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第一章

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夜勤が明けて、家に帰ってから泥のように眠り、起きたら12時を過ぎていた。

もらった弁当を食べ、テレビを見たり、だらだらして過ごす。

『大学時代は人生の夏休み』と誰かが言ったが、本当にそうだと思う。

スマホを開くと、いくつかLINEが来ていた。

少ない知り合いが、遊びやサークルに誘ってくれていたりする。

それらに返信しながら、公香のことに思いをはせる。

あの後、大丈夫だっただろうか。

反対向きの電車に乗り込む彼女の背中を見送って、そのまま自分もバイト先へダッシュしたから、ろくにフォローもできなかった。

誰かにつけられるということが、ここまで不気味で、不愉快なものだとは知らなかった。

それでも、恐怖を感じるほどではなかった。

公香は規格外で暴力的ではあるけれど、何と言っても女の子だ。心細く思っているに違いない。

LINEの文面を考えて簡潔に打ち込む。

そこまで考えて、公香にLINEをするのが初めてであることに気づいた。

少ない『友だち』リストには、高校や予備校時代の友達、それから両手の指に収まるくらいの大学の友人しか入っていない。

そのほとんどが男の名前であることに苦笑する。

LINEを送信してバイトへ行く準備をする。

公香からの返事は来ることがなかった。











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