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第一章

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何だ。道理で、さっきからどうも見られているな、と思っていた。

どうやら、注目されていたのは自分ではなく、隣の美少年だったらしい。

見られているのは気まずいが、今さら席を立つのも不自然だと思い、真啓は軽く咳ばらいをしながら、もう一度横目で彼を見た。

そう、だと思っていたのだ。そのときは、疑いもせずに。

人にはそれぞれ美しく見える角度と、ブスに見える角度があるという。

芸能人やモデルはその効果を利用し、常に一番よく見える角度やポーズを身につけ、研究しているのだそうだ。

だが、その少年は、どこからどう見ても美少年だった。

シンプルだがセンスのいい細身のスーツに身を包み、清潔感のある顔立ちは、どことなく古代ギリシャ彫刻の戦神せんじんを思わせる。

すっと通った鼻梁びりょう、意志の強そうな眉、透きとおるような瞳、形のよい唇。

耳たぶや喉までが、白く光を弾いてまぶしかった。

凛々しいたたずまいといい、洗練された雰囲気といい、どの角度で切り取っても完璧の一言しかなかった。
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