秋月の鬼

凪子

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二、

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幼くも凛然とした声に、打たれたように女性の動きが静止する。

洒脱な着物の帯は前で華麗に結び、うなじを白く塗った佳人は、あっけにとられていたかと思うと豪快に笑いだした。

門の奥、厳然とそびえ立つ城と、目の前の痩せっぽっちでみすぼらしい少女を見比べ、

「あっはっは。こりゃあ傑作だ。お前さん、若様の嫁御になりに来たのかい?」

「さようでございます」

奥ゆかしく頭を下げる礼儀正しい常盤の頭をとっくりと眺め、女性はどんと胸をたたく。

「お前さん名前は?」

常盤ときわと申します」

「よし常盤。私のことは夕霧ゆうぎり姐さんとお呼び。ついておいで」

豪胆に言うと、星陵門へ向かって歩き出す。

門の屋根は釉薬に彩られた藍色、白漆喰で塗り固められた高い門扉に、ぴたりと張りつく二人の武士。

小走りになって夕霧の後を追う常盤の目の前で、屈強な門番のかざした長刀が、がちゃりといまいましい金属音を立てて交叉した。

ぎろりと睨みをきかす侍に、夕霧は嫣然と微笑を向ける。

花も恥じらい真珠の輝きすらかすむ美貌に二人の男が思わず見とれているのが、常盤の澄んだ目に映った。
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