサトル。
「なんで、そう言える?」とオレ。
「まだ初々しいし…なんといってもポニーテールのべっぴんさんの名前を俺が知らない。」
「…なるほど。」
サトルは女好きというわけではないが、女性の、特に美人の情報を集めることにかけては天才的と言っていいほどの能力の持ち主だ。そんなサトルが『知らない』と言っているのだからまだ入学したての1年生というのは本当だろう。サトルは見た目は特にハンサムというわけでもなく、足が長かったり実家が金持ちだったりというわけでもない。それでも結構モテてたし、ガールフレンドも知ってるだけで指折り数えるぐらいはいたはずだ。けれどガールフレンドどうしでサトルをめぐって喧嘩してたという話も聞かない。いったいどういう手品を使っているのかいつも不思議に思う。いちど実際に聞いてみたことがあったが、『そこはそれ、人徳というやつよ』というわけがわからない説明で終わられてしまったが。
 
「じゃあさ、ちょいと調べてやろうか?」とサトルがいう。
「なにを?」
「あのコのことよ。気になるんだろ?」
「いや、そりゃ可愛いと思ったけど。どうやって?」
言い忘れていたがオレが通ってる大学は結構なマンモス大学で、学生数だけで数千人在学している。有名大学の数万人には及ばないが運動場の砂の中から雲母を探し出すようなレベルで手間がかかるんじゃないか?そう思ってサトルに返した…知りたいのはやまやまだったが。
「俺の情報網を忘れてもらっちゃあいけないよ。」
ちっちっちっという感じでサトルが、たてた右手の人差し指を左右に振る。
「あのコら、まだ一般教養がメインだろうが、俺の見立てでは理工学部ではないな。だからこっちの敷地内だけで探ったらいい。おまけに生徒数がいかに多いといっても、女子で四年生大学に通う子はまだ少ないしな。」
「…なるほど。」
  
 
続く
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