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ようやく人波がひと段落ついたのは、お昼すぎのことだった。

「ね?分かったでしょ、ご自分のモテモテっぷりが」

日当たりのいいテラスでランチをとりながら、マリーはにやりと笑った。

「そうね。まさか、みんながこんなに心配してくれて、味方になってくれるなんて思わなかったわ」

私はしみじみと呟く。

貴族社会は狭い。どんな噂も翌日には全員の耳に入ってしまう。

しかも、それが縁談となると、なおさらだ。

王立学院の生徒たちはお金持ちの子ばかりで、一見自由で気楽な立場だと思われがちだけど、実は計り知れないしんどさや大変さがある。

例えば学校で誰かと恋愛しても、気軽に付き合うってわけにはいかないのだ。

前にも言ったとおり、『付き合う=結婚=家と家との結びつき』という背景があるからね。

実際、あまり力の強くない貴族の子息や令嬢は、この学校で有力貴族の子息や令嬢を見つけて誼を結び、結婚まで漕ぎつけようと必死で努力している。

たとえ好きな相手でなくとも、家や家族を守っていくために、たった14歳から16歳の子どもが命がけで恋愛をしているのだ。

華やかで優雅な学園生活に見えて、実はかなり過酷なサバイバルでもある。

そんな身分や立場のある子たちが、自分のことで精いっぱいなはずなのに、私を心配したり慮ってくれたのは意外で、とても嬉しいことだった。

「まあ、本気で公爵家に婿入りしたい連中もちらほらいるから、その辺は下心ありの優しさだけどね。とりあえずローラに近づく男は、全部私がなぎ払うから安心して」

物騒なことを呟きながら、マリーは目を不穏に光らせる。

「そうね……私、今回のことでいろいろ考えちゃって。しばらく恋愛っていう気にはなれないんだよね」

「それがいいよ。男なんて99%がクソカスなんだから、ほとんど無視して、この人は本物だなって思う人だけに時間を使ったほうがいいよ。全員を相手してる暇なんてないし」

「あら、素敵なこと言うのね。それはマリーの経験談から?」

「まさか。私は一生恋愛しないし、結婚する気もないから」

マリーが一刀両断したので、私は目を丸くした。
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