通りすがりの龍喰らい

ヨルムンガンド

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間章

とある冒険者の話

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 時々、昔のことを思い出すことがある。なんで俺が村の長になったのかを。

 

 「今日は、これぐらいにしておくか……」

地下 迷宮ダンジョンで俺は狩りをするのが日課だった。ただただ狩りに勤しみ、路銀を稼ぎ、モンスターが減れば別のダンジョンへ。その繰り返しだった。

 いつしか、A級の冒険者になっていた。だが、S級にはなれなかった。才能の問題だった。俺は典型的な平凡で、人一倍努力はしたものの一定の成果しか出すことが出来なかった。

 古参勢にはなったものの、クランは作らなかった。俺には、皆を率いるなんて荷が重いと思ったからだ。だけど、その分初心者や、新人の育成は手を抜かなかった。
 
 「ベルフさん!今日はどうします?」

 そんな俺にも、後輩というものがいた。名をエルといい、半人半龍という珍しく種族だった。

 体のあちこちに鱗が浮かび、背中に小さな羽が生えていた。それ故に、彼は迫害を受けていた。

 「おい、それ、ウロコって言うんだろ?キモイんだよ、ウスノロ」
 
 彼は足が遅く全体的にとろかったので、周囲からはウスノロと呼ばれていた。親はおらず、街の裏路地に身を置いており、常に死にそうだった、と彼は後に俺に語った。

 「お前、名前は?」

 「……エル……」

 初めての出会いも、その裏路地だった。俺は、その先にある違法霊薬エリクサーの製造を手掛ける組織を、壊滅させる依頼を受けていた。

 「親は?」
 
 「いらないっていわれた」

 「っ」

 職業柄、様々な理由で、不遇な環境に置かれている少年少女をよく見る。こいつより、恵まれないやつなんて腐るほどいた。

 「住む場所がないのか?」

 こくっ、と俺の質問に対し頷くエル。俺は、溜息をつきながら

 「じゃあ、俺ん家にこい」

 「え」

 「いいから、こい」

 そうして、俺とエルの共同生活が始まった。

 俺の家は無駄に広く、二人で住んでも全く窮屈ではなかった。

 エルには、教えられることを全て教えた。掃除、家事、それに戦闘や交渉術などなど。彼にとっては、毎日が新鮮だったに違いない。




 「じゃあ、今回は報酬リワードで一杯やるか!」

 「はい!って、僕お酒飲めませんよっ!」

 「ははは、ガキはミルクでも飲んでりゃいいんだよ」

 「む、また子ども扱いして!」

 「砂糖たっぷりだぞ?」

 「飲みます!」

 楽しい毎日だった。俺の方も彼に助けられていた。彼がいることで、人生が楽しかった。



___________________________________




 「黒龍の討伐か…」

 俺は、とある依頼を見つけた。その依頼は、他の依頼に隠れるようにして、貼ってあった。

 「この近くのマーマル山ですね。A級以上推奨ですか…」

 エルは、俺と共に難易度の高い依頼をバンバンこなしていたので、既にB級になっていた。史上稀に見る急成長だとギルドの受付嬢に言われた。

 「お前と俺で行けば問題無いだろ。それより、相手龍だけどいいのか?」

 「あ、それは構いません。だって、ベルフさんだって暗殺依頼何個か受けてるじゃないですか。ここに載るってことは、それだけのことをしたってことですよ」

 「そうゆうもんかね…」

 かくして、俺たちは依頼を受けることにした。

 


 それが間違いの始まりとも知らずに。


 


※すみません、以下作者の独り言です。

お読みいただきありがとございます。良かったら、フォロー、レビュー等お願いします。(←って書くと、読者が増えるとどこかに書いてあった)

 因みに、この村長編(?)はもう少しだけ続きます。主人公の活躍はよ、って人には申し訳ないですが、ここは何卒辛抱の程を。

 キャラ一人一人の個性を引き出すための回想なので、どうかご理解下さい。
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