護国の鳥

凪子

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秋の章

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「ありがとう」

ユリシスは心からの笑みを向けた。

「僕は自分の意思で君たちと一緒にいるんだ。強制されてもいないし、遠慮もしていない」

それを聞いて、ギルベルトははっきりとした安堵の表情で息をついた。

「よかった。僕らのせいで君とフラクタル君が仲違いしたらどうしようって、気が気じゃなかったんだ」

素直な言葉にユリシスは目を細め、ゆっくりとかぶりを振る。

「違うよ。……そうじゃないんだ」

哀しみのこもった呟きに、ギルベルトは口をつぐむ。

神妙な沈黙が漂い、風が緩やかに二人の間を吹き抜けていく。

やがて、何かを決意した面持ちでギルベルトは顔を上げた。

「僕のこと、名前で呼んでくれてありがとう」

きょとんとしたユリシスに、含羞のある表情で告げる。

「自分で言うのもなんだけど、僕は昔から地味で、何をやっても駄目で、名前を呼んでくれる人なんて数人しかいないんだ。面白い冗談も言えないし、付き合ってて楽しい人間じゃない。ましてや君と釣り合うような身分じゃないって、よく分かってる」

「そんなことはない」

ユリシスは即座に言った。

「ギルベルトは優秀だよ。今ここに生き残ってるのが、その証拠だ」

「どっちつかずの中途半端な成績だけどね」

ギルベルトは弱気な笑みを見せた。

「でもね。こんな自分を、自信が持てなくて、いつも小さくなってる自分を、見下さずに対等に扱ってくれたのはユリシスだけなんだ」

ギルベルトは目をきらきらと輝かせていた。

「嬉しかったよ、本当に。勇気を出して声をかけてみて、本当によかったって。何か、目の前が開けていくような、そんな気分だった」

照れ笑いするギルベルトを見つめ、ユリシスは喉を詰まらせる。

「自分の身の丈は自分が一番よく分かってる。翼の会のメンバーだって、皆がみんな僕を友達だと思ってくれているわけじゃない。馬鹿にされたり、いいように利用されたりもしょっちゅうなんだ。
でも君と会って、力をもらえた。いつも周りのことを考えて、人を助けて、正しいことを貫こうとしてる。自分も、こんなふうになれたらって」

たどたどしく言葉を連ね、ギルベルトは恥じ入ったように口ごもった。

「ごめん。何か僕、いっぱいいっぱいで」

ユリシスは首を振り、手を差し出した。

「ありがとう」

ギルベルトはまごついていたが、おずおずとその手を取った。

ユリシスは力強く握り返すと、

「君を信じるよ、ギルベルト。どんなことがあっても、僕は君の味方だ」




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