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六、
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疑問を隠せない常盤に、真覚は言い聞かせた。
「あの方なら、あるいは夕霧殿を助ける手立てがあるやもしれません」
「ありがとうございます。ですが、どうしてこうも親切にしていただけるのですか」
感謝よりも疑念の方が強かった。
候補者の間で殺人が起きている。
そうでなくとも、誰もが誰もの敵というこの状況下で、他の候補者の身を案ずることなど愚の骨頂だ。
第一、真覚は容花の侍女なのだ。
常盤や夕霧を蹴落としこそすれ、力を貸す筋合いは一切ない。
「わたくしではありません。これは容花様のご意思です」
常盤が呆気にとられているうちに、真覚は機敏に身を翻して去った。
一体、どういうことなのだろう。
あの態度からして、容花が自分や夕霧に好意を抱いているとは考えにくい。
それなのに、真覚は容花の命で常盤を助けるという。
どう考えても腑に落ちない。不可解なことだらけだ。
だが、他に夕霧を助ける手立てがない以上、真覚の言葉を信ずるよりほかはない。
「春日様。春日様はいらっしゃいますか」
試練の前で、ただでさえ緊張している上に、人が死んでいる。
姫君たちは警戒心を露わに常盤を睨んだ。
「はあい」
だが、春日だけは初日と寸分違わぬ無邪気さで、常盤の元へ走り寄ってきた。
常盤を見ると目を丸くして、
「あら、この前の。あの時はありがとうございました」
ぺこりと折り目正しく頭を下げる。
「実は折り入ってご相談があるのですが」
常盤は知らず声を潜める。
春日の目がすうっと細まった。
事情を手際よく説明すると、
「声が出ない?」
春日は素っ頓狂な声を出した。
「はい。今朝起きたら、そのようなことになっておりまして」
「それは大変ですね。だけど、どうして私に?」
率直に問われ、好奇心の宿った目で見上げられれば、常盤も言葉に詰まる。
「……このようなことをお話しても、困惑なさるだろうとは思ったのですが」
真覚の確信のこもった口調と、目の前の少女の姿がそぐわない。
「あの方なら、あるいは夕霧殿を助ける手立てがあるやもしれません」
「ありがとうございます。ですが、どうしてこうも親切にしていただけるのですか」
感謝よりも疑念の方が強かった。
候補者の間で殺人が起きている。
そうでなくとも、誰もが誰もの敵というこの状況下で、他の候補者の身を案ずることなど愚の骨頂だ。
第一、真覚は容花の侍女なのだ。
常盤や夕霧を蹴落としこそすれ、力を貸す筋合いは一切ない。
「わたくしではありません。これは容花様のご意思です」
常盤が呆気にとられているうちに、真覚は機敏に身を翻して去った。
一体、どういうことなのだろう。
あの態度からして、容花が自分や夕霧に好意を抱いているとは考えにくい。
それなのに、真覚は容花の命で常盤を助けるという。
どう考えても腑に落ちない。不可解なことだらけだ。
だが、他に夕霧を助ける手立てがない以上、真覚の言葉を信ずるよりほかはない。
「春日様。春日様はいらっしゃいますか」
試練の前で、ただでさえ緊張している上に、人が死んでいる。
姫君たちは警戒心を露わに常盤を睨んだ。
「はあい」
だが、春日だけは初日と寸分違わぬ無邪気さで、常盤の元へ走り寄ってきた。
常盤を見ると目を丸くして、
「あら、この前の。あの時はありがとうございました」
ぺこりと折り目正しく頭を下げる。
「実は折り入ってご相談があるのですが」
常盤は知らず声を潜める。
春日の目がすうっと細まった。
事情を手際よく説明すると、
「声が出ない?」
春日は素っ頓狂な声を出した。
「はい。今朝起きたら、そのようなことになっておりまして」
「それは大変ですね。だけど、どうして私に?」
率直に問われ、好奇心の宿った目で見上げられれば、常盤も言葉に詰まる。
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真覚の確信のこもった口調と、目の前の少女の姿がそぐわない。
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