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冬の章
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「なぜ」
とルートは尋ねたが、返事を期待してのものではなかった。
「ここは要塞だ。外から打ち崩すのは容易ではないが、立てこもってしまえば何より堅牢な守りになる。
奴らはユリシス・ド・モルガンを人質に取り、軍機大臣に要求を突きつけるだろう。金と物資、土地、権利、その他あらゆるものを。要求が呑まれれば、ここは奴らの陣営の総本部になる。呑まれなければ見せしめの処刑場に。
どちらにせよ、他の者は皆殺しだ」
ルートは銃に弾が込められていることを確認し、ホルスターにセットした。
「分かったか。ここは戦場になる」
ルベリエはユージェニーに言い聞かせると、石壁の一部を外して中のレバーを引き、地響きと共に地下通路への階段が開かれた。
辺りには、もうもうと砂埃が立ちこめる。
「これは?」
「緊急の避難路だ。唯一、ここから島の外へとつながっている」
そこからぬっと大柄な男が現れ、ルートは飛び退いた。
「あら、失礼しちゃう。レディに対する態度がなってないんじゃない?」
すっかりお馴染みになったつなぎを着て、腰に手を当てて軽くこちらを睨んでみせる。
「ゴモラさん」
目を大きく見開き、ユージェニーは安堵の表情を見せた。
「他の皆も一緒よ。早くいらっしゃい」
二、三歩進みかけて、しかしユージェニーは立ちどまった。
「ルート、あなたは?」
「俺は残る」
当然のごとくルートは言い切った。
「退学になるわけにはいかない」
「だったら、私も一緒に戦う」
「何を馬鹿なことを言ってるの。あんたがいたって、足手まといになるだけでしょう」
ゴモラに諭され、ユージェニーは悔しげに唇を引き結んだ。
「でも……だって私、まだ何も突きとめてない。本当のこと、兄さんのことだって」
ルートはユージェニーに近づくと、みぞおちに手加減なしの痛烈な一撃を喰らわせた。
倒れ込む体を抱き留め、荷物のようにゴモラに向かって差し出す。
「あんた鬼ね。仮にも女の子に向かって」
ゴモラは乾いた笑いを浮かべ、腕の中でぐったりと気を失っているユージェニーを見つめる。
「ゴモラさん」
ルベリエは真剣な眼差しで言った。
「……お願いします」
「しょうがないわねえ」
ゴモラは「よっこらしょ」とユージェニーを背中に担ぎ上げた。
「さ、行くわよ、みんな。ゴモラ姐さんについていらっしゃい!」
威勢のいい声を張り上げ、他の職員たちを引き連れ、ゴモラは暗闇の中を歩き出した。
とルートは尋ねたが、返事を期待してのものではなかった。
「ここは要塞だ。外から打ち崩すのは容易ではないが、立てこもってしまえば何より堅牢な守りになる。
奴らはユリシス・ド・モルガンを人質に取り、軍機大臣に要求を突きつけるだろう。金と物資、土地、権利、その他あらゆるものを。要求が呑まれれば、ここは奴らの陣営の総本部になる。呑まれなければ見せしめの処刑場に。
どちらにせよ、他の者は皆殺しだ」
ルートは銃に弾が込められていることを確認し、ホルスターにセットした。
「分かったか。ここは戦場になる」
ルベリエはユージェニーに言い聞かせると、石壁の一部を外して中のレバーを引き、地響きと共に地下通路への階段が開かれた。
辺りには、もうもうと砂埃が立ちこめる。
「これは?」
「緊急の避難路だ。唯一、ここから島の外へとつながっている」
そこからぬっと大柄な男が現れ、ルートは飛び退いた。
「あら、失礼しちゃう。レディに対する態度がなってないんじゃない?」
すっかりお馴染みになったつなぎを着て、腰に手を当てて軽くこちらを睨んでみせる。
「ゴモラさん」
目を大きく見開き、ユージェニーは安堵の表情を見せた。
「他の皆も一緒よ。早くいらっしゃい」
二、三歩進みかけて、しかしユージェニーは立ちどまった。
「ルート、あなたは?」
「俺は残る」
当然のごとくルートは言い切った。
「退学になるわけにはいかない」
「だったら、私も一緒に戦う」
「何を馬鹿なことを言ってるの。あんたがいたって、足手まといになるだけでしょう」
ゴモラに諭され、ユージェニーは悔しげに唇を引き結んだ。
「でも……だって私、まだ何も突きとめてない。本当のこと、兄さんのことだって」
ルートはユージェニーに近づくと、みぞおちに手加減なしの痛烈な一撃を喰らわせた。
倒れ込む体を抱き留め、荷物のようにゴモラに向かって差し出す。
「あんた鬼ね。仮にも女の子に向かって」
ゴモラは乾いた笑いを浮かべ、腕の中でぐったりと気を失っているユージェニーを見つめる。
「ゴモラさん」
ルベリエは真剣な眼差しで言った。
「……お願いします」
「しょうがないわねえ」
ゴモラは「よっこらしょ」とユージェニーを背中に担ぎ上げた。
「さ、行くわよ、みんな。ゴモラ姐さんについていらっしゃい!」
威勢のいい声を張り上げ、他の職員たちを引き連れ、ゴモラは暗闇の中を歩き出した。
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