ウェルテルの陰謀 -美少女と美少年(?)に囲まれた俺の運命やいかに?ー

凪子

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第二章

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金色の髪、抜けるような白い肌の美少女は、大きなア瞳に涙をいっぱい溜めながら言った。

「――――」

さようなら。どうか幸せになって。

栗色の髪をした少年は、少女の折れそうに華奢な体をきつく抱き締めた。

「――――――」

どうやって幸せになれというんだ。僕の生きる未来に、君はいないのに。

隣から、息を吸い込むか細い音が聞こえた。こらえ切れない涙がはらはらと膝に落ちる。

虹のかかった空の向こうへ少女は消えていく。

少年は必死でその背中を追いかける。つまずいて、転びながら。

そして再び視線を空に転じたとき、彼女の姿はもうそこにはなかった。

優しく澄んだ音楽とともに、エンドロールがゆっくりと流れだす。

次の日、学校へ行った少年は、ぽっかり空いた隣の席と、誰も彼女を覚えていないという現実を知る。

優しくて幸せだった夏の終わり。

少年は瞳から涙を拭う。

――いつか、僕も彼女のことを忘れてしまうのだろうか。

あんなにも好きだった彼女の名前は、切ない泡沫となって消えていく――。



***********************************



照明がつき、大方の客がはけて、客席がまばらになったころ、

「……大丈夫?」

壊れた蛇口のように両目から涙を流す都築理紗に、真啓はおずおずとハンカチを差し出した。

ウサギのように真っ赤な目に、またじわりと新しい涙の膜が張る。

理紗は言葉にならないらしく、そのままハンカチに顔をうずめた。

随分と繊細な子なんだな。真啓は改めて感嘆していた。

一緒に観に来たのは、恋愛を絡めたSF映画で、前評判はまあまあだった。

日曜日ということもあってか、客の入りもいい。

けれど、ストーリーとしてはありきたりなものだったし、第一ヒロインの演技がまずかった。

真啓は映画の間中、彼女のわざとらしい仕草や、まばたきさえ気になって仕方なかったくらいだ。

ダントツに華麗な容姿で、文字どおり天使のような少女なのに惜しかった。
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