35 / 151
35
しおりを挟む
この世界には、妊娠検査薬なんていうものはない。
妊娠は女性が自分で気づいて申告し、自分で母体を管理する。医師や助産婦は、出産のときに立ち会うだけだ。
確かにアンナは『妊娠した』と言ったけれど、よく考えると、それを裏づける証拠は何もない――。
「でも……そんなことをして何になるの?」
「アレックス様と結婚できます」
決まっているでしょうと言わんばかりにユリウスは言う。
「そんなことしなくたって、アレックスはアンナのことが好きなんだから結婚するでしょう。それに、もし嘘がばれたら信頼関係も崩れてしまうし」
「……分かってないですね、あなたは」
ユリウスはかすかに苦笑した。
「アンナ嬢が妊娠していなければ、アレックスはあなたとの婚約破棄には及びませんでしたよ。彼はあなたに構ってほしくて、犬のように周りをうろついていたのだから。
アンナ嬢があなたに唯一勝てるチャンスが、妊娠だった。アレックスにとっての初めての、人生にとって大きな経験ですからね」
ユリウスの言っていることは分かる。
でも、もし本当にそうだとしたら、やっていることがえげつなさすぎる。
「でも……アンナがそこまでするなんて」
「そりゃ、しますよ。アンナ嬢には地位も富も何もない。守るものがない分、どこまでも捨て身になれる。結婚さえしてしまえば、後のことはどうとでもなりますしね」
私には信じられなかった。
アンナのことはよく知らないけれど――アレックスとの結婚のために、そこまでやる??
「妊娠が嘘だということがばれそうになったから、流産したとさらに嘘をついたんでしょう。しかも、タイミングよくあなたに会ったことを利用して、流産の原因をあなたに押しつけている。公爵様の言ったとおり、アンナ嬢はとことん被害者になることが得意らしい」
ユリウスの口元は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
妊娠は女性が自分で気づいて申告し、自分で母体を管理する。医師や助産婦は、出産のときに立ち会うだけだ。
確かにアンナは『妊娠した』と言ったけれど、よく考えると、それを裏づける証拠は何もない――。
「でも……そんなことをして何になるの?」
「アレックス様と結婚できます」
決まっているでしょうと言わんばかりにユリウスは言う。
「そんなことしなくたって、アレックスはアンナのことが好きなんだから結婚するでしょう。それに、もし嘘がばれたら信頼関係も崩れてしまうし」
「……分かってないですね、あなたは」
ユリウスはかすかに苦笑した。
「アンナ嬢が妊娠していなければ、アレックスはあなたとの婚約破棄には及びませんでしたよ。彼はあなたに構ってほしくて、犬のように周りをうろついていたのだから。
アンナ嬢があなたに唯一勝てるチャンスが、妊娠だった。アレックスにとっての初めての、人生にとって大きな経験ですからね」
ユリウスの言っていることは分かる。
でも、もし本当にそうだとしたら、やっていることがえげつなさすぎる。
「でも……アンナがそこまでするなんて」
「そりゃ、しますよ。アンナ嬢には地位も富も何もない。守るものがない分、どこまでも捨て身になれる。結婚さえしてしまえば、後のことはどうとでもなりますしね」
私には信じられなかった。
アンナのことはよく知らないけれど――アレックスとの結婚のために、そこまでやる??
「妊娠が嘘だということがばれそうになったから、流産したとさらに嘘をついたんでしょう。しかも、タイミングよくあなたに会ったことを利用して、流産の原因をあなたに押しつけている。公爵様の言ったとおり、アンナ嬢はとことん被害者になることが得意らしい」
ユリウスの口元は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
309
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる