あまやどり

奈那美

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第三話

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「おまえ…ばかじゃん。せっかくのチャンスを。」サトルがあきれ顔で言う。
「…ばかなのはオレがいちばんわかってる。これでも落ち込んでるんだ…。」
「おまえらしいといえばらしいが。…いちおう言っておくが、キャンパス内で探してハンカチ返そうとか考えるなよ。」
「なんで?!」
「町かどで偶然同じ場所で雨宿りしただけの『見知らぬ人』から急にキャンパス内でハンカチ返されたら、それこそ薄気味悪いだろうが。」
「うう。」オレは頭をかかえた。
「ま、頑張れや。それより卒論と就活はどうなってるんだ?」
「…現実に戻さないでくれよ。卒論は資料は読み終えて今から下書きといったところか。就職は年明けてからだな。サトルは?」
「俺は下書き終わって教授に第一チェックしてもらってるとこ。仕事は、俺も年明けだがほぼ決まりに近いかな。」
「さすがだな。」
それからしばらくは、卒論とバイトに忙しく彼女の居住地区を通り過ぎる時間もほとんど作れなくなっていた。ただ彼女への想いは相変わらず持ち続けていた。
 
年末が迫ってきたある日。サトルがオレの下宿にやってきた。
「おい。いい話を聞いたぞ。」
「なんの?」
「あのコだよ。この正月に友達と一緒に○×神社に初もうでに行くらしい。」
「ほんとか?というより、そんな情報どこから?」
「俺のコレよ。」サトルは右手の小指を立ててみせた。
「コレ…って、どの?」
「どのとは人聞きが悪い。最初におまえがあのコを見かけたときに一緒にいた子たちがいただろう?あの中の子よ。…ポニーテールの子。」
「サトルが一番べっぴんって言ってた子か?」
「そう。言っておくが向こうから言い寄ってきたんだからな。」
「おまえにゃ勝てないな。で、初詣だって?」
「ああ。あのとき一緒にいた4人な同じ学部で仲良くなって遊びに行くのもいつも一緒らしい。で、そのいつものメンバーで晴れ着を着て初詣に行こうという計画らしいぞ。」
「初詣…夜中だろう?そんな時間に晴れ着を着せてくれるところとかあるのか?それよりも親が許すのか?」
「若い女の子たちが夜中に行くわきゃないだろう。みんな朝、家族とお雑煮食べて、それから着替えて待ち合わせるらしい。着付けはそれぞれの母親がやってくれると言っていた。」
「そうか…くわしい時間は決まってないんだな。」
「決まっているとは思うが、一緒に行かない俺が聞くのは変だろう。」
「ああ、それもそうだな。…それこそまちぶせするしかないというわけか。」
「今度こそチャンスをフイにするなよ。健闘を祈る。」
サトルは俺の肩をポンと一つたたくと帰っていった。
 
 
続く
 
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