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第一章
反撃
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「身体改造身体電気っ!」
「む?」
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
彼が「その名」を叫んだ途端の事だった。ルクの髪の毛が、ゾワゾワと逆立つ。
「体内の電気を増幅させたか…」
体内には、元々電気が流れている。だが、それは筋肉を動かすための微弱なものに過ぎない。体内電気は、膜電位という細胞の内外の電位差によって生まれる。ナトリウム-カリウムポンプという輸送システムが……等と説明を始めると長くなるので、ここでは割愛する。
兎も角、人間には微弱な電気を生み出せるということだ。つまり、それを身体改造のできるルクがするとどうなるかは、言わずもがなだろう。
「はあああああああああああああああああああああああああああああ!」
紫電が舞う。体内で生成された莫大な電力がルクの体に纒わりつく。これほどの電力ならば、電車は軽く2、3両動かせるだろう。
「クリネさん!エルトを僕に貸して下さい」
「え?か、構いませんけど……」
クリネはルクの突然の要望に戸惑いながらも応えた。投げ渡された大剣を軽々しく受け取る。
「聞きますけど、これはオリハルコン製でしたよね?」
「は、はい。そうですけど」
「分かりました。これなら、いけます」
「……?」
彼の目には、確実な勝利の色が浮かんでいた。あの戦神相手にどう立ち向かうというのだろうか。単純な剣術なら話にもならないと言うのに。何か秘策でもあるのか。
「確かに、その剣は名剣だ。よく鍛えられている。だが、俺には効かんぞ」
ガランドは、依然として余裕がありそうだ。実際そうなのだろう。
「じゃあ、反撃といきますか。はあああっ!」
「っ」
「!?」
ビュウウウウオオオオオオオオッッッッッッッ!!!
ルクが消えた。先程とは比べものにならない速さで。超高速でガランドに肉薄していく。あまりの速さに、周囲にソニックブームができるほどだ。
「ただの脚力だけじゃこんな速さにはならない……そうか!ローレンツ力っ!」
平たく言うと、電磁場において、荷電粒子が受ける力のことだ。ルクは、自身に電気を貯めることで、荷電粒子の役割を担っていたのだ。後は、この力のエネルギー面を司る電場を操り、幾らでも加速ができる。
衝突。
「ぐっ…」
初めて戦神の表情に、焦りの色が浮かぶ。
「先程の傲岸不遜さは、どうしました?まだまだ行けますよっ!」
完全に攻守が逆転していた。攻め手であるルクの攻撃は苛烈さを増すばかりだ。
一つ一つの太刀筋の洗練さでは、ガランドに軍配が上がるだろう。しかし、今のルクにとって最も需要なのは質より量だった。手数で攻める。一手がダメなら次の一手、それもダメならまた次へ。
(これは、もしかしたら勝てる……?)
クリネは、ルクの言っていた「いける」というのは、これのことかと思った。速度というのは、戦闘において重要である。攻撃力が低かったとしても、速度によって押し切ることも出来る。
さらに、ルクの太刀筋は向上していた。達人と何合か渡り合うことで、軌道が、重さが、徐々に増す。
しかし、成長するルクに対し放たれたのは、賞賛とは程遠いものだった。
「この程度か」
ガランドの挙動が変わる。避けと防御だけに徹していたはずが、確実にルクの隙を突いていく。
(今度はガランドさんの方が、この速度に慣れていっているというの!?この短時間で!?)
常人にできることではなかった。電気を操り加速するルクもルクだが、その速度に、何にも頼らず実力のみで対応するガランドも異常と言えるだろう。
「千剣突!」
レイピアのような彼の剣が唸りをあげて迫る。このレイピアの形状の剣の真髄は「突き」だ。それを使わずに、今までルクと打ち合ってきたというのだから驚きだ。
真骨頂である「突き」が今、放たれる。
「しっ!」
一、十、百、千!無限にも等しい突きが、繰り出される。
スバババババババババババババババババババババババババッッッッッッッツ!!!!!!!!!!!!
まだ、終わらない。
シュドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!!!!!!!!!
まだ終わらない。むしろ、鋭くなる。
「またかっ」
これでは、先程と変わらない展開だ。押される。今度こそ、耐えきれない。
(また、負ける…の…?)
脳裏に、屈辱が甦る。あの完膚なきまでにやられた。ほんの数分前の出来事。
ここまで、力を尽くしてもダメなのか。裏技も、奥義も、秘技も、特殊技も、必殺技も、何もかも。彼の前では無力なのか。
「はあっ!」
致命的な一撃が、迫る。貫かれる。ここで、本当に終わってしm
「…まだだ」
ガキッン!
