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第二章
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真正面からなじられたた昇も、冷静ではいられないようだ。
顔色を変えて言い返す。
「君は、僕が公香ちゃんに告白するのを見ていた!」
怒りではなく羞恥で、里香の頬がかっと紅潮する。
「その後、公香ちゃんは何者かに誘拐されて……あんな目に遭ったんだ!」
「お姉ちゃんを侮辱するな!!」
「落ちつけって里香!香田さんも」
真啓は間に入って二人を遠ざける。
「可能性の話をしただけだ。君はあの日のアリバイがない」
「よく言うわよ。アリバイがないのはあんたも同じくせに。あんなことになった途端、お姉ちゃんを捨てたくせに!」
「それは違う!」
昇は叫び、自信を失ったように目を逸らした。
「彼女が……僕を拒んだんだ」
里香はもはや言い返すだけの気力もなく、死にかけの犬のように苦しげに息をしている。
近くの植え込みの側に座らせると、ぐったりと真啓に体を預けた。
昇はようやく近所迷惑ということに思い至ったのか、赤面して黙りこくった。
道の脇に移動すると、昇は髪をかきあげて、負け惜しみのように口を開いた。
「あの事件の後、病院から戻ってからだ。彼女が僕を避けるようになったのは」
もし声に重みというものがあって、それが測れるのだとしたら、2トンはありそうな声だった。
未練と恨みがましさが、ひしひしと伝わってくる。
しゃがみ込んで浅い息を繰り返していた里香が、口元を拭って鼻でせせら笑った。
「それはあんたのせいでしょう?」
「僕が何をしたって言うんだ」
「分かってるくせに」
里香は上品な学生鞄から紙を取り出すと、昇向かって思いきり投げつけた。
昇は顔面でそれを受け止めた。紙はひらひらとアスファルトへ落ちる。
「あんたなんでしょう。ふられた当てつけ?仕返しのつもり?和臣を使って脅迫状を送りつけたり、やり方が汚いのよ」
「言いがかりはよしてくれ。俺は」
「もう二度とお姉ちゃんに近寄らないで!!」
里香はいやいやをするように激しくかぶりを振った。
昇はともかく、里香は端から誰の言葉も聞く気はないようだった。
お互いの傷口をえぐっては、自らの心に刃を突き立てている。
これ以上見ていられないほど、二人の様子は痛々しかった。
顔色を変えて言い返す。
「君は、僕が公香ちゃんに告白するのを見ていた!」
怒りではなく羞恥で、里香の頬がかっと紅潮する。
「その後、公香ちゃんは何者かに誘拐されて……あんな目に遭ったんだ!」
「お姉ちゃんを侮辱するな!!」
「落ちつけって里香!香田さんも」
真啓は間に入って二人を遠ざける。
「可能性の話をしただけだ。君はあの日のアリバイがない」
「よく言うわよ。アリバイがないのはあんたも同じくせに。あんなことになった途端、お姉ちゃんを捨てたくせに!」
「それは違う!」
昇は叫び、自信を失ったように目を逸らした。
「彼女が……僕を拒んだんだ」
里香はもはや言い返すだけの気力もなく、死にかけの犬のように苦しげに息をしている。
近くの植え込みの側に座らせると、ぐったりと真啓に体を預けた。
昇はようやく近所迷惑ということに思い至ったのか、赤面して黙りこくった。
道の脇に移動すると、昇は髪をかきあげて、負け惜しみのように口を開いた。
「あの事件の後、病院から戻ってからだ。彼女が僕を避けるようになったのは」
もし声に重みというものがあって、それが測れるのだとしたら、2トンはありそうな声だった。
未練と恨みがましさが、ひしひしと伝わってくる。
しゃがみ込んで浅い息を繰り返していた里香が、口元を拭って鼻でせせら笑った。
「それはあんたのせいでしょう?」
「僕が何をしたって言うんだ」
「分かってるくせに」
里香は上品な学生鞄から紙を取り出すと、昇向かって思いきり投げつけた。
昇は顔面でそれを受け止めた。紙はひらひらとアスファルトへ落ちる。
「あんたなんでしょう。ふられた当てつけ?仕返しのつもり?和臣を使って脅迫状を送りつけたり、やり方が汚いのよ」
「言いがかりはよしてくれ。俺は」
「もう二度とお姉ちゃんに近寄らないで!!」
里香はいやいやをするように激しくかぶりを振った。
昇はともかく、里香は端から誰の言葉も聞く気はないようだった。
お互いの傷口をえぐっては、自らの心に刃を突き立てている。
これ以上見ていられないほど、二人の様子は痛々しかった。
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