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第一章
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公香の大食いについては、初対面から回数を重ねることで、真啓にも耐性がついた。
一緒にいると、つられて自分まで食べすぎてしまうのが難点だ。
何といっても、食べているときの公香は本当に嬉しそうでおいしそうなのである。
今もカルビ、ハラミ、ハツ、タン塩、ユッケ、ビビンバと高速で乱れなく箸を運ぶ。
ほとんど音を立てずに食事をするので、たたき込まれたマナーと育ちのよさが窺われる。
「お前と食べる飯はうまいいんだ」と素直に言ったら露骨に嫌な顔をして、「結婚詐欺でもやるつもりか?」と尋ねられて笑った。
「真啓は一人暮らしなんだったな」
たらふく食べて、ご飯のおかわりが三杯目を数えたとき、不意に公香が言った。
もう食欲は満たされ、あとは酒を飲むことに集中していた真啓は、グラスから口を離して、
「そうだよ」
「家は?」
「埼玉」
「通学圏内じゃないのか?」
んんー、と真啓は首を傾げて眉を寄せる。
しばらく考え込んでから、金庫から取り出すように慎重に言葉を選んだ。
「通えるっちゃ通えるけど……やっぱり近いほうが便利だしね。高校のころから家出たかったし」
「何で」
公香は子供のように鋭くて率直だ。
それが心地よくもあり、手に負えないと感じることもある。八割方は後者だが。
「親があんまり仲よくなくてさ。弟も……今高校生なんだけど、反抗期で」
顔をつき合わせれば誰かが喧嘩している。四六時中怒鳴り声の絶えない家庭。
「それでも、全然会話しないよりはマシなんだろうけどさ。ご存じのとおり、俺は平和主義者だから」
よどんだ空気を何とか修復しようとするが、いかんせん不器用なもので、それが余計に事態を悪化させたりしてしまう。
そして自己嫌悪に陥るのを繰り返した。
そんな状態が中学に上がったときから続いて、高校卒業のころには疲れ果てていた。
一緒にいると、つられて自分まで食べすぎてしまうのが難点だ。
何といっても、食べているときの公香は本当に嬉しそうでおいしそうなのである。
今もカルビ、ハラミ、ハツ、タン塩、ユッケ、ビビンバと高速で乱れなく箸を運ぶ。
ほとんど音を立てずに食事をするので、たたき込まれたマナーと育ちのよさが窺われる。
「お前と食べる飯はうまいいんだ」と素直に言ったら露骨に嫌な顔をして、「結婚詐欺でもやるつもりか?」と尋ねられて笑った。
「真啓は一人暮らしなんだったな」
たらふく食べて、ご飯のおかわりが三杯目を数えたとき、不意に公香が言った。
もう食欲は満たされ、あとは酒を飲むことに集中していた真啓は、グラスから口を離して、
「そうだよ」
「家は?」
「埼玉」
「通学圏内じゃないのか?」
んんー、と真啓は首を傾げて眉を寄せる。
しばらく考え込んでから、金庫から取り出すように慎重に言葉を選んだ。
「通えるっちゃ通えるけど……やっぱり近いほうが便利だしね。高校のころから家出たかったし」
「何で」
公香は子供のように鋭くて率直だ。
それが心地よくもあり、手に負えないと感じることもある。八割方は後者だが。
「親があんまり仲よくなくてさ。弟も……今高校生なんだけど、反抗期で」
顔をつき合わせれば誰かが喧嘩している。四六時中怒鳴り声の絶えない家庭。
「それでも、全然会話しないよりはマシなんだろうけどさ。ご存じのとおり、俺は平和主義者だから」
よどんだ空気を何とか修復しようとするが、いかんせん不器用なもので、それが余計に事態を悪化させたりしてしまう。
そして自己嫌悪に陥るのを繰り返した。
そんな状態が中学に上がったときから続いて、高校卒業のころには疲れ果てていた。
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