「弾いたか」
既のところだった。距離を取る。
「結局、その程度か」
戦神の声には、明らかな失望が混じっていた。伝家の宝刀である身体改造をもってしても、ほとんど戦いにすらなっていない。彼は、ルクのことを相手として見ていないのだろう。
「うっ、うぉぉおおおおお!」
「どこまで失望させるんだ。ただの吶喊など、猿でもできるぞ」
ルクの必死の攻撃とは、ただの突撃だった。スピードも、さっきに比べると劣っている。あまりにお粗末だった。
「ふん」
ガランドはいとも容易く、片手でエルトを受け止める。
「ここまでのようだな」
ガランドが空いた手で、鳩尾を狙う。確実に、気絶させに来ている。
拳が迫り、触れる寸前の事だった。
ルクの一撃を避けずに、受け止めたのが不味かった。
「今だぁっ!身体改造身体電気っ!!!」
「何!?」
さすがのガランドでも、ここで使ってくるとは予想外だったのだろう。明らかに体力がないように見せかけるため、突撃をあえて遅くしたルクの真意に、彼は気づく。
だが、
「もう遅い」
クリネ愛用の大剣エルトは、純度の高いオリハルコンで作られている。
そして、オリハルコンにはとある特性がある。
それは、『癖』だ。そのオリハルコンにどのような属性の力が多く働いたかによって、癖は変わる。つまり、同じ属性の魔導を通せば通すほど、そのオリハルコンは、その属性の伝導性が上がる。
さて、彼女の使っている魔導はなんだっただろうか。
「そうか、私の使っている光魔導は雷を操る!だから、雷や電気の伝導性が高いのか!」
「それだけじゃないですよ!極度に癖の着いたオリハルコンは、その属性を増幅させる!」
「クソ、だから電気か!」
「「いっけええええええええええええぇぇぇ!!!!!!!!!!!」」
エルトが眩く輝く。戦闘が始まる頃には、もう日が傾いていて辺りは暗くなり始めていた。だが、エルトの輝きにより庭園一帯は、まるで小さな太陽が現れたようだった。
「……………っっ。け、結果は?」
やがて、煌めきは収まり周囲が見えるようになる。再度、夜特有の闇が支配する。
立っているのは、戦神か、はたまた新人ハンターか。
____果たして。
「えっ?」
その結果は、彼女にとって予想だにしないことだった。まさか、そんなはずはない。
何故なら、
「……どっちも立ってる……?」
「む?」
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
彼が「その名」を叫んだ途端の事だった。ルクの髪の毛が、ゾワゾワと逆立つ。
「体内の電気を増幅させたか…」
体内には、元々電気が流れている。だが、それは筋肉を動かすための微弱なものに過ぎない。体内電気は、膜電位という細胞の内外の電位差によって生まれる。ナトリウム-カリウムポンプという輸送システムが……等と説明を始めると長くなるので、ここでは割愛する。
兎も角、人間には微弱な電気を生み出せるということだ。つまり、それを身体改造のできるルクがするとどうなるかは、言わずもがなだろう。
「はあああああああああああああああああああああああああああああ!」
紫電が舞う。体内で生成された莫大な電力がルクの体に纒わりつく。これほどの電力ならば、電車は軽く2、3両動かせるだろう。
「クリネさん!エルトを僕に貸して下さい」
「え?か、構いませんけど……」
クリネはルクの突然の要望に戸惑いながらも応えた。投げ渡された大剣を軽々しく受け取る。
「聞きますけど、これはオリハルコン製でしたよね?」
「は、はい。そうですけど」
「分かりました。これなら、いけます」
「……?」
彼の目には、確実な勝利の色が浮かんでいた。あの戦神相手にどう立ち向かうというのだろうか。単純な剣術なら話にもならないと言うのに。何か秘策でもあるのか。
「確かに、その剣は名剣だ。よく鍛えられている。だが、俺には効かんぞ」
ガランドは、依然として余裕がありそうだ。実際そうなのだろう。
「じゃあ、反撃といきますか。はあああっ!」
「っ」
「!?」
ビュウウウウオオオオオオオオッッッッッッッ!!!
ルクが消えた。先程とは比べものにならない速さで。超高速でガランドに肉薄していく。あまりの速さに、周囲にソニックブームができるほどだ。
「ただの脚力だけじゃこんな速さにはならない……そうか!ローレンツ力っ!」
平たく言うと、電磁場において、荷電粒子が受ける力のことだ。ルクは、自身に電気を貯めることで、荷電粒子の役割を担っていたのだ。後は、この力のエネルギー面を司る電場を操り、幾らでも加速ができる。
衝突。
「ぐっ…」
初めて戦神の表情に、焦りの色が浮かぶ。
「先程の傲岸不遜さは、どうしました?まだまだ行けますよっ!」
完全に攻守が逆転していた。攻め手であるルクの攻撃は苛烈さを増すばかりだ。
一つ一つの太刀筋の洗練さでは、ガランドに軍配が上がるだろう。しかし、今のルクにとって最も需要なのは質より量だった。手数で攻める。一手がダメなら次の一手、それもダメならまた次へ。
(これは、もしかしたら勝てる……?)
