ウェルテルの陰謀 －美少女と美少年(？)に囲まれた俺の運命やいかに？ー

第一章

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この前に来た男子高校生だった。

今日は私服姿で来ている。ジーンズに黒いベストに小さな鞄、尖がった靴。

髪はきっちりと流れるようにセットされている。

バイトの面接に来たのではないだろう、店長は不在だ。

何となく気まずくて目を逸らすと、彼は雑誌のコーナーで立ち読みを始めた。

前田は、今までの怠惰が嘘のように、素知らぬ顔で陳列を始めている。

それを皮切りに客が入り始めたので、真啓はそれをさばくことに専念した。

だがレジ作業に没頭していると、時折ちくちくと刺すような違和感がする。

何だろう。視線を動かさず、目を凝らして確認する。

その正体が、高校生から注がれる視線だと気づいて、二の腕に鳥肌が立った。

見られている。

雑誌に目を落としながらも、顔をあげてちらちらと視線を寄越してくる。気のせいではない。

前田を見ているのか、自分を見ているのか。

じゃあ昨日の尾行者も？

尾けられていたのは公香でなくて、俺なのか？

詰め寄って肩をたたき、問い詰めたい衝動に駆られる。俺の顔に何かついてますか？

前田は全く気にしていない。

もともと、コンビニという場所は不特定多数が出入りする場所だ。変質者や不審者も多い。

それらに的確に対処し、軽くいなせるようでなければ店員は務まらない。

『無視するのが一番』。ベテランの前田の所作は、それを言外に伝えていた。

気分のいいものではないが、真啓は前田を見習ってスルーすることに努めた。