ウェルテルの陰謀 -美少女と美少年(?)に囲まれた俺の運命やいかに?ー

凪子

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第二章

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「うまいよ」

「本当?」

理紗は嬉しそうに笑うと、ランチボックスを差し出して、

「よかったら、もっと食べて」

真啓は、その言葉に甘えて遠慮なくサンドイッチを食べた。

隣で理紗は一つ二つそれを食べると、ミニサイズのタッパーに入った林檎を食べて、お茶を飲んだ。

それでもういいらしい。

かなり小食だな。思って、ちらりと横顔を窺う。

どちらかというと地味で、目立たない印象だ。けれど色白で綺麗な肌をしていて、優しい香りが漂ってくる。

華奢で小柄で――何というか、まさに『女の子』という感じだ。

目線がとても下にあるのも新鮮だ。見上げてくる黒目がちの瞳がいじらしい。

「有澤君?」

「え?あ、ごめん、ぼーっとしてた」

「どうかしたんですか」

「どうしたって、何が?」

「ちょっと元気ないみたいだから」

一瞬、真顔でフリーズしてしまったらしい。理紗が怯えたように口元を手で覆った。

「私、余計なこと……」

「ああ、違う違う。そうじゃなくて」

会えば挨拶を交わし、世話話くらいならする間柄ではあったが、思いがけず気遣ってくれたようだ。

「心配してくれてありがとう。だけど、大丈夫だから」

「そう……」

沈黙が流れる。

理紗は手持ち無沙汰になったのか、鞄から本を取り出した。

ハインラインの『夏への扉』だ。真啓は身を乗り出した。

「SF読むんだ?」

「あ、うん。本読みながら、頭の中で映像化するのが好きで。有澤君は、邦画と洋画、どっちをよく観ます?」

どっちもそこそこなんだけど。この話の流れからして――。

「洋画かな」

「ほんとに?私もなんです」

理紗の顔がぱっと輝いた。

その無邪気な笑顔を見ていたら、勝手に言葉が口をついて出ていた。

「面白い映画あったらさ、今度、一緒に観に行かない?」

言ってから、しまった、と思った。

何がっついてんの、俺。うわー変に思われたかな。正直言って、かわいい笑顔にぐっときたのは事実だけど。

やばい、引かれたらどうしよう。

一秒足らずの間でパニックになりかけていると、

「はいっ」

頬をピンク色に染めて笑う理紗は、めちゃくちゃかわいかった。

他の男はきっと、まだ彼女の魅力に気がついていない。

そう思うと、とりわけ惹かれる思いが強くなった。

「あ、俺、授業始まるから行くわ。サンドイッチ、本当にありがとう」

「ううん。じゃ、また今度」

理紗はベンチから立ち上がり、顔の前で小さく手を左右に振る。

校舎に向かいながら、真啓は淀んでいた気持ちが少しずつ浮上していくのを感じていた。







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