クリネは、ルクの言っていた「いける」というのは、これのことかと思った。速度というのは、戦闘において重要である。攻撃力が低かったとしても、速度によって押し切ることも出来る。
さらに、ルクの太刀筋は向上していた。達人と何合か渡り合うことで、軌道が、重さが、徐々に増す。
しかし、成長するルクに対し放たれたのは、賞賛とは程遠いものだった。
「この程度か」
ガランドの挙動が変わる。避けと防御だけに徹していたはずが、確実にルクの隙を突いていく。
(今度はガランドさんの方が、この速度に慣れていっているというの!?この短時間で!?)
常人にできることではなかった。電気を操り加速するルクもルクだが、その速度に、何にも頼らず実力のみで対応するガランドも異常と言えるだろう。
「千剣突!」
レイピアのような彼の剣が唸りをあげて迫る。このレイピアの形状の剣の真髄は「突き」だ。それを使わずに、今までルクと打ち合ってきたというのだから驚きだ。
真骨頂である「突き」が今、放たれる。
「しっ!」
一、十、百、千!無限にも等しい突きが、繰り出される。
スバババババババババババババババババババババババババッッッッッッッツ!!!!!!!!!!!!
まだ、終わらない。
シュドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!!!!!!!!!
まだ終わらない。むしろ、鋭くなる。
「またかっ」
これでは、先程と変わらない展開だ。押される。今度こそ、耐えきれない。
(また、負ける…の…?)
脳裏に、屈辱が甦る。あの完膚なきまでにやられた。ほんの数分前の出来事。
ここまで、力を尽くしてもダメなのか。裏技も、奥義も、秘技も、特殊技も、必殺技も、何もかも。彼の前では無力なのか。
「はあっ!」
致命的な一撃が、迫る。貫かれる。ここで、本当に終わってしm
「…まだだ」
ガキッン!
「弾いたか」
既のところだった。距離を取る。
「結局、その程度か」
戦神の声には、明らかな失望が混じっていた。伝家の宝刀である身体改造をもってしても、ほとんど戦いにすらなっていない。彼は、ルクのことを相手として見ていないのだろう。
「うっ、うぉぉおおおおお!」
「どこまで失望させるんだ。ただの吶喊など、猿でもできるぞ」
ルクの必死の攻撃とは、ただの突撃だった。スピードも、さっきに比べると劣っている。あまりにお粗末だった。
「ふん」
ガランドはいとも容易く、片手でエルトを受け止める。
「ここまでのようだな」
ガランドが空いた手で、鳩尾を狙う。確実に、気絶させに来ている。
拳が迫り、触れる寸前の事だった。
ルクの一撃を避けずに、受け止めたのが不味かった。
「今だぁっ!身体改造身体電気っ!!!」
「何!?」
さすがのガランドでも、ここで使ってくるとは予想外だったのだろう。明らかに体力がないように見せかけるため、突撃をあえて遅くしたルクの真意に、彼は気づく。
だが、
「もう遅い」
クリネ愛用の大剣エルトは、純度の高いオリハルコンで作られている。
そして、オリハルコンにはとある特性がある。
それは、『癖』だ。そのオリハルコンにどのような属性の力が多く働いたかによって、癖は変わる。つまり、同じ属性の魔導を通せば通すほど、そのオリハルコンは、その属性の伝導性が上がる。
さて、彼女の使っている魔導はなんだっただろうか。
「そうか、私の使っている光魔導は雷を操る!だから、雷や電気の伝導性が高いのか!」
「それだけじゃないですよ!極度に癖の着いたオリハルコンは、その属性を増幅させる!」
「クソ、だから電気か!」
「「いっけええええええええええええぇぇぇ!!!!!!!!!!!」」
エルトが眩く輝く。戦闘が始まる頃には、もう日が傾いていて辺りは暗くなり始めていた。だが、エルトの輝きにより庭園一帯は、まるで小さな太陽が現れたようだった。
「……………っっ。け、結果は?」
やがて、煌めきは収まり周囲が見えるようになる。再度、夜特有の闇が支配する。
立っているのは、戦神か、はたまた新人ハンターか。
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「えっ?」
その結果は、彼女にとって予想だにしないことだった。まさか、そんなはずはない。
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