護国の鳥

凪子

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冬の章

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「さっき、お前言ったよな。どうやってここまで来られたんだって」

頷くと、レッドはシーツをはぎとって包帯がわりに裂き、一つを自分に、もう一つを「巻いとけ、腕に」とユリシスに放り投げた。

「俺の処遇でどうするかもめて、仲間割れになってたんだよ。そこへ極めつけにアレクシス様からの通達が来て、あいつら仲間同士で殺し合いになってさ。おかげで、隙を見て逃げ出すことができたってわけ」

判じかねているユリシスに、レッドは腕を広げて足を示した。

「一応、手当されてるだろ。俺は人質であるお前の従僕だから、殺すのはまずいだろうってことになったんだよ。無血革命?とか何とか言ってたし、多分翼の会の奴らは、本当にそのつもりだったんだろうよ。

ただ、翼の会の連中が手引きしてここに入れた、インバース本体は別だ。あいつら単なる人殺し集団だからな。
あの後お前が気を失ってから、翼の会の生徒以外は全員あの場で撃ち殺された。要求が通らないと分かってからは、俺やお前も殺そうとしてた。まあ、おかげでお前の居場所を突き止められたんだけど」

「……レッド。僕は」

「そんな顔するなよ」

レッドは小器用に唇を曲げた。

「お前が責任感じるのは、お門違いだ。俺だって、まさかこんなことになるなんて思ってもなかったよ」

「騙されたんだ、彼らは」

ユリシスは痛恨の面持ちで口にした。

「今ならよく分かる。ギルベルトも、ほかの皆も、ただ純粋に軍を変えようとしてただけだ。その気持ちを、悪意のある人間に利用されたんだ」

レッドは目を細め、溜息と共に言葉を吐き出した。

「……そうかもな」

「レッド、僕は翼の会を利用し、この事件を引き起こした首謀者を捕まえる」

「捕まえてどうするんだ」

「法の下に裁きを受けさせ、罪を償わせる。インバースは」

ユリシスは果敢な目で言い切った。

「僕がこの手で終わらせる」

レッドは愉快そうな笑い声を立てた。

「お前、本当の本当に馬鹿なんだな」

「そうだよ。僕は馬鹿なんだ。レッドもよく知ってるだろう?」

ユリシスの表情が、幼い頃のものに戻ってゆく。

「レッド、僕は君に謝らなきゃいけない。今まであれだけ助けてもらったのに、命さえ守ってくれたのに、僕は何も」

「ああ、いいって、いいって。こっ恥ずかしい」

両手を振って遮り、レッドはそっぽを向いた。

「それより、戦場はピクニックじゃないんだぞ」

「分かってる」

「殺す覚悟も、殺される覚悟もあるのか」

「僕は死なない。レッドのことも殺させない。自分からは斬らないけど、向かってくるものは斬る」

「甘ちゃんだね、相変わらず」

レッドは頭をかいた。

「ま、いいや。綺麗事勝負なら、お前に勝てる奴はそうそういないだろ。見せてやれよ。インバースとやらのはるか上を行く、正真正銘の理想ってやつを」






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