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第一章
天才探偵 夏井正太郎
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夏休みが終わった。
いよいよ進路などを真剣に考えなければならない時期だ。
夏井正太郎は、現在高校二年生である。
学校に向かう足どりは重い。
それでも、久しぶりに友人達に会うことはやはり嬉しい。
正太郎は青い空を見上げ、大きく伸びをした。
「まだまだ暑いな」
歩きながら正太郎はふと、今朝のニュースを思い出す。
『昨日S県O市の路上において、夜11時ごろひき逃げ事件がありました。被害者は近所に住んでいる44歳の女性。自動車にはねられたあと、頭を強く打ち病院に運ばれましたが間も無く死亡。警察は防犯カメラなどの映像から、I区に住む会社員、田村美希男28歳を容疑者として逮捕いたしました、、』
ニュースには田村なる人物の顔が写されていた。
(アイツじゃないよ。あの人物は犯人ではない。同情するよ)正太郎には分かっていた。しかし助けることはできない。自分にはその力はない。
夏井正太郎には昔から不思議な能力があった。事件があると、簡単な詳細を聞くだけで犯人がわかる。不思議なことに脳にその人物の顔が鮮明に浮かび上がるのだ。しかもそれが知らない人物だとしても。
(本当に。なんの役にも立たない能力だよな)正太郎は軽く舌を打つ。
確かに。ただの高校生である彼がなんの根拠もないのにコイツが犯人だ、コイツは犯人ではない、とのたまわって見たところで誰も相手にしないだろう。それどころか、ヘタをすると犯人に恨まれて危険な目に遭うかもしれない。
正太郎は小学生の頃、何度か交番に出向き、ニュースやワイドショーや3面記事などで騒がれている事件の犯人像を、お巡りさんに話したことがある。その時のお巡りさんの、調書を取りながら浮かべていた薄ら笑いは、今でも忘れることができない。
以来、この能力は秘密にすることにした。
「夏井、おはよう!」正太郎はお尻のあたりに強い衝撃をうける。友人の猫田圭介が鞄で叩いたのだ。
「痛って!お、おう猫田か。おはよう」
「まだまだ夏だねぇ。」猫田はニヤつきながら正太郎の驚いた顔に満足している。
猫田圭介。正太郎の小学生時代からの友人である。そして、正太郎の秘密を唯一知っている存在でもあった。
「正太郎、今朝のニュース見た?あのひき逃げの容疑者は真犯人?」唐突に猫田が聞いてくる。
「朝から何だよ。珍しいなそんなこと聞いてくるの。ニュースは見た。それとアイツは違う」
「そうか・・・。お前がそう言うんだから間違いないな。実はさ、あの亡くなったおばさんが、母ちゃんの友達らしいんだ」猫田は声のトーンを落として言った。
「えっ!?」正太郎は少し驚く。
「なんか朝から母ちゃん元気なくてさー。朝メシも適当だったし」
「おばさん、ショックだったんだな・・・。真犯人は女性だよ。20代だと思う。化粧は濃いけど割と美人だ」正太郎ははっきりとその顔を思い起こせる。
「マジか!やっぱりすげーな、お前のその能力は」
「でも、なんの役にも立たん」正太郎は少し口を尖らす。
「そんなことねーだろ。警察官になればいいんじゃね?犯人わかってんだからあとは証拠探しを頑張るだけじゃん。お前の天職なんじゃね?」
「考えたことはあるよ。でも、なんかノレない。一生人の不幸のそばにいるのはしんどそうだ。」
「そんなもんかね。俺はただただうらやましいけどな」猫田はそう言って両手を頭の後ろに組んだ。
校門が見えてきた。前を歩く猫田が、つまらない話をペラペラと正太郎に振り向きもせず続ける。
正太郎は微笑みながら相槌を打つ。当たり前の毎日がまたはじまる。そんなことを考えた時だった。
「!」
何で?何でここに。
正太郎の目に映ったのは20代の化粧の濃い女。
そう。猫田の母親の友人の命を奪った女が校門前に立っている。
正太郎は思わず足を止めた。
「ん?どした?」猫田が振り返る。正太郎の驚愕の表情を見て、只事ではない何かが起こっていることを瞬時に悟る。
「どうした、何があった!?」猫田は正太郎に近寄り、小声で言った。
