碧天のアドヴァーサ(旧:最強とは身体改造のことかもしれない)

ヨルムンガンド

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第一章

謝罪

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「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!」
「いや、気にしなくていいですって!」
  
 ルクは、焦りに焦っていた。
 (やっちまった!女性が襲われてるから助けないとって思ってたけど、ハンターだったなんて!)
 
師匠からその存在を聞かされていたルクは彼女の教えを反芻する。
 曰く、ハンターは誇り高き職であると。
 曰く、ハンターは屈強な選ばれし者しか慣れないと。

 しかし、ルクの目の前にいる少女は明らかにルクと同い年くらいである。
 
(!?)
 ルクは気づく。少女の軽装備の下に隠されている筋肉に。
 無駄につけられておらず、しっかりと絞られている筋肉は戦士のそれだった。
 
「どうかしましたか?」
 ついじっと見つめてしまったようだ。少女が尋ねてくる。

 「いえ……あ、貴女の名前を教えて頂けますか?」
 「クリネ=システィナベル……クリネって呼んでください」
 
(システィナベルか………)
 何かが引っかかる。確かその苗字は………駄目だ。記憶の中には確かにあるのに頭が引き出すことを拒んでいる。

  ___思い出してはいけない、と。

 「いえ、なんでもないです。えっと申し訳ないんですけど、近くの街まで案内して頂けますか?」
 「あ、はい!」
 
 
  「いやー、俺と同い年くらいなのにハンターやってるなんて凄いっすね~」
 「まぁ、があるので…」
 「その年でなかなか目標はある人はいませんよ」
 「…」
 
 なかなか会話が続かない。どうやらまだ警戒しているらしい。
 
それもそうだ。見知らぬ男に出会ったばかりで仲良くなれる方が、おかしい。しかも空から落ちてきたなんて。ハンターじゃなかったらビビって逃げ出してしまうだろう。
 
 ふと、隣を歩いている少女に目をやる。先程は謝罪の念が強くて気がつかなかったが、端正な顔立ちをしている。
 
パッチリと開いた吸い込まれそうな二重の碧眼。淡い紅色をした唇に、形の整った高い鼻や秀麗な眉。髪はそれだけで芸術品と言えるほど美しい白銀。それぞれのパーツが綺麗に小さな顔にまとまっている。
 
 「どこに向かっているんですか?」
 「ベセノムですが?」
  少女は、分からないの?的な目線を向けている。
 
 不味い。
 上から来たことがバレると色々と面倒なのである。慌ててルクは言葉を紡ぐ。

 「やはり、そうでしたか。最近は来ることがなかったので、ここら辺の地理には疎いんですよ」
 「そうだったんですか。では、私が街を案内しましょうか?」
 「そうして頂けると助かります。あと、1つお伺いしたいんですが…」
 「何でしょうか?」
 「ハンターになる為にはどうすれば良いのでしょうか?」
 「え!?ハンターになりたいんですか?」

 今度は信じられないといった目を向けられてしまう。
 そんなに突拍子も無いことなのだろうか?
 こんな一見嫋やかな少女がする方が危険な気がする、とルクは思っていた。
 
 「いや、魔物や魔導について知りたいもので…」
  なるべく当たり障りの無いことを述べるルク。すると彼女は何故か悲しそうな目をしてそうでしたか、と呟く。
 
 その様子を見て、ルクは質問を決心する。

「クリネさん」
 「はい?」
「こんなこと聞くのはあれですけど……貴女は、ハンターを辞めたいと思ったことありませんか?」
 「えっ……」
 
やっぱりだ。彼女は、クリネは、ハンターになりたくてなっている訳では無い。
出会った時から気づいていたが、 心に何か抱えている者の目をしている、とルクは感じた。

 
「そんなことある訳ないですよね、変なこと聞いちゃってすみません」
 
 だが、深くは関わらないよう心がける。関わっては行けない気がした。それはまるで、人の敷地にずかずか入り込んでしまうような。先程、彼女の苗字を知った時と同じ感じがした。
 
 また彼女は黙り込んでしまう。
 ルクは、質問ばかりではあまり良くないと判断し、次はどんな話題を降るか迷っていると、
 
「うわぁっっー!」
 「「!」」
  
 何処からか悲鳴が上がる。
  2人は音の方へ駆ける。先程の会話など頭の片隅に追いやって。人を助ける為に全力を尽くす。
 
 だか、ルクは頭からこの会話を完全に消すことは出来なかった。
 (彼女は何かを抱えてる、絶対に)
 今その事を考えても詮無きことだと分かっていても、考えてしまう。

 
 それが、悲劇の始まりだとしても。
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