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これは多分、ナサニエル王子にとっても悪くない話なんだ。
さっきユリウスも言っていたけど、王家にとって結婚は有力貴族と結びつくための手段であり、慎重に決めなければいけない。
そこに、個人の意思なんてものは反映されない。
王子は他に好きな人がいるかもしれないし、単にまだ結婚せず自由を謳歌したいのかもしれない。
でも、もう王子も21歳。この世界じゃ16歳が成人だから、前世で言うと25-27歳ぐらいの感覚だ。
かなりの適齢期で、今すぐ結婚が決められてもおかしくない。
そこに婚約破棄された私が現れたものだから、渡りに船と、カモフラージュに使おうとしてる……とか?
「ローラ。悪かったよ。だから、そんな顔しないでくれ」
「え?」
私、そんなに変な顔してた?
気がついたら、王子が階段から降りて、私の前に膝をついていた。
「確かに、俺はまだ結婚したいとは思っていない。だから、お前との噂が流れるのは、正直好都合だ。
だけど、結婚を引き延ばすために、隠れ蓑としてお前を利用しようだなんて思っていない。本当だ。
その証拠に、これを見てほしい」
指さされて見ると、さっきもらったイヤリングの端に、小さく文字が彫られている。
【N・K・テセオニア】
「……王家の人間が、自分の名が刻まれたものを他人に渡すのは、結婚相手だけだ。もしお前が望むのなら、俺はお前と結婚する覚悟はできている」
「で、殿下……!」
うろたえた私の手を両手で握り、王子は熱い瞳で言った。
「ネイトと呼んでくれないか」
え、え、え、やばいやばいやばいやばすぎる。これはどういうこと!?
「殿……ネイトは、私のことを好きだとおっしゃるんですか?」
我ながら馬鹿みたいな質問だと思ったけど、王子は笑わなかった。
「今はまだ妹のような存在だ。だが、女性として愛せる自信はある」
心臓が壊れそうにドクンドクンしている。顔が死ぬほど熱い。
恥ずかしいのと、怖いのと、嬉しいのと、全部の感情が混ざり合っている。
「それより俺は、ローラの気持ちを大事にしたい。婚約破棄の件が落ちついたとき、お前が俺を本当に好きなら、噂を本当にしよう。そうでないなら、あくまで噂は噂だったということで、きっちり否定すればいい。……どうだ?」
いや……どうだって言われても……。
「しばらく考える時間をいただけませんか。急なお話で、少し……混乱していて」
「分かった。返事はいつでもいいから、ゆっくり考えてくれ。ただ、俺がローラを大事に思っていることだけは、忘れないでくれよ」
王子の瞳の中で、エメラルドグリーンの炎が燃えている。
私は顔を真っ赤にして、立っているのが精いっぱいで、ふらつきながら謁見の間を退出した。
さっきユリウスも言っていたけど、王家にとって結婚は有力貴族と結びつくための手段であり、慎重に決めなければいけない。
そこに、個人の意思なんてものは反映されない。
王子は他に好きな人がいるかもしれないし、単にまだ結婚せず自由を謳歌したいのかもしれない。
でも、もう王子も21歳。この世界じゃ16歳が成人だから、前世で言うと25-27歳ぐらいの感覚だ。
かなりの適齢期で、今すぐ結婚が決められてもおかしくない。
そこに婚約破棄された私が現れたものだから、渡りに船と、カモフラージュに使おうとしてる……とか?
「ローラ。悪かったよ。だから、そんな顔しないでくれ」
「え?」
私、そんなに変な顔してた?
気がついたら、王子が階段から降りて、私の前に膝をついていた。
「確かに、俺はまだ結婚したいとは思っていない。だから、お前との噂が流れるのは、正直好都合だ。
だけど、結婚を引き延ばすために、隠れ蓑としてお前を利用しようだなんて思っていない。本当だ。
その証拠に、これを見てほしい」
指さされて見ると、さっきもらったイヤリングの端に、小さく文字が彫られている。
【N・K・テセオニア】
「……王家の人間が、自分の名が刻まれたものを他人に渡すのは、結婚相手だけだ。もしお前が望むのなら、俺はお前と結婚する覚悟はできている」
「で、殿下……!」
うろたえた私の手を両手で握り、王子は熱い瞳で言った。
「ネイトと呼んでくれないか」
え、え、え、やばいやばいやばいやばすぎる。これはどういうこと!?
「殿……ネイトは、私のことを好きだとおっしゃるんですか?」
我ながら馬鹿みたいな質問だと思ったけど、王子は笑わなかった。
「今はまだ妹のような存在だ。だが、女性として愛せる自信はある」
心臓が壊れそうにドクンドクンしている。顔が死ぬほど熱い。
恥ずかしいのと、怖いのと、嬉しいのと、全部の感情が混ざり合っている。
「それより俺は、ローラの気持ちを大事にしたい。婚約破棄の件が落ちついたとき、お前が俺を本当に好きなら、噂を本当にしよう。そうでないなら、あくまで噂は噂だったということで、きっちり否定すればいい。……どうだ?」
いや……どうだって言われても……。
「しばらく考える時間をいただけませんか。急なお話で、少し……混乱していて」
「分かった。返事はいつでもいいから、ゆっくり考えてくれ。ただ、俺がローラを大事に思っていることだけは、忘れないでくれよ」
王子の瞳の中で、エメラルドグリーンの炎が燃えている。
私は顔を真っ赤にして、立っているのが精いっぱいで、ふらつきながら謁見の間を退出した。
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