正太郎も小さく、そして震えた声で返す。
「ひき逃げ犯だ」
いよいよ進路などを真剣に考えなければならない時期だ。
夏井正太郎は、現在高校二年生である。
学校に向かう足どりは重い。
それでも、久しぶりに友人達に会うことはやはり嬉しい。
正太郎は青い空を見上げ、大きく伸びをした。
「まだまだ暑いな」
歩きながら正太郎はふと、今朝のニュースを思い出す。
『昨日S県O市の路上において、夜11時ごろひき逃げ事件がありました。被害者は近所に住んでいる44歳の女性。自動車にはねられたあと、頭を強く打ち病院に運ばれましたが間も無く死亡。警察は防犯カメラなどの映像から、I区に住む会社員、田村美希男28歳を容疑者として逮捕いたしました、、』
ニュースには田村なる人物の顔が写されていた。
(アイツじゃないよ。あの人物は犯人ではない。同情するよ)正太郎には分かっていた。しかし助けることはできない。自分にはその力はない。
夏井正太郎には昔から不思議な能力があった。事件があると、簡単な詳細を聞くだけで犯人がわかる。不思議なことに脳にその人物の顔が鮮明に浮かび上がるのだ。しかもそれが知らない人物だとしても。
(本当に。なんの役にも立たない能力だよな)正太郎は軽く舌を打つ。
確かに。ただの高校生である彼がなんの根拠もないのにコイツが犯人だ、コイツは犯人ではない、とのたまわって見たところで誰も相手にしないだろう。それどころか、ヘタをすると犯人に恨まれて危険な目に遭うかもしれない。
正太郎は小学生の頃、何度か交番に出向き、ニュースやワイドショーや3面記事などで騒がれている事件の犯人像を、お巡りさんに話したことがある。その時のお巡りさんの、調書を取りながら浮かべていた薄ら笑いは、今でも忘れることができない。
以来、この能力は秘密にすることにした。
「夏井、おはよう!」正太郎はお尻のあたりに強い衝撃をうける。友人の猫田圭介が鞄で叩いたのだ。
「痛って!お、おう猫田か。おはよう」
「まだまだ夏だねぇ。」猫田はニヤつきながら正太郎の驚いた顔に満足している。
猫田圭介。正太郎の小学生時代からの友人である。そして、正太郎の秘密を唯一知っている存在でもあった。
「正太郎、今朝のニュース見た?あのひき逃げの容疑者は真犯人?」唐突に猫田が聞いてくる。
「朝から何だよ。珍しいなそんなこと聞いてくるの。ニュースは見た。それとアイツは違う」
「そうか・・・。お前がそう言うんだから間違いないな。実はさ、あの亡くなったおばさんが、母ちゃんの友達らしいんだ」猫田は声のトーンを落として言った。
「えっ!?」正太郎は少し驚く。
「なんか朝から母ちゃん元気なくてさー。朝メシも適当だったし」
「おばさん、ショックだったんだな・・・。真犯人は女性だよ。20代だと思う。化粧は濃いけど割と美人だ」正太郎ははっきりとその顔を思い起こせる。
「マジか!やっぱりすげーな、お前のその能力は」
「でも、なんの役にも立たん」正太郎は少し口を尖らす。
「そんなことねーだろ。警察官になればいいんじゃね?犯人わかってんだからあとは証拠探しを頑張るだけじゃん。お前の天職なんじゃね?」
「考えたことはあるよ。でも、なんかノレない。一生人の不幸のそばにいるのはしんどそうだ。」
「そんなもんかね。俺はただただうらやましいけどな」猫田はそう言って両手を頭の後ろに組んだ。
校門が見えてきた。前を歩く猫田が、つまらない話をペラペラと正太郎に振り向きもせず続ける。
正太郎は微笑みながら相槌を打つ。当たり前の毎日がまたはじまる。そんなことを考えた時だった。
「!」
何で?何でここに。
正太郎の目に映ったのは20代の化粧の濃い女。
そう。猫田の母親の友人の命を奪った女が校門前に立っている。
正太郎は思わず足を止めた。
「ん?どした?」猫田が振り返る。正太郎の驚愕の表情を見て、只事ではない何かが起こっていることを瞬時に悟る。
「どうした、何があった!?」猫田は正太郎に近寄り、小声で言った。
正太郎も小さく、そして震えた声で返す。
「ひき逃げ犯だ」
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